リビング+:ニュース 2003/04/18 20:44:00 更新


新型コクーンの“できること”“できないこと”

ソニーが発表した2種類の新型コクーン。いずれもHDDレコーダーをベースとしているため、従来の“チャンネルサーバー”の後継か、上位モデルのように思えるが、実際はかなり違う

 ソニーが4月3日発表した新型コクーン。同じコクーンブランドながら、昨年リリースされた「CSV-E77」の“チャンネルサーバー”に対して、「NDR-XR1」は“デジタルレコーダー”、「NAV-E600/900」は“ホームシアターシステム”を謳っている。同じコクーンブランドながら、実際はかなり毛色の違う製品に仕上がったようだ。その違いを機能ごとに検証してみよう。

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NDR-XR1。430(幅)×112(高さ)×390(奥行き)mmと大柄なきょう体。価格は148,000円
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NAV-E600/900は、コクーン本体にアンプを内蔵し、5.1chスピーカーをバンドルしたオールインワンホームシアターセット。E900にはスタンド兼用のトールタイプスピーカーが付属するが、E600はコンパクトなキューブ型スピーカー。アンプ部の出力も600W/500Wと異なる。価格はNAV-E600が84,000円、NAV-E900は115,000円

ネット家電の新しい販売手法

 機能を比較する前に、ひとつ認識しておくべき点がある。ソニーは、NAV-E600/900の2モデルに「Open Key Style」と呼ぶ新しい販売手法を採用した。これは、最初からフル機能の製品を提供するのではなく、ユーザーが必要に応じてライセンスを購入するというもの。つまり、機能を追加するには別料金がかかるのだ。

パック内容料金(オンライン価格)
ビデオパックTVチューナー&HDD録画31,000円(29,000円)
オーディオパックHDDジュークボックス、メモリースティック、NetMD対応機能21,000円(19,000円)
フォトパックフォトアルバム、メモリースティック、CD-ROM(画像)11,000円(9,000円)
フルパックすべての機能54,000円(50,000円)
オンライン購入は本体もしくはPCで可能。いずれもクレジットカード決済となる
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ライセンスキー購入画面。インターネット常時接続環境であれば、本体から直接購入できる

 すべての機能を利用するには、本体価格(E600で84,000円)にくわえ、最低50,000円の投資が必要になる。逆に必要のない機能を購入しなければ、そのぶんコストを抑えられるだろう。

 「購入者には、まず30日分の“お試し期間”ですべての機能を使ってもらう。PCのシェアウェアなどとは異なり、お試し期間は“その機能を使った日だけをカウントする仕組み。1度利用して、1カ月後にもう1度使用した場合でも2日目だ」(同社)。

 しかし、ソフトによる機能アップはPCの世界でこそ当たり前だが、家電分野では初の試みだ。ネット家電ならではの新しい販売手法として注目したいが、一方で一般購入者の混乱も予想される。この点について同社は「各販売店に担当者を置く、販売マニュアルを作成するなど、事前の説明を徹底する」と話している。

 (編集部注:この後の説明は、便宜上「フルパック」導入を想定した形で書かせていただきます)

TV録画機能

 TV番組の視聴にフォーカスしたチャンネルサーバーは、事前にキーワードを設定しておくと、該当する番組を自動的にリストアップして録画する「おまかせ・まる録2」が大きな特徴だった。そのぶんHDDも大容量(標準160Gバイト)で、増設スペースまで用意されている。最大320Gバイトに拡張できるのは、チャンネルサーバーの大きなメリットだ。地上波TVチューナーを2つ搭載しているため、裏番組を録画することもできる。

 これに対して、NDR-XR1とNAV-E600/900には、「おまかせ・まる録2」機能がない。また、地上波TVチューナーは1つ、HDD容量も80Gバイトと少なく、チャンネルサーバーに比べて物足りない印象を受けるのも事実だ。

 さらにNAV-E600/900の場合は、後述の音楽ジュークボックスやフォトアルバム機能などに約20Gバイトを割いているため、TV録画に使えるのは約60Gバイトとなる。

機種録画モードと録画時間
NDR-XR1HQ:約15時間、SP:約30時間、EP:約60時間、SLP:約90時間
NAV-E600/900SP:約26時間、EP:約46時間、SLP:約92時間
HDD容量が少ないホームシアターシステムは「HQ」モードがない。にも関わらず、最長録画時間がXR1よりも長いのは、同じ「SLP」モードでもビットレートが異なるためと思われる

 もちろん、新モデルにもEPG予約録画は用意されている。ソニーの運営する「カモン!マイキャスター」の「ネット番組ガイド」から情報を入手し、最大1週間先までのデータを入手。「時刻別番組表」「放送局別番組表」からの予約はもちろん、出演者やキーワードで検索をかけ、予約することができる。

 さらにNDR-XR1の場合は、例えば「中国」と入力したら「中華」「チャイナ」「漢」といったワードもヒットする“あいまい検索”も可能。「検索は番組ガイドにある番組紹介文を対象としているため、タイトルに含まれていなくても見逃すことがない」という。CSV-E77と同様、外出先からでもPCや携帯電話を使って予約録画が行える「@録画予約」にも対応した。

 家族で利用することを想定し、ユーザーごとにTV録画データを保存できる「Myフォルダ機能」を備えたのはXR-1だけだ。この機能をオンにすると、デフォルトのフォルダにくわえて「A」〜「D」までのフォルダが現れる。各フォルダには暗証番号も設定可能だ。

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フォルダごとの容量は設定できないが、利用状況はグラフィカルに表示してくれる

