リビング+:連載 2003/02/26 23:59:00 更新
ブロードバンド診療所

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「集合住宅のIPアドレス重複」を解決する (2/2)


 さて、それではこの問題を回避するためにはどのように設定すればいいのだろうか。この問題はWAN側のIPアドレスが「192.168.1.13」でネットマスクが「255.255.252.0」であることが原因だ。これを回避するには、LAN側のIPアドレスの範囲を変えればよいということになる。

 一番分かりやすいのは、本末転倒のようにも見えるがLAN側を「172.16.〜」から始まる「クラスB」(注1)のIPアドレスにしてしまうという方法だ。こうすれば、ネットワークアドレスがまったく異なるので、2つのIPアドレスが同一ネットワークにあるとみなされることはない。

 しかし、家庭向けルーターでは、LAN側アドレスとしてクラスCプライベートアドレスしか利用できないものがある。実は、Iさんの利用している無線ルータ「WN-54/BBR」も、この制限のあるルータだ。この場合はどうするのかというと、少し分かりにくいかもしれないが、192.168で始まってもネットワークアドレスが違うIPアドレスを利用するようにすればいい。

 今回の例ではネットマスクが「255.255.252.0」なので「192.168.0.1」から「192.168.3.255」までがWAN側と同じネットワークとして扱われることになる。したがって、「192.168.4.1」以降を使えば問題はなくなる。せっかくなら、はっきり違うと分かる大きなアドレスを利用したほうがよいので、Iさん宅では「192.168.100.1」からを利用するように設定した。これで、問題は解決したはずだ。

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 設定画面。入力値が「192.168.100.1」になっている

(注1)IPアドレスには、ネットワークの規模に応じた「クラス」が定義されており、それによってネットマスクも決められている。たとえば、1ネットワーク内に254台以下の端末が接続するなら「クラスC」を利用すればよく、IPアドレスは「192.168.xxx.xxx」を割り当て、ネットマスクには「255.255.255.0」より長い値を設定する。255台以上を1つのネットワークとして扱う「クラスB」では、プライベートアドレスとして「172.16.xxx.xxx」から「172.31.xxx.xxx」までを利用する。この場合の標準のネットマスクは「255.255.0.0」だ

最後に潜んでいたルータ設定の「罠」

 このように設定を変更することで、トラブルは解消されるはずだった。しかし実際には、なぜか同じ現象が発生してしまった。

 何度見ても理論的にはこれで大丈夫なはずである。何が悪いのだろうか……と、途方に暮れかけたとき、妙な点に気がついた。今までルータの設定に関しては、おかしなところがあったらすぐに変更する意味もあり、ルータ設定の変更画面を利用して確認していた。ところが、何気なくルータ設定の確認画面をチェックしたところ、WAN側IPアドレスが「192.168.1.11」になっているのだ。つまり、設定した「192.168.001.013」と異なっている。

 おかしいと思い、設定変更画面を表示させると、WAN側IPアドレスの欄には「192.168.001.013」と入力されている。

 もしやと思い、「192.168.1.13」と入力し直して、設定を更新、再び設定確認画面で確認すると、今度は「192.168.1.13」になっていた。最後に潜んでいた問題はルータの設定画面だったのだ。

 なぜ、入力した値と違う値が設定されたかだが、この「013」という値は8進数表記した場合で10進数の「11」に相当する。どうやら、設定画面が8進数と勘違いしてしまったことがトラブルの原因のようだ(注2)。

(注2):このルータのメーカーであるアイ・オー・データ機器に問い合わせたところ、「これまでそのような点で問い合わせ、障害発生の報告はなく、また想定していなかった。これは、製品やその数値を処理するシステムなど、さまざまな要因が絡んでくるので、どのような結果になるのかを想定するのが難しい。そのため、数字の先頭には0をつけないで欲しい」(要約)という回答があった。ほかのメーカーの製品でも、同様だろうという

 確かに、一般的には0を追加して3桁にして入力することはほとんどない。しかし、今回はキンデンの配布した設定方法の資料に「192.168.001.013」というように表記してあったため、それをそのまま正直に入力してしまっていた。

 今回のトラブルに関しては、失礼だが設定の資料に問題があったと言わざるを得ない面がある。このIPアドレスの表記もそうだし、ルータを利用する際の、設定の仕方についてもだ。実は、キンデンのFAQページにはルータを使う際のトラブルと対処例(ルータの設定例)として、前回のルータのブラックホール現象などの対処法も掲載されている。だがこれらのトラブルが発生するとまともに接続できなくなるため、“Webに掲載”されていてもユーザーの役に立つとは言えない。できることなら、設定の資料に一緒に書いておいて欲しいと感じた。

 なお、後日キンデンにクラスBでなくクラスCを利用している件について質問したところ、「従来はPC1台を接続することを前提にしていた上に、サービスを開始した当初は、一部の機器などでクラスCのプライベートアドレスしか設定できないものなどもあったため、このようになっている。問題があることは認識しており、変更も検討しているが、すでにサービスを開始してしまっているところでアドレスを変更することは、ユーザーにも変更の手間を強いるので、どうなるのかはまだ未定だ」(要約)とのことであった。

 また、IPアドレスの表記に関しても今回のようにアドレスが変化してしまったり入力を受け付けないなどの問い合わせがあるため、0を付加した表記をやめることを検討しているという。

 Iさん宅のトラブルに関しては前回の件も含め、ルータのWAN側に固定でIPアドレスを設定する(しかもそのIPアドレスはプライベートアドレス)という比較的例の少ない環境におけるトラブルだった。したがって、雑誌などによく掲載されるトラブルシューティングとは少し違ったポイントがあった。しかし、これからこのようなかたちでインターネットへの接続サービスが提供されるマンションをはじめとした集合住宅は増えるのではないだろうか。そのような状況になったときは今回の件を思い出して設定して欲しい。

今回のポイント

●CATVやマンションインターネット接続サービスなどで固定でプライベートアドレスが割り振られる場合

・WAN側アドレスのネットマスクをよく確認し、LAN側をそれとダブらないように設定しよう

●ルータのWeb設定で設定した値と違う値が設定される

・ブラウザとルータの組み合わせによっては0を前置した数値が正しく10進数に認識されないことがあるので注意


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[柿島真治,ITmedia]



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