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2003/02/14 23:59:00 更新 |
三菱電機、“いいとこ取り”のFTTHシステムを開発?
国内のFTTHサービスは、大きく分けてPON型とLAN型の2種類がある。両方のメリットを併せ持つ「イーサネットPON方式」の光アクセスネットワークシステムを三菱電機が開発した
三菱電機は、イーサネットPON方式を用いたFTTH向けの新しい光ネットワークシステムを発表した。これは、13日に行われた同社の開発成果発表会で公開されたもの。光アクセスネットワークのPON型とLAN型の“いいとこ取り”を目指したネットワークシステムだ。
左が局舎側に置くOLT(Optical Line Terminal)。最大256回線を収容可能。右が宅内端末のONT(Optical Netwark Terminal)
現在、国内のFTTHサービスは、大きく分けて「PON型」(Passive Optical Network)と「LAN」型の2種類がある。
PON型は、光ファイバーをスプリッタで分岐し、最大32人が共有する共用タイプ。ATMベースのため、制御が複雑で機器コスト面では不利だが、最低帯域保証、優先保証などの多彩なサービスを付加できるメリットがある。IP電話や動画配信など、一定の帯域幅を確保しなければならないアプリケーションが増えてきたことで、PON型に対する需要は徐々に高まりつつある。また、光ファイバーを共用するPON型はファイバーコストの点で有利だ。
一方のLAN型は、一対のメディアコンバータによってユーザー宅と局側設備の間を一本の光ファイバーで結ぶ占有タイプ。イーサネットのパケットを透過的に伝送する単純な仕組みのため、機器コストが抑えられるのが最大のメリットとなる。有線ブロードネットワークスが「BROADGATE01」の立ち上げ時、当時としては画期的な料金を打ち出すことができたのも、LAN型の採用による部分が大きい。ただし、PON型のような複雑な制御機能はもたず、最低帯域保証もない完全なベストエフォートだ。
最低帯域保証を可能に
今回、三菱電機が発表したイーサネットPON方式の機器は、イーサネットのパケットをATMセルに分割せずに透過伝送する単純な方式でありながら、最低帯域保証やVLANなどのサービスを可能にする。
PON型では、下り方向のトラフィックをすべてのONT(Optical Netwark Terminal:宅内端末)が受け入れ、必要な情報のみを有効にする仕組み。上り方向は、各ONUが発信する送信要求が競合しないよう、時分割多重によって制御しているが、その際、ユーザーごとにNTT収容局からの距離が異なる「伝送距離の不均一性」を吸収するため、レンジングと呼ばれるタイミング補正を行っている。このレンジングが制御を複雑にする一因だった。
そこで三菱電機では、局側装置から各ONTに対し、順番に送信許可を与えることでタイミング補正を不要にする、新しいメディアアクセス制御方式を開発した。1回の最大転送時間(MTP:Max Transmission Period)を調整すれば、ONTごとの最低帯域保証を規定できるという。
使っていないユーザーの帯域をほかのユーザーに再割り当て可能
「100Mbpsの光ファイバーを32人が同時に使った場合でも、3Mbps程度の最低帯域を保証できるだろう」(同社)。
さらに、レイヤー2でVLAN制御や優先制御を提供するイーサネットレベルの交換機能を実装。PON型に近いサービスを可能にした。また、複雑な制御を廃したことで、ONTはCPUレスとなり、低コストと省スペース化を実現している。
ONTは業界最小レベルのサイズ(容積670cc)
三菱電機によると、ケイ・オプティコム、九州通信ネットワークなど複数の電力系FTTH事業者が新システムの導入を検討中。今後は大規模な商用導入を図る予定だという。
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ニュースリリース(三菱電機)
[芹澤隆徳,ITmedia]