リビング+:特集 2003/03/25 23:59:00 更新

特集:今、手に入るIT住宅
柔軟なネットワーク構成を可能にする“EMIT”〜松下電工

「住宅の設備というのは、数十年という長いスパンで考えなければならない」。松下電工が提供するEMITシステムは、エコーネットやSCPなど、さまざまなネットワーク規格を統合する汎用性の高いシステムだ。さらに、IPv6もサポートするという

 松下電工は、ビル内の照明などを一括管理するシステムとして知られていたエミットシステム(EMIT)を戸建て住宅やマンションに適用させ、「エミット・ホームシステム」「エミット・マンションシステム」を相次いでリリースしている。また3月25日には、インターネット総合研究所と組んで次期製品にIPv6を実装することも明らかにした。その狙いと市場性をきいた。

 エミット・ホームシステムは、インターネットを活用して携帯電話やPCから宅内の照明、センサー、エアコン、電気錠などを遠隔操作するもの。外出先からの施錠確認はもちろん、人感センサーやガスセンサーが異常を感知すると携帯電話へ音声通知する機能もある。このとき、松下電工のサーバを経由してe-Mailを送信したり、家のなかに設置したWebカメラの画像を確認するといったことも可能だ。

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もともとインターホンなど住宅設備を手がけてきた同社だけあって、コントローラ部の機能も豊富だ。来客対応にくわえ、インターネット経由で配信される「お天気情報」などを表示可能。マンションシステムでは来客をカメラ録画する機能なども提供される

 エミット・マンションシステムの場合は、集合住宅というシチュエーションに合わせた機能を持っている。例えば、宅配ボックスに荷物が到着すると携帯電話に通知する、キッズルームにWebカメラを設置して子どもの様子を知るなど。ただし、室内向けの異常検知機能や携帯電話による施錠確認は、ホーム・システムと共通の機能だ。

 松下電工HA・防災システム事業部営業企画部兼市場開発グループの古川幸司部長は、EMITシステムを一般住宅向けに発売した理由として「市場が“セキュリティ”を求めるようになった」ことを挙げる。「首都圏の新築分譲マンションに限れば、ほぼ100%がオートロックを導入済みだ。(EMITシステムも)デベロッパーが商品を“売りやすく”するための設備として着目している」。

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松下電工HA・防災システム事業部営業企画部兼市場開発グループの古川幸司部長

 もう1つの大きな理由は、ブロードバンド接続の普及だ。前述の首都圏新築マンションに限れば、全体の約8割が導入しているという。これを利用することで、センターサーバと連携したサービスが低コストで可能になった。

そもそもEMITとは?

 エミット(EMIT)は、Embedded Micro Internetworking Technologyの略。これは、「エコーネット」や「SCP」のように特定の通信方式を指す言葉ではない。同社によると、「異なる通信方式、異なるネットワーク機器を接続するためのフレームワークだ」という。

 たとえば、住宅設備機器が採用しているJEM-A(HA端子)、PCやWebカメラのTCP/IP、AV系のHiVi、家電向けのエコーネットやSCPなど……。エミットシステムのゲートウェイは、それぞれのプロトコルの違いを吸収するミドルウェアを搭載し、TCP/IPベースのネットワークに仲介する「いわば、ネットワークの翻訳機」。ゲートウェイは、モジュールの追加によって無線LAN、電灯線、ツイストペア線などさまざまな伝送手段に対応し、ネットワーク同士を物理的に接続する。

 「住宅の設備というのは、数十年という長いスパンで考えなければならない。1つの技術やインフラに偏っては、陳腐化してしまう可能性がある」(古川氏)。EMITの柔軟なシステムは、こうした住宅設備メーカーの考え方を具現化したものといえる。

 そして、次の数十年のために同社が用意したのは、IPv6のサポートだった。

IPv6に対応すると?

 昨年からIPv6の研究を行ってきた松下電工だが、3月25日にインターネット総合研究所(IRI)と提携して、エミットシステムにIPv6を実装することを明らかにした。IPv4/v6のデュアルスタックルータとしても機能するゲートウェイは「Home eXchange」(HX)と呼ばれ、来年度には製品がリリースされる見込みだ。

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松下電工新規事業推進部長の野村淳二氏(中央右)、IRIの藤原洋社長(中央左)

 IPv6をサポートすることのメリットは、まず必要な設定をネットワーク側から自動的に行うプラグ&プレイ機能を実現できること。センサーやカメラといった機器を追加する際、専門知識のないユーザーや施工業者でも対応できる“フリーリテラシー”を目指すという。

 また、IPv6によって機器間のピアツーピア通信が可能になることも大きい。松下電工新規事業推進部長の野村淳二氏は、「分散系エージェントを作れば、機器のソフトウェア同士が直接通信を行い、高度なサービスが可能になる」と話している。

 簡単な例を挙げれば、人感センサーが長時間反応しなければ自動的に消灯する、あるいはガスセンサーが反応したら自動的に空調が働くといったように、機器がお互いをモニタリングして、状況に合わせて動作することができる。

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HX試作機は、インテルチップとLinuxの組み合わせ。商品化の際には、ファンレス&ディスクレス化を図り、静音かつコンパクトに。情報分電盤のような形で提供される可能性もあるという
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背面には家電制御用のシリアル、イーサネットなどのポートが並ぶ。製品版では、ブリッジモジュールの追加によって対応するネットワーク仕様を増やすことができる(下図参照)
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HXの概要図(クリックで拡大)

 逆にいえば、IPv6によってゲートウェイも不要になるわけだが、それはまだ先の話だ。現在のネットワーク環境や機器コストを考慮すると、さまざまなネットワークと機器を統合するゲートウェイが現実的な選択。むしろ、IPv6も含めてネットワークの仕様が乱立する現在こそ、EMITの柔軟性が活きるといえるだろう。

 松下電工とIRIは今後、端末の開発やシステム全体の評価技術、アプリケーション開発などで協力していくという。2004年度版エミット・ホームシステムには、デュアルスタック対応のゲートウェイが含まれることになるはずだ。

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関連リンク
▼松下電工
▼インターネット総合研究所
▼ニュースリリース(エミット・ホームシステム)
▼ニュースリリース(エミット・マンションシステム)
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[芹澤隆徳,ITmedia]



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