リビング＋：経産省がボヤく、ホームネットワーク家電の課題

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2003/09/02 21:32:00 更新

　「技術が、マーケットを追い越している――」。

　経済産業省の商務情報政策局、情報通信機器課の福田秀敬課長は、開口一番そうコメントした。

　同氏は9月2日に開催された、「デジタル家電フォーラム2003」の基調講演で登壇。「e-Life構想の推進」と題してセミナーを行った。しかし、そこはまだ発展段階にあるホームネットワーク家電市場のこと、同氏の論調は必ずしも楽観的とはいかず、しばしば課題を指摘するところとなった。

　ホームネットワーク家電により、国民に新しい価値観に基づく生活様式（＝e-Life）をもたらす。それが、経済産業省の考える「e-Life戦略」だ。5年後の2007年までには、国内の全世帯に情報家電が普及し、ネットワークで相互接続されている、という青写真を描く。

　もっとも、このイメージを具体化できる製品が市場に揃っているかというと、「現状では、若干の疑問もあるが……」と、福田氏。

　確かに、展示会場などでお目見えするネットワーク家電は、まだ実用段階とはいえない。AV機器も含めたホームサーバ製品などを考慮しても、使いこなしている人間は少数派だろう。

　同氏はまた、一般のユーザーは情報化に対する期待と不安が入り混じっているとも指摘する。2002年に野村総合研究所が行った調査によると、情報化に対してネガティブな印象を持っているユーザーが多いのだという。

　「アンケートの結果を見ると、『新しい犯罪が増えそうで不安だ』といった声や、『情報をうまく使いこなせる人と、使いこなせない人との差が広がる』、あるいは『自分のプライバシーが侵されそうで不安だ』といった意見が目立つ」（同）。

　「必要な情報が簡単に手に入り、生活が便利になる」などの、ポジティブな印象を持つユーザーは思ったほど多くないという。

　福田氏は、今後“情報化”されることになる家電の普及率は、軒並み高いとも指摘する。テレビ、冷蔵庫、電気洗濯機などの家電製品は、いずれも98～99％の普及率を示している。

　「しかし、それでいいこともあれば、うまくいかないこともある。（数が多いがゆえに）ネットでつなごうとすると、どういう手順で、どうつなぐのか、またインターオペラビリティなども問題になる」。

　これに対して、どう対応すべきか。福田氏は講演でいくつかを挙げたが、“技術の共通化・標準化”というのもその1つだ。

　業界でも既に、家庭内でのホームネットワークコンテンツ共有を推進するワーキンググループ「Digital Home Working Group」（DHWG）が設立されている（記事参照）。同氏は、こうした取り組みを肯定的に受け止める。

　3G携帯電話では、松下電器とNECがOS、ミドルウェアなどの統一で合意しているが（記事参照）、この動きも福田氏は評価する。

　「家電メーカーがソフトウェア開発で協力しなければ、バグ発生の確率も高くなる。企業向けサービスなら、SEが出かけていってバグフィクスを行えばいいが、コンシューマーエレクトロニクスでバグを出したら、回収騒ぎになる。回収となれば、軽く100億円が吹っ飛ぶので……」（同）。

　ちなみに、情報家電のプラットフォームを形成する際は、オープンソースのOSを採用してほしい、とも言及する。福田氏は、「Linuxであるとか、TRONを使ってほしいと、強く言っていることは事実」と明言した。

　もう1つ、同氏が講演で強調したのは、ユーザー重視の姿勢だ。

　セキュリティの確保や、法整備の重要性にもふれたが、興味深いのは相互接続性や信頼性などをまとめた、“コンシューマ・レポート”を公表するとした点。一般の消費者が商品選択をする際、専門家の意見を比較しつつ自ら評価、判断できる情報を提供するという。

　作成主体は、透明性の高い第3者機関にする予定。公表するデータは、技術的な評価項目のほか、ユーザーの体験に基づく評価項目を想定している。体験データでは、修理履歴や、トラブル対応なども基本項目として考えられるが、これは今後の議論を通じて決めるという。

　「テクノロジーが、マーケットを追い越している。こういう時は、ユーザーの声を聞くことが重要だ」。福田氏は、講演の終わりに、こう繰り返した。

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[杉浦正武，ITmedia]

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