リビング+:ニュース 2003/10/16 23:45:00 更新


立花隆氏が説く「電子書籍のゆくえ」

10月16日、電子書籍ビジネスコンソーシアムの設立総会が行われた。この席上で、コンソーシアムの特別顧問に就任した評論家の立花隆氏が講演を行い、電子書籍の未来展望を話した。

 10月16日、電子書籍ビジネスコンソーシアムの設立総会が行われた。この席上で、コンソーシアムの特別顧問に就任した評論家の立花隆氏が講演を行い、電子書籍の未来展望を話した。

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 同コンソーシアムの狙いは、イーブックビジネスの今後の展開を検討すること(記事参照)。具体的には、コンテンツにまつわるデジタル編集・圧縮技術の調査から、配信/課金方法を含めた流通経路の研究まで、幅広い活動を行う。参加企業には、小学館や読売新聞などのコンテンツプロバイダのほかに、松下電器産業や東芝などのブックリーダーメーカー、紀伊国屋書店や旭屋書店といった書店など、61社が名を連ねた(メンバーリスト参照)。

“待望”の専用リーダー登場

 立花氏は冒頭、米Barnes&Noble.comが電子書籍ビジネスから撤退したことを紹介。その原因を探るところから講演を開始する。

 米報道によれば、現地での電子書籍ビジネスのマーケットは決して縮小傾向にあるわけではない。むしろ、2002年上半期に380万ドルだった売上規模が、2003年上半期には500万ドルに拡大するなど、それなりに伸びてはいるのだという。

 しかし、米報道は同時に、利用しやすい専用読書端末が登場しなかったことも紹介する。「米国では、電子書籍というとPDAなんですね。かなりごつい専用リーダーもありますが、これでは読みやすくないと言っている」(同)。Barnes&Noble.comも、この課題が解決しなかったために、結局は十分なセールスを上げられなかったとした。

 一方、日本市場ではまさにこうした悩みを解決する端末として、ΣBookが登場した。これは、9月10日の記事でも触れたとおりだ。読書専用端末が登場したという事実は、業界を格段に活性化させる可能性を秘めている。立花氏は、当初メーカーサイドからこの話を聞いたとき、「米市場で出した方が有利なんじゃないか?」と提案したものだと明かした。

「アーカイブ化」の実現はまだまだ

 立花氏は、現状では電子書籍の取り組みが始まったばかりであることに言及する。インプレスの調査によれば、これまで市場に出ている電子書籍の総数は、約4万点。しかし、立花氏は紙の書籍なら年間7万点は出ていると話す。

 「(紙の出版物は)これが累積して、今に至っている。ちょっとした図書館なら、100万単位で蔵書があるし、大規模な図書館なら何千万ある」。これと比較すると、書籍の“アーカイブ化”をウリにするイーブックビジネスも、まだまだだといえるだろう。

 ただし、電子書籍の魅力はもちろん、アーカイブ化以外のところにも存在する。立花氏が可能性を言及したのは、1つには入手しにくい古書を“オンデマンド出版”することだ。

 「ΣBookでは、どんな本でもスキャンして電子化することができる。たとえば、古本屋に『大日本史料』という書物がある。これは全部で350〜360冊、全部揃えようとすると1000万円するものだが、(イーブックビジネスでは)これを個人が欲しい部分だけ、オーダーメイドで入手できる」。

 同氏はまた、図書館で借りた本を全ページコピーして手元に置く、という自らの経験も紹介しながら、上記サービスへのニーズは多いはずだとした。

「社会の相転移を引き起こすような大変化が」

 立花氏はイーブック市場の今後の立ち上がりについて、一部の出版社は懐疑的な見方をしていることも指摘する。「やらないと、よそに作家をとられてしまうということで、形式的にやっているところもある」。

 確かに、10万部売れた新刊があったとして、電子書籍業界では同じコンテンツを3000部売れれば「大成功」と評価される。これは、紙とは異なりイニシャルコストが低いことにも起因している。しかし立花氏は、「この世界に留まっていてはならない」と苦言を呈する。

 同氏は、市場は時間の経過とともに、指数関数的に大きく拡大するはず、と話す。各社が取り組むさまざまな試みが効果を表し始めれば、いずれイーブックは「社会の相転移を引き起こすような大変化」を巻き起こすだろう、と関係者を鼓舞する。

 同氏はまた、活版印刷の技術を発明したとされるグーテンベルグが、莫大な借金を背負い必ずしも「楽ではない生涯を送った」ことも紹介。イーブックを始めようとする人間も、同様の結果となって「歴史に名を残すだけになるかもしれないが」と付け加え、会場中の笑いを誘いながら、講演を締めた。

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[杉浦正武,ITmedia]



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