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2003/06/11 23:07:00 更新 |
ブロードバンドで何ができるのか、それが課題〜総務省
「高速道路は建設されつつあるが、走っている車がいない」。日刊工業新聞主催のシンポジウムで、総務省情報通信政策局技術政策課の稲田修一氏はこう指摘した
「高速道路は建設されつつあるが、走っている車がいない」。6月10日に開催された日刊工業新聞主催のシンポジウムで、総務省情報通信政策局技術政策課の稲田修一氏はこう指摘した。
総務省情報通信政策局技術政策課の稲田修一氏
近年、高速・低料金のADSLが牽引する形で日本のブロードバンドは急速に進歩してきた。2003年3月末時点のブロードバンド加入者数は約940万。DSLサービスのスピードは世界トップレベルとなり、一方でサービス料金の低価格化も進んでいる。通信料金が家計に占める割合を比較すると、韓国が3%、米国が1.4%に対して日本は0.8%と飛び抜けて安いという(出典はITUブロードバンド普及のためのWS ITU職員発表資料)。
「世界の中でも進んだブロードバンド環境が出来上がった。ところが、まだあまり使われていない」(同氏)。
これは、単にトラフィックが少ないという意味ではない。ブロードバンド環境で使えるアプリケーションの不足を指摘したものだ。「ブロードバンド環境を使って何ができるのか、考えなければならない。重要なのは“情報のやり取り”だ」。
今までのITの枠を超えたIT
稲田氏がIT活用の事例として挙げたのは、GPSと連携したタクシー配車システム。タクシーの位置情報をオペレーションセンター側が把握しておき、配車を依頼したお客のいる場所にもっとも近いタクシーを手配する。このシステムの導入により、タクシーの配車スピードが向上し、顧客満足度もアップしているという。
またホームユースなら、例えばネット経由のホームオートメーション(家電制御)、ICタグを使った食品トレーサビリティシステムなど応用範囲は広い。「スーパーマーケットで食品を購入したとき、バーコードやICタグを読みとって生産地や流通経路を知ることができれば安心につながる。実社会とインターネットが結びつける仕組みを作ることが課題だ」。
単なる物販で終わるのではなく、ネットワークサービスをくわえて商品の高付加価値化を図る。また、EPGを活用するHDDレコーダーのように、ネットワークサービスが製品のユーザビリティを向上させる例もある。それは、「不親切で面倒で、怖いITから、優しく簡単で、安全なITへの転換」だ。稲田氏は、“今までのITの枠を超えたIT”の発展が、将来のユビキタスネットワークにつながるとした。
6月中に政府IT戦略本部が決定する「e-Japan戦略II」には、「IT基盤の整備」にくわえて「IT利活用戦略」への取り組む内容が盛り込まれる。具体的には、医療、食、生活など7分野において高速ネットワークの活用を進めるという(参考:e-Japan戦略II(案)のPDF)。
「世界に先駆けてユビキタスネットワーク社会を実現するため、モバイル・光・情報家電といった日本の得意分野を活かした研究開発プロジェクトを推進する。また、次世代研究開発ネットワークの整備や実証実験が必要。(総務省は)これをサポートする施策を展開していく」(同氏)。
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e-Japan戦略II(案)
総務省
[芹澤隆徳,ITmedia]