1984年、アーノルド・シュワルツネッガーさんを一躍大スターへと導いた映画「ターミネーター」が公開された。1991年には自由自在に姿を変える液体金属のターミネーターT-1000が話題を呼んだ「ターミネーター2」が登場。2003年にはこれまでの2作品で監督を務めたジェームズ・キャメロン監督ではなく、ジョナサン・モストウ監督が指揮を執った「ターミネーター3」も誕生し、同シリーズは全世界で10億ドル以上の興行収入を記録している。
そして、第1作の公開から25年たった2009年6月、劇場最新作「ターミネーター4」が満を持して公開される。「チャーリーズ・エンジェル」シリーズで知られるマックG監督がメガホンを取り、主役のジョン・コナーは「ダークナイト」への出演が記憶に新しいクリスチャン・ベイルさんが演じた。舞台は2018年――“ジャッジメントデイ”の後、核戦争で荒廃した世界で新たな物語が始まる。
今回、そのマックG監督と、装着することで身体機能を増強できるサイボーグ型ロボット「HAL」を開発した山海嘉之教授の対談が実現。“ターミネーターに魅せられた”という2人に、同シリーズをはじめとする近年のSFについて話を聞いた。
――監督は、近年のSF作品についてどう思われますか
マックG監督:今の観客は非常に知的で、知的な部分も刺激するような作品を求めていると思います。例えば、マトリックスやブレードランナー、エイリアン、ターミネーターのような。最初見たときは、純粋に楽しめるけれど、後で人間の責任について考えさせられる、そういう作品が必要だと思っています。
――教授は、ロボット工学の専門家の立場から見てどういった印象を受けますか
山海教授:多くの方は、どの時代のSF作品を見ても「このような未来があったらいいな」ですとか、「未来をこういう風に作っていったらどうか」と感じると思います。マックG監督はかなりリアリティーを重ねてきているのですが、リアリティーがあることで、実際にチャレンジしてみようと思わせられるのではないかと感じています。
――「ターミネーター」の影響で、ロボットの研究を始めたとも言われている山海教授ですが、教授の研究成果を活用することを目的に設立された「サイバーダイン」は、もしやターミネーターに登場する企業「サイバーダイン・システムズ」からとった名称ですか。
山海教授:いや、わたしが研究している学術分野が「サイバニクス」という名前なんです。それに力を意味する「ダイン」を付けて「サイバーダイン」ですね。そのテクノロジーを使って力を作り出していくという意味を込めた名前になっています。……ただ、仕事が終わる18時を回ってから質問された場合には「ターミネーターも大好きです」と答えていますけどね。
マックG監督:HALも、「2001年宇宙の旅」(に登場する人工知能)から来ているのかなと思ったけど……。
山海教授:HALは違うんです、「Hybrid Assistive Limb」の略称なんです。
――ところで、SF作品の中では科学が悪く描かれることも多いかと思います。科学はもちろんのこと、ターミネーターはじめとするSF作品に思い入れの深い教授や、マックG監督はどう思われますか
山海教授:テクノロジーは人のためにあってほしいと思っています。なので、それが悪い方向や、軍事関係に使われるのはつらいです。好きな分野だからこそ嫌なんでしょうね。例えば、HALの技術1つ取っても諸外国からミリタリーユースのコンタクトがなくはないんです。そのような利用をお断りしながら、地味ではありますが普通の生活の中で使える技術にすることにチャレンジをしています。
そう思う背景には、おそらく(ターミネーターのような)監督やクリエイターが作る映像、物語があると思います。「あ、こういう未来を作ってみたい」とか、「こうあっちゃいけない」とか、比較的若いうちに心に刻みこむことが重要だと思っているんです。なので映像や、小説を作る人たちの重要さを感じています。
マックG監督:僕は、全人類が科学をモニターする責任があると思っています。世の中は本当に狭くなっている。1人1人が無責任に行動できる状態じゃないんですね。例えば、遺伝子工学では羊のクローンができ、いずれ人間のクローンもできるようになるでしょう。そしてこのまま行けば、どんなものにも負けないウイルス、もしかしたら人類を絶滅させてしまうようなものまで作ることができるかもしれません。ロボット工学や、新しい燃料のことも考えなくてはなりません。今、さまざまな技術が進んでいますがわたしたちにはこの行方を監視する責任があるのではないでしょうか。
また、世界はとても危険な場所になっていると思います。他人を支配できる権力が存在する時、適切でない人がその権力を獲得しないように監視するのもわたしたちの責任であり、世界の責任ではないでしょうか。つまり「わたしたちはみんな1つでなければいけない」ということです。
――今回の映画で描かれる2018年の未来では、世界や日本はどうなっているんでしょうか
マックG監督:今回の映画を制作するにあたって、チェルノブイリの放射能汚染のことを研究し、放射線の影響がどれくらいの期間でなくなるのかを調べました。理論的には(核戦争が起きた後の)ロンドン、シドニー、ニューヨーク、東京などの大都市は大変なことになっているでしょうね。しかし、都市にいなかった人たちは生き残っている可能性が高いと思います。
この映画の根底には「差別を手放して戦う」というメッセージも込めています。例えば、マイクロソフトのエンジニアが休暇でフィジーに行っていて生き残ったとする。その人が「僕だったら、スカイネットのハックができるかも」と言ったら(人種も性別も関係なく)みんな耳を傾けますよね。
放射線の影響をあまり受けなかった人たちがしばらくたってから集まって、ロボットが作れるとか、飛行機が操縦できるとか、それぞれが知恵を出し合ってスカイネットに抵抗する抵抗軍を徐々に作り上げていくんです。
機械と戦うために世界中の人が1つになり「差別を手放して戦うこと」をメッセージとして込めた「ターミネーター4」。+D Styleの読者には1足先に、最新映像をお見せしたい。
映像のリアリティーや、それを実現するテクノロジーはもちろんのこと、今作はマックG氏が必要とする娯楽だけではない「人間の責任を感じさせるようなSF作品」を思わせる。6月の公開に期待が高まる。
6月13日より全国ロードショー
<6月6日(土)・6月7日(日)先行上映決定>
公式サイト:http://www.Terminator4.jp
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給
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