リビング+:ニュース 2003/10/20 18:58:00 更新


“まじす”が家にやってくる

優れたQoS機能を持ち、70メートル先に高品質動画を伝送できる。家庭にフォーカスした注目の無線技術が、米Magis Networksの「Air5」だ。同社は先週、大阪で国内メーカー数社を含むパートナー各社とAir5の普及に向けた業界団体「Air5 SIG」を結成。来年の早い時期には対応製品が登場するという。

 今年1月、「International CES 2003」の展示会場で報道陣の注目を集めた“まじす”こと米Magis Networks。そのMagisが、先週パートナー各社とともに業界団体「Air5 SIG」を立ち上げた。会合の場所が大阪という点からもわかるように、彼らの狙いは日本の家電メーカーだ。Magisのプラットフォームマーケティング担当マネジャーで、Air5 SIG議長を務めるマーク・ブリッジウォータ氏に話を聞いた。

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同社プラットフォームマーケティング担当のマーク・ブリッジウォーター氏

Magisが注目される理由

 Magisの無線LAN技術「Air5」は、動画や音楽などリアルタイム性が重視されるアプリケーションを得意としている。理由は、OFDM方式に特化したQoS(Quality of Service、帯域保証サービス)。データをOFDMで複数の周波数に分割する際、動的にストリームの割当数を変化させ、さらにTDMA(時分割多重)も併用して優先すべき動画などの帯域を確保する(詳細はこちらを参照)。接続中に干渉を検知すると、ダイナミックにチャンネルを選択したり、アプリケーションに見合ったレベルの信号出力を確保するといった機能もある。

 伝送レートはIEEE 802.11aや同11gには及ばないものの、見通し250フィート(約76.2メートル)で48Mbps(理論値)の高速伝送を確保できるという。「われわれのソリューションは家庭内をカバーできる無線ネットワーク。スピードを欲張らずに距離を出すことにフォーカスしている」(同氏)。

 伝送距離を延ばすため、チップには標準的に5つのアンテナが搭載され、強い電波を受信できた上位2本の信号を利用する仕組みだ。これは、CSWR(Crawford Special Wavefront Receiver)と呼ばれるインテリジェントマルチアンテナ技術。Air 5には最大40Mbpsの「MGS6200」と、最大16Mbpsの「MGS5200」があるが、伝送距離はどちらも同じだ。

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Air5では標準的に5つのアンテナが搭載され、強い電波を受信できた上位2本の信号を利用する

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Magis Networksの「Air5」シリーズには、「MGS6200」と「MGS5200」の2種類がある。写真は最大40MbpsのMGS6200

 ただし、電波が遠くまで届きすぎるのも、また問題だ。隣家のテレビが混信したり、逆に隣家のテレビに干渉するといった弊害も考えられる。これは、CATVなどの有料放送ビジネスに打撃を与えるほか、教育上の問題も生じる可能性がある(下図参照)。このため、Magisでは3DES暗号化と認証技術を実装し、さらに接続中も認証した機器だけに映像ストリームが受信されていることを確認する機構も備えたという。

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干渉例。これはマズイ。とてもマズイ

 もう1つ、家電メーカーに注目されている理由が、電波状況が悪くなったとき、あるいは新しいデバイスがネットワークに加わったときでも、伝送中のストリームに影響を与えにくいという特徴だ。これがIEEE 802.11a(+.11e)など標準規格に対する最大のアドバンテージ。「802.11の場合、新しいデバイスが入ると……つまりインタラプションが起きるとコネクションを張り直す。このタイムラグが家電用途に向かない理由だ」。同氏によると、三洋電機やJVCがMagisに注目している理由も同じだという。

 ワイヤレスの利点を活かしながら、ケーブル接続では当たり前に享受していたメリットも過不足なく提供する。このあたりが、家電メーカーに支持されている理由といえそうだ。「家電向けワイヤレス技術を既存の無線技術と比べても意味はない。従来のワイヤードシステムと比べ、必要な機能を提供できるか、という点で評価すべきだろう」。

CESで大々的にデビュー?

 先週、大阪で設立された「Air5 SIG」には、三洋電機、日本ビクター、Samsung、BenQ、Motorola、ViewSonicなどが参加している(受付が終了していないため、参加企業の数は今後も変動する)。設立の主旨は、相互運用性やロゴ認証プログラムを進めるワーキンググループの発足。そして、2004年1月にラスベガスで開催される「2004 International CES」の準備という側面もある。Magisとパートナー各社は、世界最大の家電ショウを舞台に、Air5と対応製品を大々的にアピールする構えだ。「2004年のInternational CESでは、ワイヤレス対応のプラズマTVなど、パートナー企業各社がAir5対応機器を展示するだろう」。またブリッジウォータ氏は、「CESに展示する製品のいくつかは、2004年の早い時期に市場投入される」という見通しも示した。

 なお、日本ビクターは10月上旬の「CEATEC JAPAN」でもMPEG-2によるHD伝送のデモンストレーションを披露しているが、これもAir5チップを搭載したものだ(10月8日の記事を参照)。Magisは、PVRなどの映像を離れた場所で視聴するための「A/V DMA」(Audio Video Digital Media Adapter)リファレンスデザインを提供しており、ビクターの製品も同様のコンセプトを目指したものといえる。

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日本ビクターが「CEATEC JAPAN」で展示したAV機器用のワイヤレスアダプタ

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Magisが考える「A/V DMA」の概要図。PVRなどの映像を離れた場所で受信しつつ、赤外線リモコンを透過的に伝送するアダプターだ

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「A/V DMA」用のリファレンスボード

 ただし、家庭をターゲットにする以上、Magisは安価で簡単なワイヤレスソリューションになることが必須だ。Air5のチップ価格は安いほうの「MGS5200」でも30ドル強(1万個ロット時)と、まだまだ高価。汎用的なIEEE 802.11に比べて、十分にコストメリットがあるとはいえない。

 また、実際に家庭に入ったとき、ワイヤレスの設定や機器追加の手順をどこまで簡略化できるのか。ユーザービリティを左右するポイントだけに、製品レベルの作り込みにも注目だ。まずは、2004年1月の「International CES」で、同社とパートナー企業各社のお手並みを拝見することにしよう。

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▼“802.11aではない”5GHz帯無線システム 〜ビクター
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関連リンク
▼米Magis Networks

[芹澤隆徳,ITmedia]



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