 チューナーは、地上波チューナーが1つである代わりに、NAV-E600/900にFM/AMラジオチューナーが、またNDR-XR1にはアナログBSチューナーが付いた。TV録画に関する機能比較は下記の通り。

機種CSV-E77NDR-XR1NAV-E600/900
地上波チューナー211
BSアナログチューナー--
(AM/FMチューナー)--
ネット番組ガイド
PC/携帯電話から録画予約-
おまかせ・まる録2--
フォルダ分け--

メディア記録・再生機能

 デジタルレコーダーのNDR-XR1は、HDDに録画したTV番組をDVD-R/RWメディアに記録することができる。手順は、各番組のチャプターから「プレイリスト」を作成し、「かんたんダビング」画面でリストを選択するだけ。操作はすべてリモコンの十字キーで行える。DVDメニューの制作も可能で、30種のテンプレートを標準装備した。

 また、前面パネルの内側にはメモリースティックスロットとDV入力(IEEE 1394、4ピン)があり、デジタルカメラで撮影した画像をTVで閲覧したり、DVカムコーダーから動画を取り込んでDVDを作成するといった機能を持つ。ただし、メモリースティック内の画像をHDDにコピーすることはできない。

 一方のNAV-E600/900は、ホームシアターシステムを謳うだけにメディア再生機能が豊富だ。サラウンドフォーマットは、ドルビーデジタル・DTS・ドルビープロロジックII、そしてBSデジタル放送の5.1ch放送に使われるMPEG-2 AACもサポートした(チューナーは別売)。

 一番の特徴は、音楽や画像をHDDに保存できること。「フォトアルバム」機能では、デジタルカメラ画像をメモリースティック経由で取り込めるほか、画像データが入ったCD-RメディアからHDDにコピーすることができる。保存枚数はVGAサイズのJPEG画像で約11,000枚。TIFF、PNG、GIF、BMPといったファイル形式もサポートし、画像の回転や画質調整など簡単なフォトレタッチ機能も備えている。

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NAV-E600/900の「フォトアルバム」画面。NDR-XR1はスライドショー再生時にBGM(3曲プリセット)を流せるが、NAV-E600/900にこの機能はない

 「HDDジュークボックス」機能では、CDやFM/AMチューナーから、PCMもしくはATRAC 3(66K/105K/132Kbps)フォーマットでHDDに取り込める。音楽CDならアルバム約500枚ぶんを録音可能だ(ATRAC 3/66Kbpsの場合)。MGメモリースティックやUSB接続されたNet-MDにチェックイン/アウトが可能になる。

 HDD内には、あらかじめ洋楽・邦楽合わせて約39万タイトルぶんの楽曲データが登録されており、わざわざソフトウェアキーボードで曲名を入力する必要はない。もちろん、新譜CDなどデータベースにない場合は、ネットワークを通じてGracenoteのDBにアクセス。自動取得する。

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「HDDジュークボックス」画面。「よく聞く曲」や「最近聞いた曲」などで選曲することもできる

 メディアの録画・再生機能に関する機能比較は下記の通り。

機種CSV-E77NDR-XR1NAV-E600/900
CD/DVD再生-
DVD録画--
音楽ジュークボックス機能(HDD)--
フォトアルバム(HDD)--
Net MD対応--
MGメモリースティック(記録・再生)--
メモリースティック(再生)-
CD(画像再生)--

ネット対応機能

 新モデル共通で強化された部分がネット対応機能だ。まず、イーサネットポートは、CSV-E77の10BASE-Tから10/100BASE-TXに変更された。また、両機種ともWebブラウザを搭載し、一般的なWebサイトであれば、リモコンとTVで閲覧できる。

 またNAV-E600/900の場合は、メールの送受信機能も付加された。これは、HDD内に取り込んだ画像を、家族や友人達に送信するという用途を想定したもの。ソニー製携帯電話で定評のある予測変換機能「POBox」も搭載し、リモコンの数字ボタンを使ってメールを書くことができる。ケータイに慣れた人は、ソフトウェアキーボードなどより便利に使えるはずだ。

 残念なのは、ネットワークを介してPCと連携する機能が今回も含まれていないことだろう。ネット対応機能の比較は下記の通り。

機種CSV-E77NDR-XR1NAV-E600/900
ネット番組ガイド
Webブラウザ-
メーラ--

“後継”ではない

 ソニーによると、「コクーンは、ネットワークとHDDを使って成長するマシン」という。イーサネットポートとHDDを搭載し、オンラインアップデートによって機能を追加・向上できる。これがコクーンの定義だ。そのなかで、同社は複数のアプローチで新しい市場を開拓しようとしている。

 「チャンネルサーバーは“自分専用の放送局を持つ”がコンセプトだったが、XR-1の場合はDVD-R/RWドライブを使い、ユーザーの好みで(録画番組をDVDに)残すこと」(ソニー)。一方、NAV-E600/900の場合は「DVDやビデオ、そして音楽や画像も“すべてTVの下に”」がコンセプトだという。

 今回はっきりしたのは、2つの新製品は「CSV-E77」の“後継”ではなく、バリエーションであるということ。いずれもHDDレコーダーをベースとしているためわかりにくいが、購入時には必要な機能を踏まえ、各モデルの差異を考慮して選択する必要があるだろう。

 ただ、やはりユーザーとしては“全部入り”の登場にも期待したいところだ。

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関連リンク
▼ニュースリリース(ソニー)
▼コクーンホームページ

[芹澤隆徳,ITmedia]



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