地上デジタル放送
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パススルー(同一周波数) | パススルー(周波数変換) | トランスモジュレーション | |
周波数 | 変更なし | 変更あり | 変更あり |
変調方式 | 変更なし | 変更なし | 変更あり |
CAS | B-CAS | B-CAS | B-CAS |
端末 | 市販チューナー | 市販チューナー | 専用STB |
ただ、パススルーはいわば、CATVの設備を単なる共同視聴アンテナにしてしまうものだ。CATV会社側のHE(ヘッドエンド)設備投資は比較的安いが、それ以上に難視聴対策ということで視聴料を高く設定できない(利用者が負担しないケースも多い)。利用者もCATVユーザーという意識は希薄で、多チャンネル放送への移行なども期待しにくい。つまり、CATV局にとって“あまりおいしくない”ビジネスといえる。
一方、当然ながら放送局側は放送に変更をくわえられることを嫌い、CATV局に対してパススルーの採用を求めている。今のところは「2年後までにはパススルーを」(NHKの場合)というスタンスだ。J-COMでは、「トラモジとパススルーを並行して提供する場合、16チャンネルぶんの帯域が必要になってしまう。今のところは、猶予期間をもらっているという状況だ」と話している。
もう一つ、放送局側が良い顔をしない理由として、CATV局が地上デジタル放送を“売り物”にしているという点が挙げられるだろう。とくに放送エリアが極端に狭い在京CATV局では、トランスモジュレーションだけを採用し、それを武器にBS/CSデジタルを含む多チャンネル放送へ加入者を誘導する傾向が顕著だ。地上デジタル放送を機に一気にデジタル放送サービスを開始したJ-COMしかり、サービスを強化したイッツ・コミュニケーションしかり……。
実際、当初から放送エリアが広い大阪や名古屋のCATV会社は、難視聴地域のユーザーのために比較的早い段階でパススルーを開始するケースが多い(関連記事)。これには、「地上波が届くのだから、地上デジタル放送が自社サービス(多チャンネル放送)の競争力にはつながらない」という判断もあるだろう。逆に、東京の多くの地域では、CATV局の多チャンネルサービスに加入するしか、地上デジタル放送を視聴する方法がないわけで、一部ユーザーから「抱き合わせ販売」という声が上がっているのも仕方ないといえる。
とはいえ、状況に恵まれない東京のユーザーにとって、在京CATV局と各放送局の協議によってもたらされた“区域内エリア外再送”は貴重だ。だからこそ、各放送局は猶予期間を与え、監督省庁は黙認しているはず。その労力と投資を評価するユーザーなら、デジタル多チャンネル放送に加入するのも良い選択肢だ……などと、某CATVで地上デジタル放送のオープニングイベントを見ながら考えた。
もちろん、それには各CATV局が自社の多チャンネル放送ばかりを売り込むのではなく、難視聴エリアのデジタル対応も進めることが条件になるのだろう。
関連記事[芹澤隆徳,ITmedia]
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