リビング+:ニュース 2003/12/01 23:59:00 更新


地上波デジタル放送スタート 多チャンネル化や送出設備で悩む放送局

ついに地上波デジタル放送がスタート。だがSDTVの多チャンネル化や、莫大なコストが必要な送出設備の構築ではキー局の対応が分かれている。

 いよいよこの12月1日から地上波デジタル放送がスタートした。現段階ではサービスエリアも狭い、モバイル向け放送は特許問題が未解決のため開始の目処が立っていないなどいろいろと問題は山積みだが、標準画質(SDTV)の多チャンネル化や送出設備の構築などは在京キー局の中でも意見や対応が分かれている。

 果たして各局はどのような考え方で地上波デジタル放送に望もうとしているのか、11月の「InterBEE 2003」と同時開催された民放技術報告会でのパネルディスカッションからそれらの状況をご紹介したい。

全国ネットのSDTVは2チャンネルが限界


免許方針に基づくサービスイメージ(テレビ朝日・村瀬氏の資料より)

 地上波デジタル放送は当初各局ともハイビジョン(HDTV)×1チャンネル、もしくはSDTV×1チャンネルでの放送がメインとなるが、規格上はBSデジタル放送同様にSDTVを複数チャンネル多重して放送することが可能だ。

 しかしBSデジタル放送に比べ地上波デジタル放送は伝送可能なビットレートが低いことから、BSデジタル同様の3チャンネル多重を行うのか、それとも地上デジタルではそれを2チャンネルにとどめるのか、といった点について各局で意見が分かれている。

 まずBSデジタル同様の3チャンネル多重を実現する計画があるのはテレビ朝日・テレビ東京の2局。テレビ朝日の村瀬康治技師長は「(六本木ヒルズの)新社屋はSDTVを3チャンネル流せるように設備を作った」と述べた。


テレビ東京のサービス形態の例

 テレビ東京の太田勝義・技術開発室長も「まだトライアルを重ねて固めていかなければいかない部分はあるが、とりあえず3サービス可能なものを作った」と述べ、両局とも3チャンネル同時放送に対応可能な設備を構築しているという。


日本テレビの地上波デジタル放送の編成方針

 一方2チャンネルで十分という考え方を示したのが日本テレビ、フジテレビの2局。日本テレビの吉澤康雄・技術統括局技術開発部長は「局内設備は今のところSDTV 2チャンネル分で用意している(ただし設備そのものは余裕があるので3チャンネル目の増設は可能)」、フジテレビの大森静雄・技術局設備対策室長も「今のところ社内では2つかなぁ、と言われている」とそれぞれ述べ、3チャンネル多重は地上波デジタル放送では使わない可能性が高いことを示した。

 ただこのあたりはEPGとの関係があり、一筋縄ではいかない部分があるようだ。TBSの本間康文・技術局技術管理センター計画推進部長は「SDTVのマルチチャンネルは当分やる予定はないが、サービス数を少なくするとチューナーによってはEPGの表示領域が減るという問題があるため、EPGについてBSデジタルと同じ見え方にするために(061〜063chの)3サービスのイベントを共有する形で放送を開始する」とした。日本テレビの吉澤氏も同様の問題からEPG上は2chのサービス共有として電波を出すことを明らかにしている。

 このようにSDTVの多チャンネル放送については意見が割れた各社だが、系列局を含めた全国ネット展開となると、チャンネル数の増加はそのまま地方局における放送設備構築の予算上昇を招くという理由から、実際には2チャンネルが限界という見解が支配的だ。

 先程3チャンネル派としてご紹介したテレビ朝日・村瀬氏も「地方局については2008年の段階で判断するということにしているが、今のところはやっても2チャンネル(が限界)かなぁ、という気はしている」と述べており、3チャンネル派の局でも3チャンネル目はローカル放送での利用に留まるということになりそうだ。

既存設備の更新と絡んで送出設備構築に悩む各社

 またテレビ局にとって頭が痛いのが、地上波デジタル放送の開始に伴う新たな設備の構築。既存のアナログ放送の設備を生かしつつ、新たに地上波デジタル放送用の設備を増やさなければいけないわけで、設備投資の額もばかにならない。

 この点についても最初からアナログ・デジタルを統合した本格設備を構築する局、当初は暫定設備で乗り切る局と大きく意見が2つに分かれている。


テレビ東京は本線・予備系の2系統に加え、テスト用にもう1系統のシステムを持つ

 当初から統合型の本格的な設備構築に踏み切ったのは日本テレビ・テレビ朝日・テレビ東京の3局。このうち日本テレビは汐留、テレビ朝日は六本木ヒルズへの移転が絡んでいるので、全面的な設備更新もある意味当然の措置と言える。

 またテレビ東京については「元々既存のアナログの送出設備の更新時期が過ぎていたものを、無理やり延命させて使っていた」(太田氏)という事情があったのだそうで、今回の地上波デジタル放送開始を機に一気に切り替えることにしたのだという(ただし一部アナログ系の設備も残ってはいるそうだ)。

 一方暫定設備で当初放送を開始するのがTBSとフジテレビ。TBSは「設備構築を段階的に行うことで、次回の設備更新の時期を分散させる狙いがある」というのだが、そのために当初はデジタル放送のマスターは本線の1系統のみで放送を開始し、トラブル時のバックアップはなんと現在のアナログ放送をアップコンバートして対応するのだという。


TBSは当初、このようにバックアップをアナログ系でカバーする

 またデータ放送についても当初はBSデジタル放送の設備を流用するというから、TBSの本間氏曰く「うちはまるで竹槍」という表現もあながち大げさではない。ただ本格的な設備の稼動が2004年秋に予定されているということなので、それ以降は前の3局と同等の設備となる見込みだ。

 フジテレビは「1997年のお台場移転時に構築した設備がちょうど枯れてきたところで、まだ更新時期を迎えていない」(フジテレビ・大森氏)ということで、当面は既存のアナログマスター設備にアドオンする形で設備を構築するとのこと。

 データ放送については今後段階的に設備を構築していくとのことだが、アナログ・デジタルの統合設備については「まだいつ頃移行するかは決めていない」(大森氏)ということで、他局と異なり我が道を行く路線が見て取れる。

 ただとりあえずキー局は設備構築が終了したわけで、今後問題になるのは地方局の設備構築。地方局はキー局に比べると予算が圧倒的に少ないわけで、この点は各局とも頭を悩ませているところ。

 フジテレビの大森氏は「キー局は(地方局向けの)小さいシステムへの理解度が低く、あまり当てにしてはいけない」と述べた上で、「各局が独自にシステムを作ると導入コストやその後の管理が大変になってしまうので、地方局は極力標準化を考えていくべき」とアドバイスを送っていた。

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▼大丈夫か、デジタル放送

関連リンク
▼在京放送局共同の地上デジタル放送サイト
▼総務省「新しい楽しい地上デジタルテレビ放送−パーフェクトガイド」

[佐藤晃洋,ITmedia]



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