リビング＋：TGS2003基調講演～任天堂岩田聡氏

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2003/09/29 15:59:00 更新

東京ゲームショウ 2003
TGS2003基調講演～任天堂岩田聡氏

東京ゲームショウ2003の基調講演で、任天堂の代表取締役社長岩田聡氏は、最近の日本市場の動向や、今後の同社の展開についてスピーチを行った。最近のゲームソフトの市場縮小は、ゲームがこれまで成功してきた法則が通用しなくなってきていることの帰結だという。

任天堂代表取締役社長岩田聡氏

　東京ゲームショウ2003の基調講演で、任天堂の代表取締役社長岩田聡氏は、最近の日本市場の動向や、今後の同社の展開についてスピーチを行った。最近のゲームソフトの市場縮小は、ゲームがこれまで成功してきた法則が通用しなくなってきていることの帰結だという。

高度化・複雑化するゲームについていけない非コアゲーマー

　日本のゲームソフト市場は、97年をピークに年々縮小している。これについて岩田氏は、巷間いわれている景気低迷や少子化が影響しているという説に懐疑的だ。以前は景気の影響を受けていなかったこと、そして、対象年齢層が高いとされているハードでもソフト市場の縮小が発生しているため少子化も関係ないのではないか、という見方だ。そして、この縮小の根本的な原因は、「『ゲームの大容量化・複雑化によりゲームユーザーを満足させる』というこれまでの成功法則が限界に達し、飽和してきたため」と指摘する。

　あらゆる娯楽は「ユーザーの限られた時間を奪い合う競争」の中にあるが、複雑化したゲームを遊ぶには膨大な時間が必要。このため、あまりにたくさんの時間とエネルギーがいる遊びにつきあえない人が増えているという。過去には、それぞれ一時代を築いた「シューティング」や「格闘ゲーム」は普通の人が遊べない（勝てない）ほど難しくなり、市場が縮小したが、同様の現象がゲーム全体で起きているという。

　そんな中で例外的に世界中で売れているソフトが「ポケットモンスター」だ。現時点で日本で479万、北米316万、欧州211万、豪州15万本を売り、世界中で1000万本を越える大ヒットとなっている。ポケットモンスターは、リアルでもない、大容量でもない、3Dでもないが、「間口の広さ遠くの広さ」を両立したソフトとして、誰にでも遊べる丁寧な導入と周りの人たちと一緒に遊べる楽しみ（「閉じてない」コンセプト）によって、重厚長大路線だけが答えではないことを証明していると述べた。

ブロードバンドのオンラインゲームは「切り札」たりえない

　岩田氏は、ゲーム業界の「次のトレンド」について、現在騒がれているオンラインゲームは、広いユーザ層に向けた解ではないと見る。そして、「これからはすべてオンラインだ、オンラインゲームでないと価値がない」といった意見を「暴論。ドットコム（バブル期）のようなハイテク詐欺師たちのロジックである」と断じ、むしろパッケージゲームより成功の割合が小さいのではないかと述べた。

　月額課金はベンダーに魅力的だが、ユーザからは敷居が高い。オンライン機能の会員数が75万だとか50万だといっても、ゲーム機全体から見るとまだ数パーセントに過ぎない。また、家庭用ゲーム機をブロードバンド接続するための敷居も高い（ルータ設定、ブロードバンド導入など）ことや、日本の外、世界中の多くの国ではブロードバンドの普及にまだ時間がかかることなどがその理由。オンラインでプレイできる人の数は制限される上に、さらに月額契約となるとさらに狭くなるため、ゲームが売れなくなってきているのに、オンライン専用はさらにポテンシャルを狭めてしまう、というわけだ。

　とはいえ任天堂も、1982年にすでに「コンピューター麻雀（ポータブルタイプのマージャンゲーム端末）」に通信ポートを載せた会社だけあって、ネットワーク技術を無視しているわけではない。

　その答えが、新作ポケットモンスターに同梱される無線ネットワークアダプタだ。GBA向けのポケットモンスター「ファイアレッド」と「リーフグリーン」（初代ポケモンの赤と緑のリニューアル版）で、無線アダプタ込みで価格は4800円。開発はモトローラで、赤外線ではなく無線のため、見通しでなくても数メートル範囲の相手と通信が可能、ポケモン交換だけでなくリアルタイム対戦にも利用できる。店舗や駅などの無線基地局からデータ配信サービス（限定ポケモンの配布などなど）を行えるだけでなく、インターネットと無線基地局をつなげば、遠隔地とのやりとりも可能になる。

　このアダプタはポケモン専用ではないため、他のGBAソフトでも無線が利用できるようになる。数百万ユニットがユーザに行き渡れば、ほぼ最強のユビキタスのネットワークゲームインフラが突如現れることになる。電車の中でゆきずりのポケモン交換、なんてことも日常的な光景になるのかもしれない。