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2003/12/03 16:28:00 更新 |
オンラインゲーム業界の現状と将来は〜経産省とベンチャーフォーラムで研究会
経済産業省と首都圏情報ベンチャーフォーラムは、第3回のオンラインゲーム研究会を開催した。盛大ネットワーク、コーエー、NTT東日本の3社による各社オンラインゲーム事業の講演のほか、パネルディスカッションでは、「投資対象としてのオンラインゲーム」について議論が行われた。
経済産業省と首都圏情報ベンチャーフォーラムは、第3回のオンラインゲーム研究会を開催した。盛大ネットワーク、コーエー、NTT東日本の3社による各社オンラインゲーム事業の講演のほか、パネルディスカッションでは、「投資対象としてのオンラインゲーム」について議論が行われた。
日本のヒットコンテンツは中国でもヒットする可能性高いと語る黄氏
中国最大のパブリッシャー、盛大ネットワークの日本事務所代表 黄哲氏の講演では、中国ゲーム市場の現状や、来年1月に北京で開催されるゲーム展示会「ChinaJoy」の紹介などがなされた。
家庭用ゲーム機が普及していない中国では、ゲームといえばPCでやるのが一般的。また、海賊版が96%にのぼるという深刻な状況のため、事業として展開するにはPCオンラインゲームという形にならざるを得ないという。中国では、オンラインゲームの料金決済をタイトルごとのプリペイドカード方式でおこなわれており、パブリッシャーの重要な役割の一つが、このプリペイドカードの販売事業となっている。
黄氏プレゼンテーションより、中国におけるパブリッシャーの位置づけ。プロバイダとしてソフトウェアを配信し、課金はプリペイドカード販売によるもの。このほかユーザーサポートや広告もおこなうのは日本や欧米のパブリッシャーと同様
横ばいまたは縮小傾向にあるゲーム業界で、年ごとに伸びるジャンルはオンラインゲーム以外にないと語る松原氏
信長の野望Onlineのプロデューサーであるコーエーの松原健二氏は、オンラインゲームビジネスの現状と将来について講演を行った。
松原氏は、人口やブロードバンド利用者数に比して、日本はアジア各国よりもオンラインゲーム利用者が少ないと指摘。これについて松原氏は、家庭用ゲーム機が非常に普及しているため、家庭用ゲーム機からPCにスイッチしにくい点をあげた。また、家庭内でパソコンの置いてある場所からテレビまでが遠いため、家庭用ゲーム機でのオンラインゲームもいまひとつ普及していない。ただ、(PlayStation3などと噂される)2005年登場予定の次世代ゲーム機では、オンラインゲーム機能が標準で搭載されるため、日本メーカーも本格的にオンラインゲームの開発に乗り出すだろうと述べた。
また、ブロードバンド・常時接続におけるオンラインゲームは、他の人とコミュニケーションをとるために遊ぶという、非常に特徴的なアプリケーションであり、今後はさまざまな分野で広がっていくだろうと語った。
ブロードバンドビジネスではNTTはアライアンスを重視する、と語る國井氏
NTT東日本の國井昭男氏は、「Game on FLETS」など電話事業者であるNTTがなぜオンラインゲームという分野に関心を持っているのかを紹介した。
ブロードバンドでは、従来の固定電話のような「回線を引いたので後は好きに話してください」というビジネスにはならないとの認識があるということで、オンラインゲームをブロードバンドインフラの上で提供されるアプリケーションのひとつ、として推進したいという。
現在フレッツ加入者向けに提供している「Game on FLETS」は、韓国ゲーム産業開発院と提携し、ゲームメーカーに対して、数ヶ月間無料で回線やサーバを提供している。年間10タイトル程度を提供する予定で、Game on FLETSでβテストをおこなったゲームのうち、うまく結果が出たものについてはそれぞれ商用化してもらうという。そのまま抱え込むことはなく、NTT東日本としては、フレッツサービス全体としての魅力を高める(フレッツの「売り」にする)ためのものとの位置づけだ。
パネルディスカッションは、「オンラインゲームに対するファイナンスの現状と問題点」と題して、ジャパンデジタルコンテンツの藤井雅俊氏、野村リサーチ・アンド・アドバイザリーの矢田真理氏、コラボの川口洋司氏という顔ぶれで行われた。
投資案件としてのオンラインゲームについて藤井氏は、オンラインゲームに限らずコンテンツ全体について「著作権の信託化」が進むとし、ゲームへの投資は活性化されるとの見通しを示した。ただ、現在はゲームについての業界基準値がないため、投資を回収できるかどうかの見極めが非常に難しいとも指摘、今後はトラックレコード(製作メンバーがこれまでどんなものを作ってきた、やってきた、などの実績)の蓄積などが必要になってくるだろうと述べた。
これについては矢田氏も、ベンチャーキャピタル業務のなかでトラックレコードの必要性を感じていると述べ、「過去にこれだけクチコミでユーザを集めた、だとか、そういうのがあるとやりやすい」と語った。
現在のところ、オンラインゲーム開発への投資は、任意組合(いわゆる製作委員会方式)か匿名組合による投資以外では、製作者への直接出資とならざるをえないということだが、著作権の信託化など投資の枠組み整備によって資金が集まりやすくなれば、オンラインゲーム業界が一気に活性化する可能性は高いだろう。
藤井氏プレゼンテーションより、投資する側と投資を受ける側について。オンラインゲームの場合は回収フェイズでのリバイス(改訂)開発作業が重要
このオンラインゲーム研究会は、首都圏情報ベンチャーフォーラムと経済産業省 関東経済産業局 情報政策課が開催した。
関連リンク
経済産業省
首都圏情報ベンチャーフォーラム
関東経済産業局
[記事提供:RBBTODAY]