リビング+:レビュー 2003/04/16 23:59:00 更新

レビュー:ホームサーバPCの実力[富士通編]
[総括]三社三様のホームサーバPCに対する意識

3つの製品レビューを通して、ホームサーバPCという名の製品を提供している各社の取り組み方はなんとなくつかめてきた。しかし、使う側がイメージするホームサーバPC像もあるはずだ。いまはまだ両者ともにさまざまなイメージが交錯している状態といえるが、作る側と使う側、両者が頭に描くものがぴったりと重なり合ったとき、ホームサーバPCという製品ジャンルが確立するに違いない。

 ソニー、NEC、富士通のホームサーバPCをひととおり見てきた。ここで、各製品のホームサーバ的特徴を振り返り、簡単にまとめておきたい。

バイオHS91

  • IEEE 802.11aワイヤレスLANルータ
  • VAIO Media(内部アクセスでのメディア共有統合環境:画像アルバム、音楽、テレビ。リモコン操作可)
  • GigaPocket(ネットワークTV機能)
  • LinkGarage(外部からのアクセス。メールチェック、ファイル共有。ただしオプションサービス)
  • ルームリンク(VAIO Mediaクライアントアプライアンス。オプション)

VALUESTAR TX

  • ドット・ゲートサービス(httpdサーバ。メールチェック、ファイル、アルバム共有、Webカメラ。主に外部からのアクセス向け)
  • SmartVision(ネットワークTV機能。リアルタイムMPEG4変換つき)
  • Windows XP Professional採用

DESKPOWER C26WC/F

  • IEEE 802.11bワイヤレスLANルータ(+本体に依存せずに動作するhttpdサーバ)
  • ファミリーネットワークウェア(httpdサーバを利用したカレンダー、掲示板、アルバム、ファイル共有、Webカメラ機能。内部および外部からのアクセス)
  • MusicSTUDIO(Net-Tune対応音楽サーバ)

 バイオHS91ではVAIO Mediaの存在がやはり光る。レビューでは「あまり必要性を感じない」と書いたが、それでも、他社の環境と比較すれば、その適度に洗練された統合環境は一歩先を行くものだ。GigaPocketによるネットワークTV配信、ビデオサーバとしての機能も併せて考えれば、家庭内でのメディアファイル共有に関しては、万全の態勢が整っていると思う。今後、VAIO Mediaが家庭内LANだけでなく、外部からのアクセスを実現する役割も果たすようになるとすれば、もはや、何もいうことはない。Hotnetworkサービスに加入すれば、LinkGarageで外部からのアクセスも可能だが、これはまた別の方向性と考えたほうがいいだろう。現状ではワイヤレスLANルータ内蔵という点があまり生かされていない感があるので、そのメリットを活用した用途提案なども見てみたい。ソニーではブロードバンドAVルータ HN-RT1という製品も展開していることだし。

 VALUESTAR TXの場合は、逆に家庭内LANでの活用が少し弱いと感じる。もちろん、SmartVisionによるネットワークTV機能は非常に強力だ。CPUパワーの恩恵で、MPEG4リアルタイムエンコード&配信が利用できるのも大きな利点である。さらに、外部からのアクセスに関しては、標準でhttpdサーバがインストールされ、ドット・ゲートサービスを介してのさまざまな活用法が提供されている。しかし、その隙間を埋めるものがほしい。テレビ機能がネットワーク内で自在に活用できるように、さまざまなメディアを管理できる統合環境の導入が望まれる。レビューでも書いたが、このあたりはMedia Center PC待ちというスタンスなのかもしれないが。

 今回紹介したDESKPOWER C26WC/Fでは、富士通のホームネットワークへの意気込みや、やりたいことは伝わってくる。ただ、そのように幅広いビジョンを描いているのに、全体としてのつながりが見えてこず、結果として、いくつかのツール群がバラバラに存在するにとどまっているのは残念だ。しかも、個々の完成度もまだまだ高いとはいえない。また、ほかの2製品と比べると、テレビ機能がかなり見劣りする。

ユーザー側から見たホームサーバPCのあるべき姿とは?

 あらゆるメディアファイル、および、家族全員のパーソナルインフォメーション(ファミリーインフォメーションと言うべきか)を集中して蓄積・管理できること。それこそが、やはり、ホームサーバPCに求められる機能ではなかろうか。本来は、各種メディアはどれも対等に扱われるべきだが、現在はその中でもネットワークTV、ビデオサーバといった用途が購入層にアピールしやすく、前面に押し出されることが多いというだけにすぎない。

 しかも、サーバPC自身、あるいはクライアントPCから、それらのデータを極力簡単に、統一されたインタフェースで利用でき、さらには、外部のPCやPDA、携帯電話などからも可能な範囲で情報にアクセスしたい。もちろん、自分でさまざまなハードウェア、ソフトウェアを使って構成すれば、一般のPCでも同様のことが可能である。しかし、「簡単」「安心」という点が確保されるのであれば、既製品のホームサーバを求めるという人は少なからずいるはずだ。

 あまりうまい表現ではないが、いまでは当たり前の「パソコンなしでメモリカードから直接印刷できるプリンタ」を、多様なメディアファイルに対応したサーバに当てはめたようなイメージだろうか。要は、入力・管理・出力のすべての工程を、誰もが簡単に扱えるべきということだ。しかも、どこからでも……。で、ここまでが、家電製品に属するホームAVサーバなどに求められる点であり、ホームサーバPCでは「気軽に出し入れ」はそのままに、「蓄積されたデータの編集・加工」というPCならではの機能が求められると感じる

 そろそろまとめに入るが、各社のホームサーバPCにこだわって紹介してきたのは、なにも今後の売れセンになると見込んでいるわけではない。むしろ、少なくともいまはまだ、大きな需要は見込めない部類のほうに入るだろう。個人的にも、こういう用途の製品を欲しているわけではない。しかし、それでも「存在してもいい」あるいは「そろそろ存在すべき」ジャンルであるとは考えている。だからこそ、あえて取り上げ、いろいろと意見を書かせてもらった。

 各社の製品を実際に使ったり、将来の姿を考えたりしているうちに身にしみて感じたのは、ホームサーバPCは単に「サーバ」であるだけでなく、同時に「プレーヤー」「クライアント」としての役割も要求されるということだ。ホームサーバPCが本当にすべてのデータを蓄積する存在になり、その中には大事なものも含まれるようになれば、データの保全という点も課題になるだろう。もちろん、家電機器、AV機器などとの相互運用性もいよいよ必須事項となってくる。人によっては、「絵に描いた餅」としか思えないかもしれないが、それでも、作る側は調理法を、使う側は食べ方をそろそろ考えておいて然るべき。個人的にはそんな心境なのである。

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関連リンク
▼富士通FMWORLD
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[浅井研二,ITmedia]



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