リビング+:ニュース 2003/10/28 23:59:00 更新


PSXはプロローグに過ぎない〜ソニー

ソニーは、デジタル家電とモバイル機器の分野にリソースを集中し、AVとITを“融合”させたモバイル機器や、CELLコンピューティングによる新しいデジタル家電を数年以内に投入する。既に「PSX」を発表している同社だが、これは「プロローグに過ぎない」ようだ。

 ソニーは10月28日、収益構造の改善と事業分野の集中を2本柱とする経営方針を発表した。人員の削減や拠点のスリム化を含む構造改革を進める一方、デジタル家電とモバイル機器の分野にリソースを集中し、AVとITを“融合”させたモバイル機器や、CELLコンピューティングによる新しいコンシューマーエレクトロニクス製品を投入する構えだ。

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 製品戦略のキーワードは“融合”。ソニーの出井伸之会長兼CEOが挙げた“融合”とは、ホームとモバイルの融合であり、ソニーとSCEの技術の融合であり、またモバイルエレクトロニクスにおけるAVとITの融合など多岐にわたった。AVとITの融合という点では、既に「PSX」を発表している同社だが、これは「プロローグに過ぎない」。

PSPにコンテンツを確保

 同日発表された役員人事により、11月から3分野のCOO(ホームネットワークカンパニー、ゲームビジネスグループ、ブロードバンドネットワークカンパニー担当)となる久夛良木健副社長は、三つの大きな戦略を掲げた。一つは「PS2のコアテクノロジをコンシューマー・エレクトロニクスと融合し、将来のブロードバンドサーバなどに転換すること」。これはPSXが製品化の第1弾となる。

 二つめは、CRTからフラットディスプレイへの転換。CRTの製造ラインを大幅に縮小する一方で、韓国のサムスン電子との合弁により、2004年第1四半期をメドに液晶パネルの製造会社を設立する(別記事を参照)。「より大型のフラットディスプレイに向け、安定的にパネルを調達するのが狙いだ」。

 最後はモバイル機器。“次世代ウォークマン”という触れ込みの「PSP」に対しては、ソニーグループの持つ映像資産のみならず、「幅広いパートナーシップ」によって多くのコンテンツを確保するという。UMDを使った“映像のモバイル視聴”を浸透させ、パッケージ市場そのものを活性化する構えだ。

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COOとなった久夛良木氏

CELLワールドとは?

 「最大のアプリケーションはゲームや映画などのエンターテインメント。将来、ブロードバンド上のインタラクティブな放送に進化するのは間違いないが、おびただしいコンテンツのなかで、いかに目的のものに辿り着き、楽しむのかが課題。技術開発は気が遠くなるほど大変だが、グループが一丸となってアーキテクチャの開発から手掛ける」(久夛良木氏)。その一環として、ソニーは半導体事業を統括する「セミコンダクタソリューションズネットワークカンパニー」を新設する。NCプレジデントに就任するのは、久夛良木氏だ。

 同氏は、デジタル家電の核となる“戦略半導体”を自社で調達することにより、ソニー製品の商品力を強化できるとしている。つまり、PCのパーツのように、水平分業によって大量生産された既成部品を使わず、必要な要件を満たす部材を自社で開発・生産する。部品の安定的な調達を可能にすると同時に、ソニー独自の機能を持った競争力のある製品を“お手頃”な価格で提供できるという。

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ソニーが考える近未来の家庭

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携帯コンシューマーエレクトロニクス製品。「PSP」や「Felica」の文字も見える

 直近の例でいえばPS2のチップや「WEGAエンジン」などが“戦略半導体”にあたるが、将来の戦略半導体としては、「CELL」と「メディアプロセッサ」の2つがある。CELLは、コンシューマー機器同士の分散コンピューティングを可能にするネットワークプロセッサ。SCE、東芝、IBMの3社が共同で開発を進めており、2005年から2006年にかけてテレビやホームサーバといったホームエンターテインメント機器に採用される見通しだという。メディアプロセッサは、これまであまり登場してこなかったが、「もう一つのデジタル家電の核になるもの」だという。

 では、CELLやメディアプロセッサがユーザーにもたらすメリットは何か。久夛良木氏が描く“CELLワールド”は、ホームサーバやテレビ、ゲーム機といったリビングルームのコアアプリケーションをすべてに対して「新しいパラダイムを確立する」というものだ。

 たとえば、「テレビでプロリーグをみながら、ゲームで同じような選手(をモデルにしたキャラクター?)と対戦を楽しめる」というように、機器同士のみならず、サービスやコンテンツとも連携したアプリケーションが楽しめる。さらに久夛良木氏は、「将来的にリアルとサイバーがオーバーラップした未来のエンターテイメントを目指す」としている。

 抽象的で分かりにくいが、確かにテレビとホームサーバが繋がれば、あるいはゲームとテレビによる分散コンピューティングが可能になれば、処理性能の向上だけではなく、さまざまアプリケーションが期待できる。ある記者が投げかけた「ネット家電はPCのサブセットに過ぎない。ならばPCをホームエンターテイメントの中心に据えればいいのではないか?」という問いに対し、「将来は、PCが家電のサブセットになる」と切り返した同氏だけに、CELLコンピューティングに対する期待も膨らむ。

喜んでモルモットに

 しかし、機器とコンテンツがあっても、市場やインフラがついてこなければ、CELLワールドは画に描いた餅になってしまう。また、これらの新しい製品が、PCやネットワークに疎い一般ユーザーの認知を得ることができるのか、という素朴な疑問も生じるだろう。いずれにせよ、その市場性を語るには、まだ情報が少なすぎる。

 1つだけはっきりしているのは、同社が“最強のコンシューマーブランドであり続ける”ために、戦略半導体といった挑戦的な道を選んだということだ。それは、久夛良木氏の言葉が象徴している。「ソニーは、“ソニーならでは”の戦略で新たな地平を切りひらく。われわれは、モルモット役を喜んで引き受けるだろう」。

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[芹澤隆徳,ITmedia]



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