リビング+:ニュース 2003/10/28 23:59:00 更新


もうからないはずの「BBシネマ」で採算をあわす法

「今は実験的な試み」「将来へ向けた布石」……これが、平均的なコンテンツプロバイダの市場に対する見方だ。しかし、現状でもコンテンツビジネスは採算がとれると主張する事業者もいる。

 ブロードバンドコンテンツを配信するサービスは、“もうからない”というイメージが強い。

 記者はこれまで、複数のコンテンツサービスプロバイダを回ってきたが、多くの事業者は「今は実験的な試み」「将来へ向けた布石」といった感想を述べていた。「今はビジネスにならないが、ブロードバンドが普及し、市場が立ち上がってくれば、収入にもなるだろう」……。これが、平均的な事業者の意見といえる。しかし、これに反論を唱える企業がある。

 エッジは、新たにブロードバンドシネマの配信サービスに参入すると発表した。既報のとおり、BBTowerの配信インフラを利用し、オリジナルのWebシネマを制作、無料配信する。

 同社の堀江貴文社長は、現状でも事業の採算性に自信を見せている。この自信の理由を、聞いてみよう。

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エッジの堀江貴文社長

いきなりの“黒字化”

 まず堀江社長は、意外な数字を挙げる。同社は2003年7月から9月にかけて、livedoor STREAMLINEでサイコサスペンスシネマ「来訪者」を配信していた。これは、木内晶子や小野真弓が出演するという作品だったが、「たいした宣伝を行わなかったわりに、1日2万ストリームのアクセスがあった。3カ月で100万ストリームを超えた」。

 のみならず、この作品自体が事業としていきなり「黒字化している」(同)のだという。試みに行ったサービスとしては、はっきり成功といえる結果だっただろう。

 同社はこれをふまえ、第2弾、第3弾のコンテンツを制作することを決める。ブロードバンドコンテンツの企画、制作、配信、販売などを手がける、製作委員会を組織して、事業化する方式だ。前述の通り、コンテンツ配信サービスに参入したわけだ。

 堀江氏は、従来のコンテンツビジネスは「有料で昔のアニメ、ドラマなど、使い古されたものを配信するケースが多かった」(同)と話す。

 しかし、新事業はこれとは別の路線を指向する。「ネット時代にどういったコンテンツが必要か、という、当社なりの解釈」を示しているとした。

「プロダクトプレイスメント」を活用

 より具体的に見てみよう。エッジの提供するブロードバンドシネマは、ネット配信用に15分×12話を用意する。これを、オンライン上に定期的にアップデートしていく方式だ。各話はアーカイブされており、ユーザーはいつでも、一から見直すことができる。

 映像には、テレビドラマ同様CMスポットを入れる。また、画面の横にはバナー広告を表示させる。これによりクライアントは、配信期間中は広告効果が期待できる。

 また、ストーリーに広告を溶け込ませる、「プロダクトプレイスメント」の手法を用いる。

 たとえば、11月中旬から配信開始される「電話の恋人」というタイトルは、実はNTTドコモがスポンサーについたシネマだ。登場人物はFOMAを活用して、互いにコミュニケーションをとる。「FOMAのうまい使い方を、教えるというか、ユーザーに覚えていただく」(堀江氏)。

 また、12月中旬に配信開始される「スタジアムで会いましょう」は、ヤフーと協力して提供されるもの。登場人物はYahoo!JAPANで提供される各種のサービスを利用するほか、最後に恋人同士が出会う場所は、ご多分にもれず、Yahoo!BBスタジアムだ。

 同社は、基本的にこの広告で黒字化を狙う。堀江社長は、コンテンツの製作費は「ものにもよるが、2000万〜3000万円程度。従来のように、億単位のお金を使わず、リーズナブルなところまで下げる」と話している。この分の費用を、前述のスポット広告、およびプロダクトプレイスメント方式の広告で、埋めてしまいたい考えだ。

 同社の戦略には、続きがある。コンテンツは、ネット配信版のほかに、90分程度に編集した“劇場版”を用意する。これを、ミニシアターで単館公開することで、また追加の収入を得る。

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エッジではコンテンツを盛り上げる手段として、「ぴあ」で告知を行い、放送前の試写会イベントなども実施している(記事参照

 さらに、ビデオやDVDの販売、レンタルも行うほか、ノベライズなどの出版物の販売、および衛星放送や海外事業者を対象にした、コンテンツ販売も視野に入れる。2次利用、3次利用することで、“稼げるだけ稼ぐ”というスタンスだ。

 堀江氏は、クリスマスイブに向けて、スタッフロールに「この作品は○○に捧げます」という字幕を入れた“限定版DVD”を、1万円で販売するという企画もあると明かす。「先週の金曜から申込受付を始めたのだが、それほど宣伝も行っていないのに、既に100本の受注をもらっている」(堀江氏)。

新しい考え方ではないが……

 これらのことは、実は全て、それほど新しい考え方ではない。さきの広告手法にしても、同様の前例はいくつも存在するし、コンテンツを2次利用、3次利用する、いわゆる“ワンコンテンツ・マルチユース”の考え方も、ずいぶん前から有望視されていたことだ。はっきりいってしまえば、それほど画期的な試みではない。

 それでも、“初の取り組みで黒字化した”という事実は、同社の主張に一定の説得力を与えている。仮に、これから先同社の事業が軌道にのったとすれば、総合的なプロデュース力があった……ということになるのだろう。

 堀江氏は、現状の映像業界では「俳優があまっている」と話す。テレビに出て活躍するような人間は、ほんの一握りで「それこそ『時給何百円』のレベルで活動している人も多い」。

 こうした若手俳優、および若手監督にチャンスを与えることで、制作費を抑えながら、将来的に大化けする可能性を探るのだという。

 堀江氏はまた、コンテンツは当たり外れが激しい、と強調する。「ベンチャーを育てているようなもの。中にはうまくいくものもあるが、大失敗するものもある」。

 そうした中、事業を展開するには、いかにリスクを分散するかだと話す。ミニシアターでの単館上映や、DVD販売をできるだけ多く組み合わせることに、意味があるとした。

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関連リンク
▼livedoor STREAMLINE

[杉浦正武,ITmedia]



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