リビング+:ニュース 2003/07/04 21:16:00 更新


遊覧船がホットスポットになると?〜松江市

江戸時代の風情が残る島根県松江市。松江城を取り囲む約3.7キロの堀川を40〜50分かけてめぐる堀川遊覧船がホットスポットになった。しかも、5GHz無線LANだ

 島根県の観光名所として知られる松江城。その周囲を巡る堀川遊覧船でユニークな実験が行われた。船に屋外用5GHz無線LAN基地局とノートPCを積み込み、船内をホットスポット化するというものだ。7月4日、地域マルチメディア・ハイウェイ実験協議会21のセミナーで実験の最終報告が行われた。

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堀川遊覧船(松江市の観光HPより)

 堀川遊覧船は、松江城を取り囲む約3.7キロの堀川を40〜50分かけて遊覧する観光客船だ。戦災をくぐり抜けた城下には江戸時代の風情が残り、また松江市自体が城を中心に開けたため、周囲には観光スポットも多い。「耳なし芳一」などの怪談で知られる小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の記念館や、武家屋敷なども見ることができる。

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松江市企画財政部情報システム課の松浦豊課長

 松江市企画財政部情報システム課長の松浦豊氏は、今回の実験には2つの側面があると話す。インターネットを観光に利用することの検証、そして5GHz無線LANの屋外利用における技術実験だ。「将来的に、より魅力的な観光情報を乗船客に提供する可能性を探ると同時に、遊覧船という水上移動体との間での広帯域通信における技術的な課題を検証することが目的だった」(同氏)。

 実験では、堀川端に3カ所の無線基地局およびWebカメラを設置し、地元CATV局の同軸ケーブルもしくは光ファイバーと接続した。船内にはWebカメラとノートPCを持ち込み、インターネット経由で観光情報を取得する。無線LANの設置はNECが担当。IEEE 802.11a準拠の5GHz帯(5.03G〜5.09GHz)無線LANを構築した。もちろん、すべて防水構造だ。

 広帯域のIEEE 802.11aを採用したのは、前述のカメラを使って映像伝送を行うためだ。堀川端のカメラで撮影した動画はストリーミングサーバに蓄積し、遊覧船に再送信する。つまり、乗船客は自分が乗船するときの映像や乗船中の映像を外からの視点で見ることができる。そして下船時には、サーバに蓄積した映像を書き込んだCD-ROMを記念品としてもらえるという。

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ネットワーク図。インターネット接続には、山陰ケーブルビジョンの協力により、CATV網を利用する

水面の反射が問題

 ただし、5GHz帯LANは2.4GHz帯などに比べると伝送距離が短く、透過性にも欠ける。屋外とはいえ堀川端には樹木があり、またいくつかの橋が架かっている。遊覧船はその下をくぐるわけだ。また、水面で反射した電波によるマルチパスフェージングや、遊覧船の向きによる伝送特性が課題になったという。

 NECの公共システム事業部第一販売推進部セールスマネジャーの丹羽宏樹氏は「水上の遊覧船が安定しないため、アンテナの高さや向きが変化して直接波の受信レベルは低下する。一方、水面からの反射波は陸上よりも大きく、直接波と反射波との合成レベルの強弱が激しい」と指摘する。

 ただ検証の結果、レベル変動は5〜8dB幅と大きかったものの、スループットの低下は少なかったという。予想通り、橋の下をくぐるときなどには大きく受信レベルが低下したが、-75dBm以上の受信レベルが確保できた場合には、20Mbps以上のスループットが出た。ある程度のキャッシュを常に持つストリーミング動画の場合は、支障のない状況で動画を閲覧することが可能だという。

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「大手前乗船場」から船が出発するときの連続測定試験結果。上が上り、下が下り回線だ。10dBほど低下している地点は、出港時に遊覧船が旋回したときと橋(北惣門橋)による遮蔽の影響という(クリックで拡大)

評価は上々、しかし……?

 実験では、地元住民や観光客にも乗船してもらい、アンケート調査を行った。評価は上々で、通信の状態は9割が「満足」もしくは「ほぼ満足」、カメラ映像以外のコンテンツにも7割が好感を持ったという。松浦氏は「十分に実用化できる結果」と話している。

 また、堀川周辺の観光施設情報だけではなく、「耳なし芳一」のアニメなど、すぐには見ることのできない情報も高い評価を得たという。例えば、そのときに見ることのできない季節ごとの風景、あるいは周辺施設の情報などの付帯情報なども、より魅力的なコンテンツになり得るという。

 ただし、堀川遊覧船に限っていえば、船頭さんの“語り”との役割分担、また乗船中に「景色を見るのか、パソコンの画面を見るのか」といった根本的な部分が検討課題となった。アンケートの自由記述欄にも「船頭さんの話を聞いているほうがわかりやすい」あるいは「船から見える風景とパソコンの画面とどちらを見ればいいか戸惑う」といった書き込みがいくつか見られる。

 「このような点をうまくクリアできれば、遊覧船に乗りながら多様な情報を入手できることは観光の魅力を増し、情報提供ツールとしてかなり有効と思われる。また、高齢者や聴覚障害者、あるいは外国人観光客への情報提供としても有効だろう」(松浦氏)。

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アンケート結果(クリックで拡大)

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▼遊覧船に乗ってもインターネット

関連リンク
▼地域マルチメディア・ハイウェイ実験協議会21
▼松江市観光ホームページ

[芹澤隆徳,ITmedia]



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