ニュース 2003年1月17日 08:38 PM 更新

“ブロードバンド・オペ”はもう実用段階

医療の分野に、ADSLやFTTHなどのネットワークが活用されている。国立病院東京医療センターは、ブロードバンドを生かした手術の様子を報道向けに公開した

 慶應義塾大学病院と国立東京医療センターは1月17日、両病院を結ぶ遠隔医療システムの様子を報道向けに公開した。昨年9月から稼動しているもので、現在月に2回程度の頻度で運用されているという。


実際の手術の様子も公開された。手術室は、発表会場である国立東京医療センターの別室


遠隔地である慶應義塾大学病院で、指導医として控える田辺稔医師。デモでは、会場にいた医師も「この患者は肝臓が大きいから気をつけろ」と注意を与えるなど、独特の雰囲気

 国立東京医療センターはFTTH回線を、慶應義塾大学病院は12Mbps ADSLをそれぞれ導入しており、インターネット経由で手術室の映像を、2Mbpsで伝送する。遠隔地に控えた指導医は口頭でさまざまな指示を与えるほか、画像にペンで線をひくことで、「動脈の位置はここ」などと相手に知らせることができる。

 システム構築にあたっては、シスコシステムズ、オリンパスプロマーケティング、フォーカスシステムズなどが技術協力。テレビ会議システムの設置、ハッキング検知システムの導入、2病院間での通信を暗号化する技術提供などを行った。

暗号化技術として「C4S」を採用

 ブロードバンドによる遠隔医療では、通信技術に要求されるものも多い。ネットワーク接続が切断されないことはもちろんのこと(*)、臓器の色情報などを含めた画像のクオリティや、エンド・トゥ・エンド・ディレイの可能な限りの短縮が求められる。

*遠隔手術指導では、万一接続障害が起きても手術側スタッフだけで通常の手術が施行できることが前提となる

 さらに、患者の病歴などプライバシー保護の観点から、通信のセキュリティも重要なポイントとなる。ただし、暗号強度を上げすぎてディレイが甚だしいようなら、作業効率の悪化をひきおこす。この『安全性』と『速度』の両立を目指すために、今回のシステムでは「C4S暗号化」の技術を採用。通信速度の低下を招きやすいブロック暗号の手法ではなく、信号そのものの複雑さで、セキュリティを高めているという(フォーカスシステムズのサイト参照)。

医学教育への展開も

 遠隔医療システムは、1971年に和歌山県の山間へき地でCCTVカメラを用いて実験的に試みられて以来、これまで進化を続けてきた。2000年2月21日には、慶応義塾大学と京都大学を接続してのドミノ肝移植にも成功している。昨今のブロードバンドインフラ普及をうけ、インターネットでVPN接続して手術指導を行うケースも増えてきた。

 今回公開されたシステムは、今のところ両病院間を2点接続するものだが、今後はさまざまな展開が期待されている。たとえば、病院−病院間、病院−診療所間を接続してのネットワーク構築や、最新治療方法の情報交換、在宅医療への展開など。また、医学教育として、専門医の手術を見学する臨床研修にも応用できる。慶應義塾大学病院側は、システムの設定などを検証しながら「日常的に運用するようにしたい」と話した。

関連リンク
▼ 国立東京医療センター
▼ 慶應義塾大学病院

[杉浦正武, ITmedia]

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