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2003/12/24 23:59:00 更新 |
PCを見るほどに視力回復? 謎のソフトの実態は……
“視力低下”に悩むIT戦士にとって、少々気になるものがある。ソースネクストが11月に発売した、“PC画面を見るだけで、目がよくなる”ソフト、その名も「目がホリデー」だ。その実態に迫ってみた……
いきなり私事で恐縮だが、この仕事を始めてから目が悪くなった。
毎日、取材を終えるとPCに向かい、原稿を書く毎日。長い時は、1日10時間以上もPC画面をにらむ……ということも珍しくない。当然ながら視力は低下し、かつては1.0オーバーを誇った左右の視力は、健康診断で「0.5」をマークする事態に。「それでも十分」と怒られるかもしれないが、本人としては苦悩が深い。
そんな記者のもとに、ある通知がきた。「運転免許証更新連絡書」。もうそんな時期か――、と思うとともに、ある考えが記者の心を支配した。「ひょっとして、へたすると免許の条件に『眼鏡等』とか書かれちゃうんじゃないの?」。
これはまずい。別に、メガネが悪いとはいわないが、視力低下の“証”をつきつけられるのは、ぞっとしない。どうにかして視力を回復させられないものか? その時、目についたのが“PC画面を見るだけで、目がよくなるソフト”こと「目がホリデー」(ソースネクスト、1980円)だった。なんでも、眼精疲労や視力低下、肩こりなどに効果がある、IT戦士必携のツールだという。ものは試し、ということで、製品を取り寄せてみることにした。
毛様体を鍛えよう
目がホリデーは、PC画面上に「3Dの風景写真」を表示するソフトだ。よく、2枚の絵を並べて「目の角度を調節すると立体的に見えます」という本(一般には“マジカル・アイ”などと呼ばれているようだ)が発売されているが、原理的には同じこと。左右の視差に応じて立体視できるような、微妙に異なる2枚の写真を画面上に提示する。
(C) SOURCENEXT CORPORATION All Rights Reserved.
ユーザーは、これを立体視しようと、“寄り目”にしたり、“遠くをぼんやり見る目”にしたりする。そうしているうちに、あるポイントで写真が立体的に見えるわけだ。マジカル・アイが見える人なら、数分も試行錯誤すれば見えるようになる。
では、これがなぜ視力回復に役立つのか。ソースネクストの説明によると、「毛様体の柔軟性回復につながるから」という。
モーヨータイ? とお困りの読者もいるかと思うので、ここで高校の生物の授業の復習をしてみよう。人間の眼球にある視細胞は、外からの光を水晶体(レンズ)経由で知覚する。このレンズの厚さを調節することで、近くの場所に焦点を合わせたり、遠くに焦点をあわせたりできる。そして、そのレンズの厚み調節を行うのが、くだんの毛様体だ。
人間の眼球と、毛様体の働き(目がホリデーのページより抜粋)
上図にあるとおり、毛様体が緊張すれば、レンズは厚みを増し、弛緩すればレンズが薄くなる。しかし、長時間PC作業などをしていて、近距離ばかり見ていると「毛様体が筋肉疲労を起こしてくる」(ソースネクスト)。この状態をほぐすべく、行われる作業がさきほどの立体視なのだという。
毛様体って、そんなに鍛えられるんですか
ここで、疑問に思うのは「毛様体が、そんな行為で簡単に鍛えられるのか?」ということだろう。
同ソフトは、栗田昌裕医学博士の理論を根拠として、同氏監修のもとで開発されている。栗田氏に、毛様体について問い合わせてみた。
「たとえば、高齢者は水晶体の屈折力の変化、視細胞数の減少、毛様体筋の収縮力低下などにより、近くのものが見えなくなる。これが老眼。しかし、3D訓練を行うと収縮力が改善する。若年者の場合は、毛様体が“過緊張”に偏っているので、3D訓練で柔軟性が高まるとやはり視力が改善する」(同氏)。
視力回復には即時効果があり、たとえば老眼の人も「その場で、近くが見やすくなる」(同氏)のだという。
もう一つ気になるのは、立体視の方法。実は立体視には、より近距離に3D画像を結ぶ「クロス法」と、遠距離に像を結ぶ「パラレル法」の2種類が存在する。しかし、栗田氏によれば「実際に、多くの人たちに試したところ、どちらの方法でも視力改善効果はある」とのことだった。
継続は力なり
ソースネクストの開発陣は、目がホリデーを「仕事の一服として、コーヒー一杯を飲む間に利用するイメージ」の製品だと話す。
左から、プロデュースグループベスト100タイトルチームの大野智美チーフ、同グループホームアンドユーティリティチームの吉村圭司氏、マーケティンググループプロモーションチームの廣瀬真美氏
立体視の画像には、“癒し”を感じられるような風景画を選定し、またアプリケーション実行中に音楽も流れるようにした。これにより、仕事の息抜きとして、目の体操を含めた総合的なリラクゼーションを提供するソフトだと考えているようだ。
ホームアンドユーティリティチームの吉村圭司氏は、同ソフトでこだわったのは「タイマー機能」だと話す。目がホリデーのタイマーを利用すると、「指定の時間にアプリケーションを実行させる」といった指定を行える。
これにより、PCに向かって仕事に熱中していても、ポップアップで「目がホリデーの立体視をするか否か」を聞いてくるようになる。設定では、1つの画像につき10秒で、これを何枚かセットにして連続提示する……といった立体視メニューを作ることができる。
ベスト100タイトルチームの大野智美チーフは、いくら同ソフトで、毛様体をリラックスさせても「その後に酷使しては、元の木阿弥」だと話す。「毎日の歯磨きのようなもの。目を悪くしないような習慣をつけるという意識が大切」。タイマーを利用して、毛様体が過緊張に陥らないよう、継続して気をつけてほしいとした。
視力を回復させる方法には、さまざまなものがある。中にはレーザーによる外科手術などもあり、一定の効果が確認されているようだ。
しかし、ソースネクストの開発陣が声をそろえるのは、「そういう手術は、怖いですよね」(笑)ということ。栗田博士も、「外科手術はリスクが伴うほか、けた違いに高額の医療費がかかる」と指摘する。
目がホリデーは、1980円と安価な製品。気軽に、“目にやさしい”ことをして、PC画面上で継続的に目をいたわる――。そんなとらえ方で購入するのが、正解といえそうだ。
ちなみに、記者はこのソフトを2週間利用してから、免許更新に行った。幸い、結果的に「眼鏡等」の条件はつかずにすみました。
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「目がホリデー」のページ
[杉浦正武,ITmedia]