リビング+:ニュース 2003/12/24 16:28:00 更新

Digital Revolution CATV EXPO
STBの双方向対応に一抹の不安

地デジ特需に沸く? CATV業界だが、先週都内で開催された「Digital Revolution CATV EXPO」では、地上デジタル放送対応のセットトップボックス(STB)が多数展示されたほか、海外での技術開発動向に関するセミナーなども開かれた。しかし一方では、双方向STBの供給に不安を覗かせる状況も見え隠れした。

 この12月1日より、放送を開始したばかりの地上デジタル放送。サービスエリアがあまりにも狭い直接受信についてはさておき、とりあえずCATV経由の受信の立ち上がりは予想されていたよりかなり順調なようだ。筆者も自宅で加入しているJ-COMに地デジ対応サービスへのアップグレードを申し込んだところ、折り返し電話してきた工事担当者に「既に関東圏だけで数千件単位のオーダーがあり、チューナーの手配が間に合わない。工事は、早くても1月中旬以降になります」と言われてしまったほど。今年の年末は地デジで「デジタル紅白歌合戦」を見ながら年を越そうという筆者のもくろみは、これであっけなく砕け散ってしまった。

 そんなわけで、今や「地デジ特需」に沸いている状態といってもいいCATV業界において、大事な意味を持つ展示会が先週開かれた。それが、今回ご紹介する「Digital Revolution CATV EXPO」だ。CATVのデジタル化に向けた機器の標準化を行う団体である日本ケーブルラボ(JCL)が主催するこのイベントには、各メーカーが開発した地デジ対応のCATV用STBが勢ぞろいするとあって、早くから関係者の注目を集めていたが、実際のところはどうだったのだろうか。

JCL仕様対応型の双方向STBの供給に遅れ

 会場では、メーカー各社が地上デジタル放送対応のSTBを実際に動態展示していたが、注目されていた双方向通信対応型のSTBに関しては、やや期待はずれの結果に終わった。

 もともと、JCLが定める双方向サービス向けの仕様には「JCL SPEC-009」と「JCL SPEC-010」の2種類がある。どちらもSTBの中にRFモデムによる通信機能が組み込まれているという点で基本的な仕様は共通なのだが、このうちSPEC-009は仕様の中にVoDサービスなどへの対応が盛り込まれており、これらの機能がJ-COMの強い要望で入れられたことから、業界では通称「J-COM仕様」と呼ばれている。

 今年の夏に行われた「ケーブルテレビ2003」の時点では、このSPEC-009も含めた全ての仕様が今回の展示会までに決まるという話だった。また、先日J-COMが開催した地デジ対応サービスに関する説明会では、来年春から実際にSTBを利用したPPVやVoDなどの双方向サービスを始めるとアナウンスしていることから、サービス提供開始までのタイムスケジュールを逆算すると、今回の展示会で実際にSPEC-009対応型のSTBが登場してくるものと見られていた。

 しかし、実際に会場に展示されたSTBのうち、SPEC-009への対応をうたったSTBはなんとゼロ。それ以前に、そもそもSPEC-009の仕様策定に遅れが生じており、まだ暫定版のままだという。この点だけを見ると、果たしてJ-COMが本当に来年春から双方向サービスを予定通り開始できるのかが微妙になってきたともいえる。またイッツコムなどが採用すると見られているSPEC-010対応STBも、既にケーブルテレビ2003などでたびたび登場しているパイオニアの「BD-V2TC」以外の出展がないという状況。今後、順次開始されると見られるCATV各社の双方向サービスに不安を残す結果となった。

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おなじみパイオニアの「BD-V2TC

 一応、ほかにも双方向対応のSTBとして、上り信号の伝送用としてRFモデム(ケーブルモデム)の代わりにイーサネット端子を装備した松下の「TZ-DCH300」や、RFモデムを内蔵して独自仕様のVoD機能を実装しているとうたう米Scientific Atrantaの「EXPLORER 8200 HDJ」、同じくRFモデム内蔵型であるシンクレイヤの「ASTB-2200」などが展示されていたが、今回出展していたSTBメーカーの中には「SPEC-009/010対応STBの開発予定はない」(シンクレイヤ)とはっきり言い切るメーカーもあり、少なくとも双方向化に関しては業界の動きがJCLの思惑とは異なる方向に向かう可能性が出てきた。

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マスプロの「DST22M」。JCL SPEC-001〜007に対応、RFモデムも内蔵

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Scientific Atlantaの「Explorer 8200 HDJ」

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松下のなぜか型番が隠されていたSTB。順当に行けば「TZ-DCH500」の可能性が高そうだが……?

UWBの利用? さらに高度化の進むCATVインターネット

 ところで双方向サービスといえば、STBベースのTV向けサービスもさることながら、やはり忘れてはならないのがCATVインターネット。今回の展示会では特に展示はなかったものの、併催されたセミナーの1つである「ラボ米国調査概要報告」の中で最新の開発動向の報告がなされていたのでそちらをご紹介したい。

 まずは、米Pulse〜Linkが開発している「UWB over Cable」。UWBというと世間一般では無線分野で使われる技術というイメージが強く、実際同社もこの1年ほどは無線UWBの方に開発の力を入れていたというのだが、そちらの技術開発のほうは目処がついたということで、今後は有線UWBの方に力を入れていく意向のようだ。

 その技術だが、基本的には現在のCATVで下りの映像伝送に使用されている帯域全体(会場で示された図では50〜860MHzと説明されていたが、日本で使用する場合は多少帯域の調整が必要になるものと思われる)に対してUWBの信号をかぶせ、1回の伝送で4bitの情報を送信するというもの。現在開発中のシステムでは信号の送出クロックが平均で294.1MHzとなっていることから、下りの伝送速度は294.1MHz×4bit=約1.17Gbpsになるという。ただし、これはあくまで幹線レベルでの帯域幅であり、ユーザーレベルでの伝送速度はこれを利用するユーザー数で割った数字となる。

 ただ、報告に立ったマイテレビの小林氏は、「確かに下り速度が出ることはわかったのだが、上りのシステムの詳細がよくわからなかった」との感想を漏らしており、実際にサービスで利用するには今後そのあたりの問題をどう解決していくかが課題になると見られる。とはいえ、少なくともこの技術はかなりのポテンシャルを秘めている。この会社の動向には今後注意を払いたい。

 もう1つ、米Advent Networksの「Ultraband TDM」もご紹介しておきたい。こちらは、下りに6MHz幅の帯域を256QAM変調した40Mbps、上りは同じく3.2MHz幅を16QAM変調した8Mbpsの帯域の信号を単純に時分割多重することで、1ユーザーあたり下り5Mbps/上り0.5Mbpsの帯域保証型サービスを提供できるというシステム。ユーザーのニーズによっては、上り・下りのタイムスロットをそれぞれ複数多重することで、ユーザーが利用できる帯域を高速化することも可能だという。

 小林氏によれば、こちらは既にテキサス州オースティンで学生向けアパートなどを対象にした試験サービスがスタートしているほか、この後ニューヨークやセントルイス、タンパベイなどでも試験サービスが予定されているということで「完成度はかなり高いと思う」とのこと。同社では「一般家庭向けのベストエフォート型はDOCSISがあるし、1.5Mbps以上の帯域保証型サービスは通信事業者の領域だが、その間を埋めるソリューションとしてこのサービスを提供したい」との意向を示しているという。

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関連リンク
▼日本ケーブルラボ
▼J-COM

[佐藤晃洋,ITmedia]



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