リビング+:連載 |
2003/01/27 22:01:00 更新 |
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リモートデスクトップと同じ? いえ、違います
「Smart Display」が、いよいよ日本でも発売された。マニアの間には「あれ、結局はリモートデスクトップでしょ?」という醒めた見方もあるようだが、実際に使ってみると大きく異なることに気がつくだろう
コードネーム「Mira」として、約1年前の「International CES 2002」でコンセプトが発表されていた「Smart Display」が、いよいよ日本でも発売された。といっても、残念なことに盛大に行われた発表会は、今年のCESのスケジュールと重なっていたため出席できず(CESで開発表明した製品をCESの会期中に日本で発表しなくてもいいのに)。
マニアの間には「Smart Displayってさ。あれ、結局はリモートデスクトップでしょ?」という醒めた見方もあるようだが、個人的にはとても気に入ったデバイスのひとつ。今回は、簡単にそのファーストインプレッションをお届けすることにしたい。
写真は発表会のもの(ZDNetはちゃんと出席してます)
リモートデスクトップと同じ?
Smart Displayの背景について触れる前に、そのさらに背景にある技術的な事柄を簡単に説明しておくことにしよう。
まずは冒頭にも出てきた“リモートデスクトップ”について。リモートデスクトップは、Windows XP Professionalにサーバが組み込まれている機能で、リモートデスクトップサーバが動作しているとネットワークを通じてWindowsのほとんどの操作を、あたかも手元にPCがあるかのように操作できる。
このあたりは以前もリモートアクセスの回で述べたが、画面は24ビットでUXGA解像度にも対応し、デジタルサウンドもネットワークを通じてクライアントに送信。さらにはディスクドライブやプリンタ、シリアルポートまでリモートで利用でき、5ボタンマウスとそのホイール機能にも対応するという、非常に高機能なリモートアクセス機能である。しかも非常にパフォーマンスがいいのだ。
パフォーマンスが良いのも当然で、元々は業務用にダム端末でWindowsをサポートするための技術を用いている。つまり、ネットワーク経由でも業務レベルで実用になるパフォーマンスを発揮できるように開発されているものなのだ。Windows Terminal Serviceとクライアントを、コンシューマー用としても十分に使えるレベルにまで色や音などの要素をアップさせ、管理機能を簡易化したものがリモートデスクトップだ。
リモートデスクトップサーバに接続するクライアントソフトは、もちろん各種Windows用が用意されており、その中にはWindows CEも含まれている。たとえば、ハンドヘルドPCからWindows XPを利用することもできる。
Smart DisplayはWindows CEが組み込まれた、リモートデスクトップサーバに接続するための装置という表現も、あながち的はずれな訳ではない。実際、技術的な背景はその通りだからである。しかし想定されている使い方は異なり、そのために新しい機能が加えられたり、端末側にもちょっとした工夫がされている。そうした意味からすれば、Smart Displayはリモートデスクトップとは違うモノと言えるだろう。
シームレスな操作感がSmart Displayの魅力
リモートデスクトップとのもっとも大きな違いは、その操作感だ。Smart DisplayはUSBケーブルでPCと接続し、PC上のセットアップウィザードで簡単に設定できる。ユーザー名や接続先コンピュータ名などは、その際に自動的に設定される。さらに自動的にログオンする設定にしておけば、Smart Displayを起動させると同時に自分のPCへと接続させることができる。
たとえば、自分の部屋でウェブサイトを見ていて、おもしろい情報を見つけたとしよう。そのままSmart Displayを持ち出して電源を入れれば、それまで使っていたデスクトップ画面をそのままリビングなど別の場所に持ち込むことができる。つまり、パソコン本体とユーザーインタフェースを空間的に切り離し、しかもシームレスな感覚で利用できるのである。
USBキーボードとマウスを接続することも可能なため、小型のUSBキーボードとSmart Displayを抱え、リビングでテレビを見ながらメールの返答をするなんてこともできる。
