リビング+:連載 2003/02/19 23:59:00 更新
ブロードバンド診療所

ブロードバンド診療所
「ルータのブラックホール現象」を解決する (1/2)

今回の相談相手は、マンションFTTHで無線LANを利用するユーザー。問題点は複数あるようだが、ひとつずつ解決していこう
診察カルテ
通信環境キンデンのマンションFTTH「Fiber Bit」
通信機器アイ・オー・データ機器製 無線LAN「WN-54/BBR」「WN-A54/PCM」
相談内容インターネット接続が不安定

 今回の相談者は、郊外在住のIさん。大規模集合住宅に住んでいる。このマンションは数棟に分かれており、全体でキンデンのマンション向けインターネット接続サービス「Fiber Bit」に加入している。

/broadband/0302/19/shugo.jpg
 郊外の集合住宅。かなり大規模で、駅からの眺めは壮観だ

 Fiber Bitのサービスメニューとしては、各世帯にVDSLやPNAで帯域を分配するものもあるが、Iさんの入居しているマンションではイーサネット方式を利用しており、壁に設置されたコネクタにイーサネットのケーブルを接続するだけで使えるようになっている。

 Iさんは、このコネクタにアイ・オー・データ機器のIEEE 802.11a準拠の無線LANルータ「WN-54/BBR」を接続し、複数台のPCを同時にインターネット接続できるようにしたという。ただ、これによってうまくインターネットに接続できなくなってしまったようだ。

 トラブルは大きく分けて2つの症状があるとのこと。1つは、突然すべてのインターネットとの通信ができなくなってしまうことがあるという症状。この際、ルータの再起動などで一時的に復活する場合もあるが、すぐに不安定な状態に戻ってしまうそうだ。

 もう1つは、長いメールを送信したりすると、通信が止まってしまうことがあるという症状。これに関しては、いったん送信を中止して数行の短いメールを送信した場合、うまく送信できるとのことだ。さらに自分のホームページ用のデータをサーバにアップロードする際も、少し大きなデータをアップロードしようとすると同じように通信が止まってしまうという。こちらの症状に関してはほぼ常に発生するとのことだ。

/broadband/0302/19/iodata.jpg
 IさんのLAN環境。壁のイーサネットコネクタに無線ルータを接続し、ノートPCを無線接続している

「ルータのブラックホール現象」の疑いアリ?

 Iさん宅にうかがって、症状の確認を行う。うかがった際は、とりあえずインターネットには接続でき、特に問題なくWebなどが閲覧できた。そこで、ほぼ100%再現性のある、第2の症状から解決を図ることにする。

 実は、この症状はある状態で起こる典型的なものだ。確認のため、Fiber Bitのサービスの形態を確認してみると、接続プロトコルとしてNTTのフレッツシリーズのようなPPPoEを利用しているのではなく、ルータにFiber Bitから割り当てられたIPアドレスを設定して利用するようになっている。この場合に、疑われるのが「PMTUD Black Hole現象」(Path MTU Discovery:ブラックホール現象)だ。

 この現象を説明する前に、いくつか確認しておこう。まず、ネットワークのパラメータのひとつにMTU(Maximum Transmission Unit)というものがある。これは、ネットワークの物理的な種類(イーサネットやATMなど)によって決まるもので、1回に送信できる最大のパケットの大きさを示している。ネットワークでは、データをまとめてドンと送るわけではなく、細かく分割して送信する。この分割する単位がパケットだ。一般的なイーサネットでは1500、ADSLやFTTHの回線では一般的に1454がそのサイズになっている。

 MTUサイズが違う回線同士で通信する場合、サイズが大きい側から小さい側にデータを送る時点で、データがパケットからあふれてしまう。このため、1つのパケットをその境で2つに分割する必要が生じる。分割を行うと通信の効率が悪くなるので、送信元は通信経路をチェックし、一番小さなMTUサイズのパケットを送信しようと試みる。この動作がPath MTU Discoveryだ。この際、「ICMP/Destination Unreachable(DU)/ Fragmentation Needed(FN)」というメッセージ(制御信号のようなもの)を利用する。

次ページ:ブラックホール現象の発生プロセスとは?

      | 1 2 | 次のページ

[柿島真治,ITmedia]



モバイルショップ

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!