リビング+:ニュース 2003/03/24 23:55:00 更新


Interview:最大50MbpsのADSLで何が変わる?

下り最大50Mbps以上のADSLサービスを可能にするという「eXtremeDSL MAX」だが、“数字”だけでは見えにくいメリットを併せ持っているようだ。センティリアムの高橋秀公社長と郷右近一彦ディレクターに話を聞いた

 センティリアム・ジャパンが発表した「eXtremeDSL MAX」は、ITU-Tで検討が進められている「ADSL2plus」の仕様を先取りし、下り50Mbps以上のADSLサービスを可能にする。12Mbpsサービスの4倍以上という数字はインパクトが大きい。しかし、eXtremeDSL MAXが役割を、単に“スピード”だけで語るのはナンセンスのようだ。

 同技術の登場がADSL市場に与える影響、そしてセンティリアムがこの時期にeXtremeDSL MAXを発表した目的について、同社の高橋秀公社長と、プロダクト・プランニング担当ディレクターの郷右近一彦氏に話を聞いた(文中敬称略)。

ZDNet:2月に下り最大24Mbpsの「Palladia 210」をリリースしたばかり(2月12日の記事を参照)ですが、その出荷開始前に「eXtremeDSL MAX」を発表したのはなぜでしょう。経緯を教えてください。

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センティリアム・ジャパンの高橋秀公社長

高橋:eXtremeDSL MAXは、DSLのインフラ(電話線)で“どこまでいけるか?”という課題を1年以上検討してきた結果です。もともと50Mbpsを目標にして開発を進めて来ました。もちろん、24Mbpsのチップを売らないわけではなく、セットメーカー(ADSLモデムメーカー)やADSL事業者の開発スケジュールによって選択されることになるでしょう。

 ADSL市場は、1.5Mbpsから始まり、8Mbps、12Mbpsというように、非常に短いサイクルで広がってきました。ADSL事業者にとっては設備投資の負担が大きいのです。しかし、eXtremeDSL MAXのチップセットなら、数年という単位のロングレンジで使える製品になるでしょう。

郷右近: ADSLは、量産効果による(機器の)低コスト化が可能なボリュームのあるインフラです。これが最大50Mbpsの速度を持てば、従来なら光ファイバーやVDSLでなければ不可能といわれていたサービスを、ADSLでも提供できるようになります。

 たとえば、HDレベルの高画質な動画配信など。最近のニュースを見ていればわかるように、ADSL事業者やISPもこのような付加価値サービスを提供しようと考えている。われわれは、その基盤を安く供給できます。

高橋:とくにISPは、接続サービスよりも付加サービスによって利益を上げようとしています。そのような状況では、最大50Mbpsのスピードよりもむしろ、24Mbpsのカバーレッジが広がる(24Mbpsで接続できるユーザーが増える)ことのほうがメリットは大きいと思います。ユーザーの数は、利益に直結しますから。

ZDNet:eXtremeDSL MAXを使ったサービスは、いつ頃始まるのでしょう。

郷右近:チップセットの出荷スケジュールなど、詳細はまだ話せません。ただ、eXtremeDSL MAXをインプリメントしたチップセットは既に存在し、研究所レベルの検証が行われています。フィールドテストはまだですが、少なくとも、われわれの示した数字は理論値ではありません。

 チップセットは従来と同じ2チップ構成で、台湾TSMCが0.13μmプロセスを使って製造します(注:同社はファブレス企業のため、製造は外部に委託している)。ADSLモデムはスピードとともに省電力も求められるため、シュリンクさせていく必要があります。

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同社プロダクト・プランニング担当ディレクターの郷右近一彦氏

ZDNet:Palladiaシリーズは、高速なコアを活かしてルータやVPNのハードウェア処理といった付加価値を加えてきました。eXtremeDSL MAXのチップセットも同様のアプローチになるのですか?

高橋:そうです。たとえば、われわれはVoIP対応の局側チップセットを既に持っていますが、これをCPE(ユーザー宅のADSLモデム)に導入することは容易です。モデムメーカーやADSL事業者の要望により、インテグレートしていくことになるでしょう。

ZDNet:イー・アクセスやNTT東西地域会社など、センティリアムチップを採用している事業者は、ADSLモデムとVoIPアダプタが別々になっているケースが多いですね。一方で、Yahoo! BBの「トリオモデム」のような製品もありますが、同様の展開があるということでしょうか?

高橋:一体型は設置や操作性の面で便利ですし、コンセントが1つでよいなど多くのメリットがあります。ただ、ADSLの進歩が早すぎて、より高速なサービスに乗り換える場合は、すべて交換しなければならないといったデメリットも生じます。それでは事業者もユーザーもコスト負担が大きい。これまで、ADSLモデムの市販マーケットがなかなか広がらなかった理由も、そこにあります。

 しかしeXtremeDSL MAXなら、長いスパンで利用できる。多機能型のモデムが出てきても問題は少ないわけです。

 モデムベンダーは、さまざまな機能や特徴を持つ製品を開発して販売できる。健全なマーケットが形成されるでしょう。一方、ADSL事業者やISPによる、多様なブロードバンドアプリケーションも育つ。今のADSLは、“単なる高速なインターネットアクセス手段”に過ぎませんが、eXtremeDSL MAXにより、バリアー(障壁)を1つ越えることができるのです。

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▼米Centillium Communications

[芹澤隆徳,ITmedia]



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