一流レストランに高品質の牛肉を卸してきた老舗食肉卸問屋「小島商店」。その小島商店がプロデュースするレストランとして食通たちの注目を集め続けているのは、2007年10月、港区麻布台にオープンしたフレンチレストラン「はれるや」だ。 「実は日本において牛肉は、養生食だったんですよ」小島商店の副社長・小島康成さんは言う。「牛肉を食べる文化が広まったのは、明治になってからです。食肉がご法度という仏教の慣習もあり、それまで牛は農家の一員として一緒に田畑を耕したり、重いものを運んだりする存在でした。人々は野菜と豆と魚を食べて生活していたのですが、実はその間も隠れて和牛を食べていたと言われています。牛肉は古くから、競争力を養ったり瞬発力を引き出せる動物性食材として、重宝されてきた歴史があるんです」 |
|
江戸時代になると鎖国やキリスト教の禁止とともに、食肉は幕府によって禁止されていたはずだ。しかし「牛肉はおいしくて力が湧いてくる食材」との噂が広まると、秘密裏に取引されるようになったという。味噌漬けにした牛肉が京都御所に献上されたり、豊臣秀吉が名古屋から小田原城に攻め入る際に、養生薬として和牛を食べ精をつけたという文献が残っている。
国産黒毛和種仔牛“桜乙女”ロースの炭火焼き マディラソース | 黒毛和種仔牛“桜乙女”の3点盛り |
小島商店は1933年、仔牛肉専門卸業として始まった。創業者である小島さんの祖父は東京都中央卸売市場食肉市場(芝浦と場)の初代組合長。オランダのデンカビット社と協力し、脱脂粉乳のみで育てた仔牛「ホワイトヴィール」を開発し、世に広めた人でもあった。
「当時の日本人は肉の食べ方といったら、すきやきやしゃぶしゃぶ、ステーキ、ハンバーグくらいしか知らなかったと思います。しかもこれは全部、成牛の調理方法です。イタリアやフランスのように、仔牛をソースに絡めて食べるという文化が、そもそもありませんでした。ホワイトヴィールを商品化し、帝国ホテルで料理長をされていた故・村上信夫シェフとともにテレビCMなどを重ねるうち、仔牛といえば小島商店、小島商店といえば仔牛と認識していただけるようになったと聞いています。今弊社でホワイトヴィールは扱っていませんが、脱脂粉乳だけで飼育された仔牛の肉というものは真っ白で、それは淡白で上質な味わいだったそうです。」
時代を経て、今では仔牛肉と、成牛の黒毛和種のメス両方を取り扱うようになったが、牛の健康と肉の安全性を大切にする姿勢は変わっていない。空前の脱メタボブームやロハスブームの中でさまざまな情報が伝わる中、それらに振り回されず、しっかりとしたデータを基に商品作りをしていくのが自分達の役割だと語る。
「我々は75年間食肉だけを扱ってきた肉のプロです。そんな私達から見ても仔牛は、既存の肉に分類できない全く新しいタイプの肉。高タンパク・低脂肪・低コレステロールで、美味しさを追求する料理においても、ソースと喧嘩しない稀有な食材です。ただし、仔牛を熟知した料理人でないと扱いが難しい。鶏肉とも豚肉とも牛肉とも違う、第4の肉種といえるでしょう」
国産黒毛和種(米沢牛または山形牛)サーロインのローストビーフ | 国産黒毛和種仔牛“桜乙女”の贅沢なメンチカツ |
一般的に生後12カ月までの牛を仔牛というが、「はれるや」ではその中で最も美味しいとされる黒毛和牛仔牛「桜乙女」の8カ月前後のものを選んできている。また成牛のメスの美味しさを知ってほしいと、1000日肥育の黒毛和牛メスも出している。
「肉の美味しさは柔らかさと風味と多汁性だといわれます。メスは体が小さいので、赤身の繊維質が広がることなくキメが細かい。キメが細かい=隙間が少ないので、それほどサシが入らないということですね。だから食べた時に脂の味ではなく、赤身本来のうまみ、風味を楽しむことができるんです。これが本当の牛肉のうまさなんだと、覚えてほしいと思っています」
依然として霜降り信仰が強いが、健康な牛にこだわったフレンチレストランだと聞けば、美容と健康に関心の高い女性の心も動かされるはず。大事なプレゼンや、男として決めなければならないプライベートイベントを控えた時、古くから養生食として活用されてきた牛肉のパワーをもらおう!
ランチコースは1100円、2200円の2種類 | ディナーコース アラカルトのほか、4800円、7500円のコースも |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||
|
取材・文/華麗叫子
編集/似鳥陽子
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング