リビング+:ニュース 2003/07/02 21:21:00 更新


Javaでデジタル放送が変わる

iモード携帯電話が「iアプリ」を得てさらに進化したように、TVやセットトップボックス(STB)にもJavaアプレットの実行環境が載ることになりそうだ。7月2日の「ARIB-AE/MHPセミナー」では、デジタル放送端末向けのアプリケーション・エンジンの標準化動向とプロトタイプのデータ放送番組が披露された

 iモード携帯電話が「iアプリ」を得てさらに進化したように、TVやセットトップボックス(STB)にもJavaの実行環境が載ることになりそうだ。サン・マイクロシステムズ主催の「ARIB-AE/MHPセミナー」では、デジタル放送端末向けのアプリケーション・エンジンの標準化動向とプロトタイプのデータ放送番組が披露された。

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Javaを利用したデータ放送番組「AIBO TV SHOW」。視聴者がAIBOと一緒に冒険する“視聴者&ロボット参加型番組”だ(詳細は後述)

 日本では、2000年に始まったBSデジタル放送から、データ放送のコンテンツ記述言語としてBML(Broadcast Markup Language)を使用している。BMLは、HTMLやXMLといった標準的な技術を採用しているものの、それ自体は日本の独自規格だ。一方、世界に目を向けると、欧州を中心にJava技術を使うMHP(Multimedia Home Platform)の採用が進んでいる。

 たとえば、2002年5月からフィンランド、また2002年10月からドイツでMHP対応の地上デジタル放送が開始されたほか、中国やシンガポールといったアジア諸国も試験放送を予定している。米国のCATV規格「OCAP」(Open Cable Application Platform)でもMHPの採用を決定。MHPは、データ放送のデファクトスタンダードになりつつある。

 こうした状況を踏まえ、日本でも2003年6月に電波産業会(ARIB)がMHP方式のデータ放送規格「ARIB STD-B23」を策定した。地上デジタル放送を機にTVやSTBの高度化が進むことも期待されるが、少なくともコンテンツ制作の環境は整いつつある。現在は、「ARIB-AE」の呼称で、各種ライブラリやAPIマッピングなどを含むアプリケーション実行環境の標準化作業が進められている段階だ。

 ARIB XML作業班のAE-TG(アプリケーション・エンジン・タスク・グループ)リーダを務めるソニーの出葉義治氏は、「今はBSデジタル放送のみがデータ放送を提供しているが、地上デジタル放送によって、いずれ全ての家庭用TVにBMLブラウザが搭載されることになるだろう。一方で、ハイエンドの端末を使って“手続き型”サービスを提供することも大事だ」と話している。

 “手続き型”データ放送とは、BMLのようにドキュメントだけを放送する“宣言型”サービスに対して、ドキュメントとアプリケーションの両方を提供するサービスのこと。Javaアプリケーションが動作するMHPデータ放送がこれにあたる。

BML方式とMHP方式の比較
-BML方式MHP方式
国内標準規格ARIB STD-B24ARIB STD-B23
技術HTML/XML+ECMAScriptJava
実効環境ブラウザ仮想マシン
動作動的、宣言的動的、手続き的
開発手法レイアウト中心ロジック中心(プログラム)
メリット記述が比較的容易複雑かつ高度な処理が可能
類似サービスiモード(ブラウザ型)iアプリ(実行型)
 ZENTEKの資料をもとに作成

 MHPデータ放送では、デジタル放送の空きスロットを使ってJavaアプレットを配信する。端末にはHDDなどのストレージが用意され、そこに受信したアプリケーションコンポーネントを蓄積・再利用することも可能になるという。もちろん、単にプログラムを配布するのであれば、インターネットなどの“通信”インフラを使うこともできるが、出葉氏はTVのように一度に多くのユーザーが視聴するメディアには“放送”が適していると指摘する。

 「たとえば、iアプリでは1つの人気アプリケーションを手に入れるため、多くの人々が個別にダウンロードしている。これは帯域の無駄使いだ。放送波でマルチキャストできれば、一度で多くの端末にアプリを送り込める」(出葉氏)。

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STD-B23をベースとした実装例。このほか、BMLブラウザを仮想マシンから独立させ、組み込みアプリとする実装方法も提示された。その場合はBMLブラウザ部分は従来と同じのため実装が容易だが、反面、ブラウザとアプリの切り替えにはユーザーの操作が必要となる

AIBOでゲーム

 MHPアプリケーションのデモンストレーションには、トマデジのエグゼクティブプロデューサー、船橋洋介氏が登場。「スタッフがストレス解消のために作った」というプロトタイプ番組「AIBO TV SHOW」を披露した。

 AIBO TV SHOWは、AIBOの持つ機能を使ってさまざまなミニゲームをクリアしていく冒険番組だ。AIBOとSTB(デモにはPCを使用)は無線LANで接続され、コマンドや各種センサーのデータをやり取りできる。

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AIBOをコントローラにしたゲーム。AIBOの角度データを使ってトロッコの進む方向にうまく重心を移さないと脱線してしまう。AIBOを抱えて左右に素早く動こう

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AIBOの色センサーを使う宝探しゲーム

 番組の最後は、AIBOとユーザーの絆を確かめるゲームだ。そのシチュエーションは、“悪いテレビ局”に魂を抜かれてしまったAIBO……飼い主の呼びかけが届かないと、魂が空に飛んでいってしまうというもの。

 ここでは、AIBOのマイクを使って環境音と声の音量を比較している。その差が一定のレベルに達するとAIBOは復活するのだが、声量が足りないと、せっかく育てたAIBOが初期化されてしまうのだ。

 「魂を返して欲しかったら“来週も見てね”」(同氏)。かなり悪いテレビ局だ。

サービス開始は数年先?

 MHPを採用するメリットは、「コンポーネントの再利用が可能なこと、マルチスレッド対応、多階層のAPI、そしてデータ形式の自由度が上がること」(船橋氏)など。とくにマルチスレッド化により、通信関係の処理をOS側に任せることができるため、ネットワークアプリケーションには大きな恩恵があるという。

 ただ、MHPベースのデータ放送サービスがすぐに始まるかといえば、そうではない。ソニーの出葉氏によると「ARIB-AEの規格策定が終わるのは2004〜2005年。2011年のアナログ停波という目安はあるが、各ベンダーともまだ“考えながら走っている”状態だ」という。なお、実用化にあたっては、携帯端末向けのデジタル放送を含め、複数のモデルが出てくる可能性が高いと指摘している。

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関連リンク
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[芹澤隆徳,ITmedia]



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