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薬膳とは漢方薬が入った食事だけにあらず
“薬膳の三重苦”を覆す「美味しい薬膳レストラン」

サプリメント、最新エクササイズ、マクロビオティック、運動マシーンなどなど、「からだにいいこと」が、すぐにブームになる今日この頃。健康に対しての意識の高い人は、トレンドやモチベーションにおいても高感度であることのあらわれにもなっている。

とはいえ、病気や数値の異常などの大きな問題がなければ、ついなおざりになりがちなのが“健康”でもある。特に、「+D Style」の読者の方のように、多方面にアンテナを張り巡らせていたり、多忙だったりすると、なおさらではないだろうか。
「そりゃあ健康は大切だと思うけれど、情報が多すぎて、何を選択したらいいのかよくわからないよ……」
「最近ストレスが溜まってて疲れ気味。でも、忙しくてゆっくり寝る時間もないんだよね」
「胃腸の調子があまり良くないんだけど、わざわざ病院へ行くほどでもないし……。ああ〜、今日も飲み会でいやになっちゃうよ」

薬膳レストラン

そんな方におすすめしたいのが“薬膳レストラン”。

「えっ、薬膳って、漢方薬とかオットセイの○○○なんかが入っている料理でしょ? 不味くて高そうだし、わざわざお金を出して食べに行きたいと思わないね」

実は今回、周囲の男性に“薬膳料理”へのイメージを聞いてみて一番多かったのが、こんな反応であった。

・何が入っているかよくわからなくて怪しげ
・匂いが強くて不味そう
・なのに値段が高い

そんな“薬膳の三重苦”のイメージを覆すレストランが近ごろ増えてきた。


そもそも薬膳料理とは、“漢方薬が入った食事”のことを指すのではないのだそうだ。漢方メーカーでマーケティングや販売戦略、広報企画を長年担当し、漢方の要素を取り入れた新しいライフスタイルの提唱を行っている漢方スタイルプロデューサーの朝比奈千穂さんは、こう語る。

「中医学(中国の医学)では、たとえば山芋を“山薬”と呼ぶなど、すべての食べものには薬と同じ力があり、体調や季節、風土に合わせて最適な方法で摂取することによって、病気を予防したり治療できると考えられていました。古代中国宮廷の王には、内科医、外科医、食医(王の食事を考える専門医)、獣医の4種類の医師が仕えており、その中で一番地位が高かったのは食医でした。それほど、“食”は重要視されてきたんです。美容と健康がこんなに提唱されている現代ですから、2千年以上の歴史を持つ中医学の知恵を、ぜひ取り入れて欲しいですね」

漢方スタイルプロデューサーの朝比奈千穂さん

というわけで、リーズナブルに美味しく食べられて、気になる体調もスッキリ! 続けて通えば体質改善や健康になるという、ニューウェーブ薬膳レストランを紹介していこう!

“食べる=美+健康”がコンセプト――「10ZEN」

まずは、品川漢方ミュージアム内にある「10ZEN」。スッポンの生き血ワインやマムシの唐揚げなど、本物志向のディープなものから、その日の体調に適した食べものを選べるなど、お客のためにカスタマイズされたメニュー構成である。漢方薬局大手の薬日本堂(株)とコラボレーションしているとあって、“食べる=美+健康”というコンセプトのもとに、創業37年の実績とノウハウを生かしながら、新スタイルの薬膳を提案している。

「10ZEN」

東京都港区高輪3-25-29 漢方ミュージアム内
03-5795-1649
平日 18:00〜23:00(LO 22:00)
土曜 18:00〜22:00(LO 21:00)
日曜休

http://10-zen.com/

10ZEN

ナチュラルテイストな明るいインテリアの同店は、20代後半〜50代という幅広い層の支持を得ている。

「男性のお客様は、健康に気をお遣いになる中高年の世代の方が多いですね。おひとりや男性同士でいらっしゃる方も多いですよ」(「10ZEN」広報・早川さん)

毒素排出鍋

中でも人気なのは「毒素排出鍋」だそう。そのネーミングだけもインパクト大であるのだが、ぐつぐつと煮立つ濃厚な2色のスープは、まるで魔女の鍋に煮立つ秘薬のように“ザ・漢方”なイメージそのまま。だが、恐る恐る匂いを嗅ぐと、その蒸気を顔に浴びて気管に吸い込んだけでも効能のありそうな複雑な芳しさが漂う。

烏骨鶏をベースにして28種類もの生薬が入っているというスープは、いわば漢方の遊園地。血流が良くなって新陳代謝を促し、滋養強壮にも良いのだそう。漢方理論にのっとってセレクトされた、からだの気血水を整える旬の野菜や珍しい具材をどんどんくぐらせてほお張れば、たちまちからだが温まり、毛穴から毒素が吹き出す。もちろん、肝心の味の方も、スープを全部飲み干す人も少なくないという滋味深さだ。

美味しいものを摂取しながら毒素を排出するという新しい“食の快感”に、口コミで訪れる人やリピーターが多しという、病みつき度の高さもうなずける。

お次は、舌が痺れる辛さがたまらない、四川風薬膳を紹介したい。

取材・文/似鳥 陽子