第16回 焼酎原酒マニアックス その2+D Style 本格焼酎ぐびなび

» 2007年05月11日 19時00分 公開
[橋本裕之(デジほん),ITmedia]
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 前回、芋の原酒、黒糖の原酒を中心に焼酎の原酒の入り口を紹介したのだが、今回はさらにさまざまな原料や、蒸留法の焼酎を紹介しつつ、よりディープな焼酎の原酒ワールドの深淵を探ってみようと思う。

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 まずは左の「常陸山 純粕さなぼり焼酎」(杜の蔵)。これは、古式セイロ式蒸留器によってつくられた「粕取り焼酎」の原酒を3年間熟成させたものである。元々、粕取り焼酎は日本酒文化圏と焼酎文化圏の狭間でつくられたものであり、福岡を中心に日本酒の蔵元がつくっていることが多い。この焼酎は酒粕のもろみともみ殻を混ぜセイロに入れ蒸留しており、米焼酎よりも日本酒の風味により近く、密度の濃い大人の味わいを醸しだしている。その隣も、古い蒸留器をつかって、最近の焼酎でなかなか味わえない濃厚な芋焼酎の香りを作り出す「武家屋敷 原酒」(知覧醸造)である。こちらは鹿児島の知覧の蔵である。どちらの焼酎も最近増えてきたキレがある味わいの焼酎というより、いい意味で無骨な感じを受けるはずである。


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 米焼酎の原酒からは、熊本県球磨郡の林酒造場から「熊本城」「ごくらく」の2種類を紹介する。どちらも原酒を熟成させたものであり、球磨焼酎らしい迫力だけでなく、炊いたご飯を想像させるような、米のやわらかい香りもしっかり残している。特に熊本城は樫樽を使って熟成させたものをブレンドさせることによって、樫樽の香りと米の香りのバランスが絶妙な逸品に仕上がっている。


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 続いていろいろな原材料を使った原酒をピックアップしてみた。長野・佐久の花酒造は日本酒の蔵元としても有名だが、そば焼酎、米焼酎にもたいへん力をいれており、そのラインアップの中から選んだのが「獏酔」だ。蒸留して、最初にでてきたアルコール分である「初溜」を集めているそば焼酎で、とても美しい容器も印象的だが、上品かつ、味わい深く、そば焼酎のひとつの完成系ともいえるのではと思う。

 隣は「佐久の花」、これは初溜取りでない原酒である。ちょっと変わったものが宮崎・高千穂酒造のとうもろこし焼酎の樫樽熟成「月夜の梟」である。こちらは和製バーボンといった感じだろうか、しかし、味わいはやさしい。一番右は熊本県・球磨の那須酒造場の「茶楽」。米と抹茶という大胆な組み合わせの焼酎である。抹茶ならではの香りが存分に楽しめ、ロックで美味しく味わえるはずだ。


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 高知の「無手無冠(むてむか)」が造る栗焼酎で有名な「ダバダ火振(だばだひぶり)」があるが、こちらの原酒がこの「四万十大正(しまんとたいしょう)」である。上質の栗を惜しげもなく使った(栗75%の贅沢だそうだ)、いまだかつてない栗焼酎の熟成酒であり、赤いボトルもとてもオシャレにできている。箱には「SHIMANTO MYSTERIOUS RESERVE」と記されており、ニクイ演出。まさにミステリアスな焼酎といえるのではないだろうか。


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 最後に日本でも有数の大手焼酎メーカー、芋焼酎「霧島」でおなじみ、宮崎の霧島酒蔵から、創業90周年を記念して生産された限定焼酎「順吉」を紹介する。きらびやかな箱、そして高級ブランデーを思わせるボトルが印象的だ。焼酎は「ジョイホワイト」を使用した8年熟成芋焼酎で、大手メーカーの真の実力を見せつけられる。価格は1万円と少々値段ははるが、見かけることがあったらぜひ、味を確かめてみてはどうだろうか。

内藤商店

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【住  所】東京都品川区西五反田5-3-5

【電  話】03-3490-6565

【営業時間】9:30〜22:30

【定 休 日】日・祝



著者紹介

橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)

有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。

株式会社ダイヤモンド社で編集者として「旨い!本格焼酎」(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌「iして! ケータイサイトの歩き方」の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった「愛するスケートに何が起こったのか?」(著・渡部絵美)を手がけている。


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