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2003/12/23 23:59:00 更新 |
レビュー:パイオニア「DVR-710H-S」
“残す”ことに注力したパイオニアのフラグシップ機
パイオニアの「DVR-710H-S」は、9月発表と比較的登場が早く、進化の激しいハイブリッドレコーダー市場にあっては、年末商戦前に新モデルをリリースした他社に比べて機能面で不利かもしれない。しかし、市場では値頃感も出てきており、その評価は気になるところだが?
パイオニアの「DVR-710H-S」は、9月発表と比較的登場が早く、進化の激しいハイブリッドレコーダー市場にあっては、年末商戦前に新モデルをリリースした他社に比べて機能面で不利かもしれない。しかし、市場では値頃感も出てきており、その評価は気になるところだが?
アウトライン
薄型のきょう体を採用したパイオニア「DVR-710H-S」
パイオニアのハイブリッドレコーダーは、2002年に初めて4倍速DVD-RWドライブを搭載し、ハードディスクからの高速ダビングで人気を博した。多くのメーカーが、DVD-RAM/Rドライブを採用して2倍速止まりだったこともあり、常にトップクラスの売り上げを誇ったことは記憶に新しい。
現行機種の「DVR-710H-S」も同じ4倍速ドライブを採用するが、単純なダビング速度に関しては他社がDVD-RWへの4倍速書き込みが可能なDVD-Multiドライブに進化したため、アドバンテージはなくなっている。しかし、レート変換を行わない高速ダビング中のハードディスク録画・再生をサポートしているのは、今回取り上げるモデルの中でも本機と東芝の「RD-X4」のみだ。
また、他社に比べ薄型のきょう体は、多機能なハイブリッドレコーダーであることを意識させない。DVDプレーヤーなみにスッキリとしたデザインは、なかなか魅力的だ。
また12bit/216MHzの映像DAC搭載や「2-3プルダウン方式ピュアシネマ・プログレッシブスキャン回路」と名付けられた、映画再生を強く意識したプログレッシブ回路、それに複数のカスタム設定を保存可能な画質パラメータ設定など、DVDプレーヤーとしての機能にも優れている点は評価してもいいだろう。地上波の画質は、多少コントラストが強めな印象だが、最高画質モード(FINE)での画質は良好。映像出力回路のアドバンテージもある。
旧モデルで最大の弱点だった編集機能は、チャプター設定後にチャプター単位でカット編集が可能になり、大幅に改善されたといえる。ただし、EPGは相変わらず未搭載。Gコード入力でも十分という声もあるだろうが、もはや主流はEPG搭載機へとシフトしている。次機種に向けての最大の課題といえるだろう。
チャプター編集画面
DVR-710H-Sを選択する理由、その1
軽快な操作性
本機の最大の長所は、やはり快適な操作感だろう。電源オンからの立ち上がりの速さや、チャプター設定時の操作感、メニュー選択時のレスポンス、サムネイル付きでも遅さを感じない録画コンテントの管理機能などだ。メニューやライブラリ呼び出し時、画面が表示するまでの時間は遅いが、一度メニューや機能を呼び出してしまえば、あとは遅さを感じることはない。
ライブラリ呼び出し。画面が表示されるまでの時間は遅いが、そのあとは快適
またレート変換を伴わない高速ダビング時、ハードディスク内のコンテント再生、ハードディスクへの録画を、それぞれ並行して行えるのはうれしい。東芝の「RD-XS41」や「RD-X4」も同様の機能を持っているため、本機だけというわけではないが、予約録画の時間を気にせずにダビングを始められる点はうれしい。
HDDからDVDへのダビング画面
ダビング時のモード設定。ダビングする録画ファイルとDVDメディアの残量を比べて調整できる
ただしGUI操作の道筋は、多少一本調子で柔軟性に欠けるきらいもある。たとえば画面上では左右の位置関係にある要素を、左右キーで選べない(決定ボタンや戻るボタンで行き来する場面が多い)などの点が気になった。しかし、一度操作体系を頭に入れてしまえば、「ディスクナビ」を起点にして、さまざまな操作を行える本機のスタイルはシンプルでわかりやすい。そのディスクナビも、サムネイルが大きくて見やすく、しかも動画サムネイルになっているため内容を把握しやすいといった長所を持っている。
予約録画もEPGにこそ対応しないが、Gコード入力に加えて、タイムテーブルで時間範囲を指定する「かんたん予約」を実装するなどなかなかのものだ。
かんたん予約。予約したい時間帯に矢印を合わせるだけ
DVR-710H-Sを選択する理由、その2
DVDプレーヤーとして高性能
ハイブリッドレコーダーをDVDプレーヤーとしても使う場合、やはり気になるのは再生専用機との“差”ではないだろうか。その点、本機は再生専用機なみの画質や使い勝手を実現しようとしている印象だ。前述したように、ハイエンドに近い映像DACを搭載しており、映像信号系処理チップを1つにまとめたことで、DVD再生時のノイズ感が少なくなっている。映像出力処理のパラメータが細かく設定可能で、それをメモリしておいて後から選択するといったこともできる。
音質的には、多少低音がブーミーな(誇張され、ぼやけたような)印象を受けたが基本的な素性は良い。SRSサラウンドを搭載し、ドルビーデジタルサラウンドの音声トラックをバーチャルサラウンドで楽しむことが可能である。
考慮すべき点、DVR-710H-Sの場合
高画質な映像出力回路、GRT装備の地上波チューナーなど、画質面にこだわった作りの本機は、確かにDVD再生やハードディスクに録画された映像を美しく見たいという欲求は満たしてくれる。しかし、贅沢な映像回路を奢ったDVD再生時の画質の良さはともかくとして、HDDやDVDに記録するMPEG2の画質といいう意味では、「スゴ録」の「HQ+」モードに代表されるように、本機の画質が他社を大きく上回っていた時代は過ぎた。昨年までほど、MPEG2の画質に大きな差はない。
一方、上位機種でありながらEPG非搭載な点は、EPG機が増えたこの年末、かなり厳しいと言わざるを得ない。単純な録画しやすさだけでなく、HDDライブラリへのタイトル名自動付与、野球延長対応、自動録画機能など、HDDレコーダーならではの使いやすい機能の中には、EPGを起点にしたものも多いからだ。
本機では分割後のチャプター単位で不要部分をカットする機能が加わり、やっと編集機能で他社の上位機種に近づくことができた。言い換えれば“残す”ための機能が充実してきたわけで、それだけにEPGの非搭載は残念でもある。
また不要部分のカットを行うと、実際にハードディスク上から消えてしまうため、作業に際してかなり気を遣う面もある。プレイリスト編集で必要部分だけを繋いでおき、それをDVDにダビング、といった使い方は行えないわけだ(DVD-RW上でのプレイリスト編集は行える)。
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パイオニア
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[本田雅一,ITmedia]