リビング+:ニュース 2003/01/21 18:22:00 更新

ec2003レポート:オンラインゲームの現在

日本でもようやく普及し始めたオンラインゲーム。その魅力や、メーカーサイドの抱える課題、それでも取り組む理由などについて、コーエーの松原健二氏が講演した

 エンターテインメント・コンピューティング2003の最終日には、コーエーの松原健二氏による「オンラインゲームの魅力は何か?」という招待講演が行われ、2002年12月からβテストがスタートした、コーエーのオンラインゲーム「信長の野望Online」が、具体的な数字を上げて紹介された。

 オンラインゲームは、一般には「インターネット環境で行われるゲーム」と捉えられている。だが具体的なイメージはばらばらで、インターネットを本質的に必要とするゲームなのか、単にインターネットを使うだけのゲームなのか、というところも曖昧だ。

 コーエーでは、「インターネットを本質的に必要とするゲームを作っていこうとしている」のだという。本質的に必要とする、というのは、つまり、プレイヤー同士がつながったり、製品からサービスに展開してくるようなゲームということである。単に製品を売って終わりではないわけだ。これまでの「メーカー」という位置付けとは、大きく変わってくるだろう、と松原氏は話す。

 ユーザーにとっては、プレイヤー同士のつながりができてくるのが、これまでのゲームとの大きな違い。他人に自慢したい、見せびらかしたい、という欲望が刺激されるのだ。

オンラインゲームの普及状況

 オンラインゲームのメジャータイトルには、次のようなものがある。

  • Ultima Online(EA、USA) 25万人。うち9万人が日本
  • Ever Quest(SOE、USA) 43万人
  • Lineage(NCソフト、韓国) 2002年、1560億ウォン(約156億円)

 国内では、2002年に、スクウェアが「Final Fantasy XI」で参戦。2002年末の段階で18万人の課金ユーザーを獲得している。

 とはいえ、松原氏は「これらオンラインゲームは、現在のところ市場規模においては、パッケージゲームの比ではない」と言う。

 パッケージでは、FF10が450万本を売り上げている。それに対し、オンラインゲームでは、最もメジャーなタイトルであっても、その1/10程度しかプレイヤーが存在しない。当然、オンラインゲームで黒字になっているところはないという。

 もっとも、よく指摘されることだが、お隣の韓国では、やや事情が異なる。韓国でゲームといえば、PCオンラインゲームを指すからだ。韓国では家庭用ゲームでゲームをするという習慣がなく、2002年2月に発売されたPS/2は、25万台程度しか普及していない。一方、PCゲーム市場の市場規模は2002年で4500億ウォン(450億円)に達している。これはほぼ日本の着メロ市場に匹敵する。

 ここまで韓国でオンラインゲームが伸びたのには理由がある。ブロードバンドインフラを整備したからだ。PC房と呼ばれるインターネットカフェも発達。日本では1000軒以下なのに対し、韓国には3‐4万軒もある。料金もきわめて安価で、1時間100円がざらなのだそうだ。日本ではマクドナルドに行くような感覚で、中高生が行くのが韓国のインターネットカフェなのである

利益率の低いオンラインゲーム

 松原氏によれば、オンラインゲームは開発および運営コスト負担がすごいのだそうだ。ちょっとしたベンチャーではとても無理で、市場は寡占化するだろう、と予測する。

 通常のゲームでは、発売後数カ月(2〜3カ月)が売り上げの勝負となる。例えば、開発期間が1.5年で費用が3.5億円としたとき、発売後数カ月で20万本売って、売り上げが8.8億円というシミュレーションが成り立つ。

 ところがオンラインゲームで同様のシミュレーションをすると、累損の解消に3年9カ月はかかる計算なのだという。開発期間に3年はかかり、その費用が10億円、運営設備投資が3億円、運営人件費が0.5億円/年。

