リビング+:ニュース |
2003/02/04 23:59:00 更新 |
Interview
ブロードバンドと演劇が融合すると?
So-netは、演劇の世界にブロードバンドを持ち込むという、野心的な取り組みを進めている。現場レベルでの手ごたえや、俳優側の反応などを聞いた
舞台の上という、俳優たちの聖域ともいえる場所にも、ブロードバンドは進出してゆく。So-netは3月から、劇場に複数台のカメラを設置して、演劇「ROOFTOP」をライブ配信すると発表した(記事参照)。同種の試みは、NTT-BBなども行っており(記事参照)、チケットを入手できなかったファンや、地方で劇場に足を運ぶのが難しいファンにとっては嬉しい取り組みといえる。
新しい試みには、試行錯誤がつきもの。特に、So-netの場合は舞台上にライブカメラを設置するだけに、俳優側から「そんなところにカメラを置いては、演技ができない」との反発もあったと聞く。今回ZDNetは、ROOFTOPの稽古現場にお邪魔して、現場での手ごたえや、俳優たちの反応などを聞いた。質問に答えてくれたのは、ソニーコミュニケーションネットワークのネットワークビジネスクリエイションディビジョン、滝内泉氏だ。
滝内氏は、楽屋でインタビューに応じてくれた。同氏はNHKや劇団四季などを渡り歩いてきた人物
ZDNet:まず、演劇をライブ配信することを、どうとらえているか教えてください。
滝内:コンテンツを作る人というのは、まず、人に伝えたいメッセージがあるから作っている。それを伝える手段が、小説だったり、映画だったり、演劇だったりするわけだが、ROOFTOPではそれが「演劇+インターネット」であるということ。
たとえば映画なら、多少画面が暗くて、声が聞き取りにくくても、セリフを字幕でスクリーンに映すことができる。また、テレビは間にコマーシャルが入って流れが切れるから、あえて1時間、ハイテンションを保つような作りにしている。このように、媒体によってコンテンツの作り方というのは異なる。
インターネットでは、“ネットなりのメッセージの伝え方”というものが、きっとあるはず。それを模索していきたい。
稽古の合間には、細かい指示が飛ぶ。「ここはちょっと、変更させてください。あと、セリフのテンポだけ、もっとまったりと……」(左に見えるのは、360度撮影可能なカメラ「FourthVIEW」)
ZDNet:ライブカメラの設置には、俳優側からの抵抗もあったと聞きましたが。
滝内:(楽屋にいた俳優に声をかけて)実際にどう、やりにくい?
俳優:舞台上にカメラがあるために、(きちんと映ることを配慮して)アクティングエリアが限定されてしまう。相手があって演技をしている場合、お互いの動きが制約されることがある。
滝内:私は、ライブ配信にあたってはまず、動きありきだと思っている。変にカメラを意識させたくない。たとえばカメラに近すぎて、舞台に設置したカメラの映像で見ると俳優の洋服のアップしか映っていなくても、それは現場の迫力のひとつと思っている。
稽古では、俳優がどう動くと、どうカメラに収まるのかをチェックしていた。上演期間は、3月29日から4月10日まで
ZDNet:事業として考えたときに、収益は成り立ちますか。
滝内:ブロードバンド上でのコンテンツ配信は、以前から、ビジネスモデルが成り立たないと言われてきた。それは、やる前から分かっていたこと。しかし、舞台+インターネットという形式では、実際に舞台に足を運んだユーザーからも収益が見込める。このため、インターネットのみで配信する場合よりも、有利だと考えている。
ZDNet:発表会のあと、何か世間からの反響はありましたか。
ZDNet:ユーザーからというより、事業者から反応があった。実は9月に、第2弾としてミュージカルのライブ配信をやることが決まっている。ほかにも、第3弾に関してひきあいをいただいている。
配信先としては、国内に留まらず、たとえば韓国のプロバイダにも声かけている状況だ。将来的には、舞台の様子をパリやロンドンにも配信できればと考えている。
(文中敬称略)
関連記事
So-net、演劇を「360度カメラ」でライブ配信
ブロードウェイ・ブロードバンド、稽古風景を公開
関連リンク
チケット取り扱いページ
[杉浦正武,ITmedia]