スノーボードというスポーツの歴史は、まだ誕生から25年しか経っていない。四半世紀をようやく過ぎたこの競技は、いまや冬のオリンピックの花形にまで到達した。華やかなトリック、個性的なボードやウェアー、若者を魅了して止まないこのスポーツにも先駆者がいる。彼らを中心にこの映画のために、オリンピックやX-TRAILという競技で世界を制した素晴らしい選手たちをいざない、アラスカの大地に広がる誰も滑ったことがない斜面に挑むプロジェクトが進められた。その先頭に立った1人、ニック・ペラタ氏が来日し、その熱い思いを語ってくれた。 |
映画の中でもアラスカでの経験値が長い人物として紹介されているニック氏をしても、毎回滑り出すには勇気が必要だという。「なぜならば、1回足りとも同じ状況がありえないからです。油断すると、本当に死と隣り合わせです。僕自身1度だけ隙を見せてしまい、70フィートのところで落ちてボードも折れ、2時間誰からも発見されなかったことがありました。20年間アラスカに住んで、何度も同じスロープを滑っていますが、山は滑らせてもくれるけれども、人を殺すためにも存在しているのです。中には死という代償を払わざるを得ない人もいます」 |
「僕自身、スノーボーディングっていうのは自分が1番よく知っていることで、それを止めちゃったらきっと一気に年をとってしまうと思います。それに、自分の子供にも好きなことをずっと続けろなんていっておいて、示しがつかないですしね。気分が乗らないときでもボードに足を結びつけると、『あっ』ってスノーボードが好きなことがわかるんです。確かにできる技は減りました。でも若いときほどではないけれど、今でも努力はしていますし、人生の大きな部分をスノーボードが占めています」 映画の中では日本での特殊なスノーボード人気についても触れられていたが、ニック氏はこれに肯定的だった。「僕らのときには、見習うべき先駆者がいませんでした。それに、アメリカではスノーボードをやらない人は、今でも本当にスノーボードについて知りません。でも、日本ではやらない人でもみんな応援してくれる。テレビでX-TRAILを見て、電光掲示板に選手の名前が表示されて、4万人の観衆に囲まれているのを見る。それが目標になって、スノーボードの選手に憧れてくれる。いまや選手もショーンやハンナみたいにいい子が揃っている。僕らの時には『ああなりたい』なんて誰も憧れてくれませんでした(笑)。陽が当たらないところに当たることでまた新たな文化が生まれることは素晴らしいと思います。」 スノーボードの黎明期から滑り続ける男が見せる山への深い愛は、映画の中でも語られている。 |
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取材・文/+D Style編集部
撮影/菅沢 健治
取材協力/スノーヴァ溝の口-R246