 莫大な開発コストのうち、半分以上がCG作成に費やされる。フル3Dゲームの3大CG要素は、(1)ステージ、(2)キャラクター、(3)モーション、にあり、そこに投資をすることで魅力的なゲームを作り出すのだ。実際、信長の野望Onlineのデモを見てみると、キャラクターの表情や体格などはバラエティに富んでいて、多彩な表現力を感じさせる。

 「真・三國無双2」では、ステージは縦1×横1キロメートルという広さだったのだが、今回の「信長の野望Online」では、その6倍以上の2.5×2.5キロもの広さになっている。2.5キロということは、マラソン選手だって縦断するのに7〜8分はかかる。

 さらに、ゲーム会社にとっては、これまでに存在しなかった、クライアントサーバ連携の管理機能も、大きな負担になる。

 一方、市場規模は前述のようにまだ小さい。PS/2でいえば、売上総数1100万台(日本)のうち、BBユニットでつないでいるのはわずか19万台、1%程度だ。

 それゆえ、パッケージの売り上げは数カ月でも10万本で4.4億円程度。後は1000円/月の利用料金で売り上げを立てていく。その月間の売り上げが1億円とすると、累損の解消がようやく発売の9カ月後、つまり開発開始から3年9カ月後というわけだ。

 松原氏の分析によれば、スクウェアはすでに60億円くらいオンラインゲームに投資しているのだそうだ。60億円の回収が3年9カ月もかかるのでは、確かにベンチャーが運営することは困難だろう。

 こうまでしてオンラインゲームに走る最大の理由は、将来の先行者利益が大きいということに尽きるという。一度始めたユーザーは、そのゲームをベースにオンラインゲームを考えるようになるからだ。先行している韓国では、上位10社で90%の市場を支配している。しかも、1位のNCソフトの売り上げは、2位のNHNの3倍弱に上る。

 また、オンラインゲームは立ち上がりつつあるところなので、課金手段をどこが握るかも決まっていない。ゲームソフト会社なのか、プロバイダなのか、ハード会社なのか、通信インフラ会社なのか。ここでも、先行者利益を目指す得るための闘いが行われているという。

 ちなみにコーエーでは、2005年に黒字、2010年には会社の屋台骨に育てるのが目標だそうだ。

スタートして1カ月の現状

 オンラインゲームのルールでは、プレイヤー同士が戦えるかどうか、というところが、大きな分岐点になっている。プレイヤーがプレーヤーを倒すことを「プレイヤーキリング」(PK)と呼ぶが、韓国では、これが流行っているのだそうだ。

 信長の野望Onlineは舞台が戦国時代ということもあり、プレイヤーキリングが可能な仕組みにしてあるのだという。ただし、これだけでは殺伐とした過激な空間になってしまう。そこで、最大7人までのパーティー(信長の野望Onlineでは徒党と呼ぶそうだ)を組むことができるようにし、パーティーを組まなければゲームのステージが上がれないような工夫を考えているのだという。

 ゲームがスタートしたばかりの現在は、プレイヤーの多くはレベルアップに奔走しており、文字どおり2.5×2.5キロのステージを走り回っていることが多いそうだ。通常の街中でも走っている人間はそれほど多くはないわけで、「現在のところ信長の野望の空間は、なんだかせわしない街になっている」とか。この状態だと、初心者が話を聞こうと思っても、立ち止まってくれる相手が少ないため、早期に徒党を組まなければならないような仕組みを作っていくということだった。

 松原氏によれば、信長の野望Onlineの場合、平均で1日10時間以上プレイする人が100人。16時間以上(!)が5人もいるそうだ。コアゲーマーに支えられて発展していくのが、手にとるように分かってたいへん興味深い数字である。

 平均で1日10時間プレイする、というのは、年末年始をはさんでいたということがあるにせよ、ほとんどゲームを日常としているようなコアな人びとでないと難しいだろうと思わせる時間数である。

 これでは、通常の仕事はまず成り立たないが、ゲーム内のアイテムが、インターネットオークションなどで販売されるようになれば、充分に生活を送る収入を得られる可能性もある。すべてがバーチャル化した、究極の文明という感じでもある。

[美崎薫,ITmedia]



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