リビング+:ニュース 2003/09/19 22:17:00 更新


無線LANユーザーの必携ツールとなるか? 「iPassConnect 3.0」の便利度

公衆無線LANサービスは事業者ごとに認証の方法が異なるため、接続先の切り替えは意外と煩雑な作業だ。まして、勝手の分からない海外出張や旅行先ではなおさら。こうした心配事を解決するツールとして期待されるのが、10月下旬から登場する「iPassConnect 3.0」だ。

 「iPass」(アイパス)と聞いただけで、すぐにピンとくる人は、大手企業にお勤めの方か、あるいは旅慣れているビジネスマンではないだろうか。直感ででも「iはインターネットの略、Passはパスワード? いや、パスポートかな?」とでも出てくれば、当たらずとも遠からず。海外でのインターネット接続を可能にする、国際ローミングサービスの会社である。

意外と困難なワイヤレスブロードバンドの現実

 IEEE 802.11bによるWi-Fiが誕生して以降、米国を中心として、無線LANによるインターネット接続が普及し始めている。それに伴い国際ローミングも次第にワイヤレス化、ブロードバンド化が進んでいる。Centrino搭載ノートの発売も重要な要因のひとつだろう。だが、ダイヤルアップ接続と比べると無線LANによる接続は、ビジネスマンにとって、ややハードルが高いという現状がある。

 一般に“ホットスポット”と呼ばれる公衆無線LANサービスでは、提供する事業者ごとに認証の方法が異なっている。多くの場合はESS-IDとWEPキーをあらかじめ入手しておき、無線LANカードの専用ユーティリティやプロパティなどで設定。アクセスポイントへの接続ができたら、ブラウザを開いて最初に現れる事業者のホームページで、ユーザーIDとパスワードを入力してログインする。もちろんサービスエリアの中にいる(とわかっている)ことが前提の話になる。

 日本でも面倒な作業を、事情の異なる海外で行うのは時として至難の業ともなる。Windows XPの登場で少しは楽になったとはいえ、複数の事業者のアクセスポイントを捕らえてしまったり、WEPキーがわからず設定ができなかったり、接続してもすぐに切断されてしまったりと、トラブルに遭う可能性は高い。そして、こうした心配事を解決するツールとして期待されるのが、10月下旬から登場する「iPassConnect 3.0」だ。

総合接続環境としての「iPassConnect」

 iPassConnectの提供ルートは2通りある。ひとつは、iPassと契約をしている企業が社員向けに配布する方法。そしてもうひとつがiPassと契約をしているISPが会員向けに提供する方法だ。iPass自身は、直接コンシューマー向けのダウンロードサービスを行っておらず、一般のインターネット利用者がその存在を知る機会はほとんどない。ではどこでiPassとの接点が出てくるかといえば、「海外に行こう」と思い立った時になる。

 @niftyやBIGLOBEなどの大手ISPは、海外でも接続サービスを提供している。もっとも自前でアクセスポイントを持つのではなく、現地のISPから一時的にアクセスポイントを借りるわけだ。これが海外ローミングサービスの仕組みである。このとき、各ISPとの間で個々にローミング契約を結ぶのではなく、iPassやGricなどのローミングサービス会社が間に入ることで、契約の簡素化と短期間でのエリア拡大が可能になる。

 国際ローミングでWi-Fiが使われてきていることは前述のとおりだが、これまでのダイヤルアップツールに無線LANの接続機能を盛り込んだものが、現在の「iPassConnect」だ。国内で配布されているバージョン2.4は、主要ISPの会員であれば誰でも利用できる。しかし、@niftyにしろBIGLOBEにしろ、ユーザーがサービスを利用する際に、iPassを使うかGricを使うかの選択肢ができるため、半分、もしくはそれ以上の確率でGricが選ばれてしまう。理由は単純で、アルファベットの順で先にGricが出てくるからだ。

 Gricも「GricMobileOffice」という接続ツールを用意しており、iPassConnectとほぼ同様のことができる。細かなことをいえば、ローミング先が違うとか、アクセスポイント数が違うとかあるのだろうが、どちらも米カリフォルニア州に本社を構える環境のためか、サービスもエリア展開のしかたも、とてもよく似ている。

 iPassConnect 3.0は、無線LANのエリアにいるときにそれを知らせてくれる機能がついた。さらに、自動的に接続から認証、ログインが行われ、利用者は会社や家にいるのと同じくらい普通にインターネット環境を利用できるようになった。また、iPassがNTTコミュニケーションズと提携したことにより、国内の「HOTSPOT」が接続リストに加わっている。つまり、iPassConnentをインストールさえしておけば、海外に行かなくても利用するシーンがあるわけで、その点では大きく進化したといえるだろう。

使い勝手については改善の余地あり?

 ところで最近、こうした自動接続ツールの話題が目を引くようになった。日本通信の「bアクセスWiFi」や、KDDIの「無線LAN切替ユーティリティ」は、PHSと無線LANの切り替えが可能など、iPassのそれとは性格が少々異なるものの、その目的自体に変わりはない。国内と国外の違いはあるが、いずれも無線LANの電波を自動認識して、スムーズな接続を支援するツールである。つまり、PCにいずれかをインストールして起動しておけばいいのであって、そもそも使い勝手を語る必要すらない。

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日本通信「bアクセスWiFi」のシンプルなインタフェース。現在、β版を提供中だ

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KDDIの無線LAN切替ユーティリティ。電波状態を常に監視し、電波強度に応じて無線LAN、AirH"、au携帯電話の中から最適な通信環境を自動選択する

 だが、今回iPassConnect 3.0に触れる機会があって、改めて使い勝手について考えさせられた。iPassConnect 3.0自体は、優れたカスタマイズ機能を持っている。だが、ここでいうカスタマイズとは、企業やISPに向けたものであって、エンドユーザーに向けたものではない。つまり、接続先を制限したり、企業ロゴをつけたり、広告を挿入したりなどは可能だが、ユーザーがウィンドウサイズを指定したり、タスクトレイに入ったアイコンのアニメーションを止めさせたりという機能はない。

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個人のワイヤレス設定は1カ所しか登録できない。ツールの提供側が任意のアクセスポイントを追加することは可能だ

 国内だけの話であれば、bアクセスWi-Fiの使いやすさが際立ってくる。筆者が試したのはbアクセス3.0ベータだが、日本通信と無関係ともいえるFreeSpotも含め、無料のアクセスポイントを自由に登録できるのはまさに利用者の期待どおりだ。ESS-IDやWEPキーもプリセットされているし、PHSがなくても無線LAN単体で利用できる。

 その一方、iPassConnect 3.0については、いろいろ要求したいことが出てくる。だが、同製品はISP、もしくは使用する企業ごとのカスタマイズによって、まったく別のツールになってしまうのだ。だから標準機能について一様な使いやすさを求めてもしかたがない。そして恐るべきはそのアップデート機能だ。世界規模で差し換わる電話帳は、週に一度、自動でアップデートされる。そればかりか、機能向上にあわせて本体のソフトウェアまでもがアップデートされるそうだ。

 一度インストールしてしまえば、あとは提供者の考え方次第でどんどん便利なツールになってしまうiPassConnect 3.0は、無限の可能性を秘めている、とてつもないインタフェースなのかもしれない。

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自動検出ではなく、地域指定による検索を行ったところ。トライアル版のためか、接続先が50音順できちんとソートされていないが、もちろんカスタマイズでどうにでもなるはず

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関連リンク
▼アイパス
▼bアクセスWiFi(日本通信)
▼無線LAN切替ユーティリティ(KDDI)

[江戸川,ITmedia]



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