現在は1台のSmart Displayしか同時接続できないが、将来はWindows XPのサービスパック、もしくはWindowsの次期メジャーアップデート(Longhorn)で複数のSmart Displayの同時接続をサポートすることを検討しているという。
またベースとなっているリモートデスクトップがWindows XP Professionalにしか提供されないため、Home Editionを利用している人はSmart Displayを使うことができない。またProfessionalであっても、サービスパック1が適用されている必要がある。
実際にアクセスしてみると動作は非常に軽快で、Windows上でリモートデスクトップクライアントを利用しているのと変わらないパフォーマンスを体感できる。またタブレットPCとは異なり、Smart Displayのタブレットは感圧式を採用しているため、指でタッチしてクリックの代わりとすることも可能だ。音声に関しても、サーバ側パフォーマンスとネットワークの速度が十分ならば、滞りなくSmart Display側で再生される。
またNECのSmart Displayは防滴加工が行われているため、キッチンなど水滴がかかる可能性のある場所やリビングで、コーヒーを飲みながらPCの機能にアクセスしたいといった場合でも、安心して利用できるのもいい。これがノートPCやタブレットPCだと(価格面の高さもあって)かなり気を遣う。
NECの「Smart Display SD10」。価格は9万9800円
欠点は動画のパフォーマンス。動画再生が始まると各コマのイメージを順に転送しようとするが、通常のビットマップイメージと同じように転送するため、コマ落ちが激しくなる。動画専用のプロトコルでやりとりできればいいのだが、現在のところそうした機能はない。
ただし日本の家電ベンダーからは、マイクロソフトに動画サポートの強い要望があるようで、端末側の機能アップと同時に検討を行っているそうだ。
実は単体でも動作するSmart Display
Smart Displayはサーバとなるパソコンに接続した場合の話が中心に語られることが多いが、実は単体でも動作する。Windows CE.NET用のInternet Explorerとイメージビューアが組み込まれており、それぞれ単体で起動させることができる。
このためちょっとしたインターネットアクセスならば、Smart Display単独で済ますことができる。Windows CEのInternet Explorerと聞くと、パフォーマンス面や互換性の面で疑問を感じる人も少なくないだろう。しかしパフォーマンス面では特に不満を感じなかった。FlashやJavaアプレットが動作しないなどの制限はあるが、ちょっとしたWebブラウジングであれば、Smart Display単体で十分実用になるだろう。
イメージビューアの方は、サムネイル表示機能もある画像閲覧ソフト。NECの製品にはPCカード、富士通がデスクトップPCにバンドルしている製品にはSDカードスロットが装備されており、簡易的な写真ビューアとして機能する。さすがに500万画素クラスとなるとサムネイル作成がもどかしいが、300万画素以下の画像ならばこちらも速度的な不満はない。
富士通の「FMV-DESKPOWER L20C/S」。Smart Displayが付属する液晶一体型モデルだ。価格はオープン
僕はノートPCを部屋のあちらこちらに持ち歩いて使うことが多いが、Smart Displayがあれば、その頻度も激減するだろう(実際、評価機を利用していた時は打ち合わせの時以外、リビングにパソコンを持ち込まなかった)。以前から想像はしていたものの、Smart Displayは実にすばらしい、いや実に欲しいアイテムのひとつだと実感した。
ひとつネックがあるとすれば、やはり価格だろう。5万円でパソコンが買える時代に10万円のSmart Displayはいかにも高価だ。時間が経過すればハードウェアの価格は下がることも考えられるが、今の価格のままでは一般ユーザーはなかなか手が出しにくいはず。
しかしコストさえ下がってくれば、他フォームファクタへの展開も視野に入ってくる。マイクロソフトは以前から、HDTVやプロジェクタにSmart Displayを組み込む可能性について言及していた。最新情報によると、ある日本のベンダーと製品化に向けて具体的な話し合いに入っている段階とか。早い段階での製品化に期待したい。
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[本田雅一,ITmedia]