リビング+:ニュース 2003/09/16 23:54:00 更新


“電波開放”政策を進める〜片山総務大臣

総務省と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が開催した「ワイヤレスIT産業シンポジウム」。片山虎之助総務大臣は“世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境”を整えるため、「広帯域の周波数を迅速に開放する」「自由な事業展開を推進する」の2つを公約として掲げた。

 9月16日、総務省と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が開催した「ワイヤレスIT産業シンポジウム」の基調講演に片山虎之助総務大臣が登壇し、情報通信審議会がまとめた「電波政策ビジョン」にもとづく今後の政策を説明した。講演の内容は、審議会の答申を確認したにとどまるが、総務大臣が“電波開放戦略”の推進を強力にプッシュしたことで、新しいサービスの登場に弾みがつきそうだ。

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片山虎之助総務大臣

 片山氏はまず、電波利用関連分野の市場規模推計を紹介した。これによると、現在はまだ、放送や無線通信といった電波関連のコア産業が主であり、2000年現在の市場規模は約19兆円となっている。しかし、「電波を利用することで飛躍的に商品やサービスが高度化すると期待される分野」などが伸び、2008年には約43兆円、2013年には約92兆円の市場が形成される見通しという。これには、ゲームや医療・教育分野などが含まれる。

 しかし、電波周波数の逼迫状況は周知の通りだ。段階的に開放を進めている5GHz帯FWAのように、周波数割り当てを変更する必要から実験や商用サービス開始までの時間も長くなりがち。片山氏は「広帯域の周波数を迅速に開放すること、自由な事業展開を推進すること」の二つを課題として挙げ、具体的な政策として「電波再分配のための給付金制度導入」と「登録制の一部導入」を掲げた。

 給付金制度は、再分配に伴って周波数帯の移行を余儀なくされる事業者に対し、給付金を使って補償するというもの。昨年12月に公表された電波有効利用政策研究会の第1次報告書で提言されている。「既存の利用者には設備の残存価値や撤去費用などの損失が発生する一方、新規利用者には経済的な利益が発生する。新規利用者から徴収する給付金で補償することで、今までは10年以上かかっていた既存利用者の“退席”を3年程度まで短縮する」(同氏)のが狙いだ。

 一方の“一部登録制”は、屋外無線LAN(FWA)など小電力&共同利用型のベストエフォートサービスなどに限り、事後チェックの登録制を適用するというもの。現在は、事前チェックによる免許制が当たり前だが、放送など大電力&排他利用の帯域保証型サービスとは区別する方針だ。これにより、FWAやNWA(ノマディック・ワイヤレス・アクセス)などの新しいサービスを迅速に提供できるようになり、また電波の多重利用を促進して効率化を図るという。

 また、電波利用料の不公正も是正する。電波利用料は主に電波監視施設の整備や周波数逼迫対策のために使われるものだが、その負担バランスについては「不公正、バランスが悪いという声が多い」。たとえば、電波利用料は地上デジタル放送に伴うアナ・アナ変換の財源にもなっているが、総額536億円(平成15年度)のうち、83%を負担しているのは携帯電話事業者だ(記事参照)。

 携帯電話事業者の場合、電波の利用効率を高めようと無線局(基地局)の数を増やすと、かえって電波利用料の負担が重くなってしまう。このため、既に放送事業者の負担割合を引き上げるといった措置もとられているが、さらに片山氏は「電波利用料の性格について見直しを行い、関係者の意見を十分に聞いたうえで、来年の法改正に結びつけたい」と話している。

顔の見える日本

 このほか、研究開発にも力を入れる。無線の実験免許の事務手続きを簡略化し、現在は最長で6カ月間かかっていたものを1カ月まで短縮する方針だ。また、将来のユビキタス社会の基礎になるものと位置づけているRFIDに関しては、「今年も実験を行っているが、来年はさらに力を入れる」。

用途現状見通し
移動通信システム(携帯電話など)4〜5GHzより下で10年後には現在の4〜5倍の周波数が必要周波数の再配分などを実施
無線LAN、情報家電5GHz近辺で10年後には現在の4〜5倍の周波数は必要周波数の再配分などを実施
地上デジタル放送TV放送の周波数変更作業中サイマル放送終了後は空き周波数を移動通信などに利用
RFID電子タグの高度利用が進展950MHz近辺を候補に新たな周波数帯を検討
ITS、UWB、準天頂衛星システムなど研究段階国際的な整合性を踏まえ割り当て実施

 総務省の狙いは、電波割り当てや研究開発の環境を整え、携帯電話やネット家電といった日本の強みを将来にわたって活かすこと。経済の再生と同時に、国際競争力を向上させ、“世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境”を整えるという。片山氏はこれを、「世界から顔の見える日本。もちろん、立派な顔にしたい」と表現した。

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▼総務省

[芹澤隆徳,ITmedia]



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