坊主頭にひときわ光を放つ眼がトレードマークの「大将」こと新美徳造さんには、長年の板前修行の「自分だけの味で、東京で勝負したい」という強い思いがあった。そこで50歳を過ぎてから、あえて東京に進出したのが、4年前にオープンした、ここ赤坂の「鴨シャブ竹亭」だ。木目素材の優しさの中に「霧の摩周湖をイメージした」というガラス張りのカウンターが目に入り、心地よい落ち着きと、肩に力が入らないような雰囲気を出している。それが、昭和56年創業の老舗の本店とはまた違った形で、見事に客の心を掴んでいる。
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その大将自信の「鴨」は、宮内庁御用達の千葉産の合鴨である。また、新潟産の真鴨も季節によって使い分ける。野菜は味がしっかりした、シャキシャキのもやし、ねぎ、せり、にらだ。 |
そして、鍋の最後にはシメの「鴨らーめん」が待っている。鴨のダシがしっかり出たスープで、さっと湯通ししたクロレラを練りこんだ1.1mmの特注の極細麺を、ニラとニンニクの利いたスープで、わんこそばのように食べる。これがまた抜群に美味い。知多半島の製麺所で特別に作られているという極細のちぢれ麺が、鴨の旨みとしっかり絡み合って、見た目以上の味のインパクトを与える。今まで、贅沢な味だと感じていた「鴨シャブ」が前菜のように感じるほど、不思議なくらい箸が進んでしまう。最後の最後までしっかり味わえ、いつまでも余韻を楽しめる鴨鍋料理なのだ。 |