突然だが、映画選びのポイントは何だろう? 話題作であったり、お気に入りのスターが出演していたり……。中には予告編に惹かれて、という方も多いのではないだろうか。
筆者は昨年、この「ハッピー フィート」の予告編を見て心を鷲づかみにされたのである。そう、ペンギンたちがフランク・シナトラの「マイウェイ」を実に気持ち良さそうに歌って踊って、氷上のワンマンショーを繰り広げているではないか!この感動(!?)は、ギターケースがマシンガンに早変わりする「デスペラード」をみた時のそれに近いものが。ちょっと大袈裟だが、それほどツボに入ったのだ。
主人公は皇帝ペンギンのマンブル。皇帝ペンギンは、それぞれに“心の歌”を持ち、この歌で求愛活動を行っている。音痴のマンブルは“心の歌”が奏でられず、幼い頃から仲間外れ。でも、彼は天才的なタップ・ダンサーだった。
最近、彼らが住む南極では、エサの魚がなぜか激減。原因を探ろうと一人(羽)旅立つマンブル。その途中で、自分のダンスを歓迎してくれるペンギン集団と出会い、冒険を共にするが……。
シナトラ以外にも、クイーンの「愛にすべてを」、プリンスの「Kiss」、スティービー・ワンダーの「I Wish」など、往年の名曲が続々と登場。ペンギンたちの熱唱と華麗なステップ&腰つきを見ていると、こちらの体も勝手に動き出すほどの楽しさだ。
踊るペンギンの動きは天才タップ・ダンサー、セヴィアン・グローバーの振付をモーション・キャプチャーしたもので、実に滑らか。
声の出演も主人公にイライジャ・ウッド、彼が片想いするお色気たっぷりの幼なじみにブリタニー・マーフィー、両親にヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、旅の相棒にロビン・ウィリアムズと豪華なメンツが勢ぞろいしている。
魚の乱獲などで南極の生態系に多大な影響を及ぼしている人間は、ペンギンたちにとっては侵略者そのもの。人間=エイリアンと見立て、南極が直面する問題点を盛り込むという強いメッセージが感じられる。
また、他と違うことで排除させられるマンブルは人間社会を映す鏡であり、その個性が最後にはペンギン界を救うという皮肉も込められている。誰かに認められたいと必死にステップ踏むマンブル。そんな健気な姿に愛おしさがこみ上げてくる。
この春、ホットな歌と踊りを見せてくれるクールなペンギンたちに会いに行こう。
2006年/アメリカ/108分
監督・脚本・製作:ジョージ・ミラー
声の出演:イライジャ・ウッド、ロビン・ウィリアムズ、ブリタニー・マーフィー、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ヒューゴ・ウィービング
配給:ワーナー・ブラザース
2007年3月より丸の内プラゼールほか全国ロードショー
(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc. - U.S., Canada, Bahamas & Bermuda
(C)2006 Village Roadshow Films (BVI) Limited - All Other Territories
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング