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2003/12/02 22:40:00 更新 |
“インターネット電話”の復権をねらうセレコム
「IP電話」といえば、固定電話にVoIPアダプタを組み合わせ、事業者のIP網を経由して通話するものとイメージが固まりつつある。しかし、より気軽に利用できる「インターネット電話」を推す企業もある。
昨年あたりから、「IP電話」といえば固定電話にVoIPアダプタを組み合わせ、事業者のIP網を経由して通話するもの、とのイメージが固まりつつある。背景には、Yahoo!BBで提供されている「BB Phone」が多くのユーザーを獲得したことなどがあるだろう。しかし、より気軽に利用できる「インターネット電話」を推す企業もある。
セレコムは12月1日から、インターネット電話サービス「VPHONE」を開始した。初期費用は950円で、月額基本料が500円。通話料は、国内7.5円/3分、対携帯電話が20円/1分など。
PCにソフトウェアをダウンロードし、別途ヘッドセットなどを用意して通話する形式。USB接続の専用端末も提供する予定で、価格は4500円となる。
音声コーデックには、G.723.1を採用。音声符号化の圧縮方式として「μ-law」を用いるもので、64Kbps程度の帯域があれば通話できる。
アプリケーション自体は、H.323をベースに開発されたもの。H.323と異なる点は、ローカルIPアドレスしか持たないユーザーでもサービスを利用できる点だ。これには、以下のような理由がある。
そもそもIPパケットは、ヘッダー部とデータ部でそれぞれアドレスを持っている。仮にプライベートアドレスしか持たない場合、通常のH.323対応サービスでは、ヘッダー部のアドレスはグローバルアドレスに書き換えられるが、データ部はローカルアドレスのまま。このため、外部との通信を行えない。
一方VPHONEでは、同社のプロキシサーバがヘッダー部、データ部、ともにアドレスをグローバルIPアドレスに書き換える。これにより、同社のゲートキーパーと通信を行えるわけだ。
「インターネット電話」のメリット・デメリット
事業者のIP網でなく、インターネットを利用することで生じるメリット、デメリットを考えてみよう。
まず、インターネット電話であることのメリットは何だろうか。セレコムはこれを、「ISPフリー」に求める。
インターネット電話は当然ながら、どのISPに加入しているユーザー同士でも利用可能。国内/海外の区別も考える必要がない。「たとえば海外に出張して、ちょっと立ち寄ったホットスポットから電話をかけることもできる」(同社)。
ノートPCにソフトウェアだけインストールしておいて、利用したい時期にだけ契約してサービスを利用することもできる。このように、気軽に使える点をアピールしたいという。
デメリットとしてすぐ浮かぶのは、「帯域の保証ができないこと」。インターネットでは、どこかに細い帯域の回線があった場合、そこがボトルネックになってしまう可能性がある。これは、音声品質を保証できない、ということにもつながる。
実際、総務省はインターネット電話サービスに対し、050番号の割り当てを行っていない(記事参照)。理由は、まさにサービス品質を保証できない点にある。最低でもエンドトゥエンド遅延が400ミリ秒より短く、呼損率が0.15以下の「クラスC」の基準を満たさなければ、番号付与は認められない。セレコムとしても、050番号を利用することはできない。
ただしVPHONEでは、ユーザーは「050〜」から始まる番号を利用する。実はこれは、将来的に050番号取得を視野に入れてのこと。「ユーザーには、事業者コードを抜いた番号を利用してもらっている。仮に050番号が割り当てられれば、コードを追加した新番号に移行してもらう考えだ」(同社)。
セレコム自身は、インターネット電話であることがそれほど品質に問題をもたらすとは考えていないようす。ブロードバンドの普及にともない、インターネットでも十分な通信環境が実現できると見ているようだ。
同社は今後、ユーザーに利用してもらいながら実績を重ねたい考え。多くの事例の中で、最悪のケースでもクラスC以上の環境を実現できていることを示すことができれば、050番号も取得できるのではとした。
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セレコム
[杉浦正武,ITmedia]