» 誠Style »

「麻」と「辣」の刺激で五感よ、目覚めよ!
辛さと感動で痺れるスパイシー料理――「銀座小はれ日より」

どうも元気が足りない時やパワーが欲しい時は、どういったものを食べればいいのだろうか。

「中医学では、カラダ全体の代謝が低下しエネルギー不足になっている状態を“気虚”、イライラしたり落ち込みやすいなど、ストレスを感じやすくなっている状態を“気滞”と呼びます。そういう時は、辛いもので代謝を補ったり、香りの強いもので巡りを良くすると良いですよ。唐辛子と山椒、ネギやショウガ、香菜などの香味野菜をふんだんに使う四川料理は、疲れていて食欲不振な時などにぴったりですね」(漢方スタイルプロデューサー・朝比奈さん)

「銀座小はれ日より」は、舌が辛さと感動で痺れるほどスパイシーな料理を出す薬膳レストラン。格子戸をくぐり抜けて地下へ降りると、夜のメニューはおまかせのみという隠れ家的な雰囲気のする店である。とはいえ、堅苦しさやお財布の心配は一切ご無用。一番高いコースで6300円。あとは予算とお腹の具合に応じて、オーナーシェフの高橋政貴さんが、その日の最高の食材と調理法で皿を出してくれる。

「銀座小はれ日より」

東京都中央区銀座1-15-8 銀座耀ビルB1
03-3538-0554
12:00〜14:30(L.O. 14:00)
18:00〜22:00(L.O. 21:30)
土・祝 18:00〜21:00(L.O. 20:30)
日曜休

http://www2.odn.ne.jp/kohare/

銀座小はれ日より

「中華料理は、名前を見ただけではそれがどんな料理なのかさっぱりわからない場合が多いですよね。だからお客さんは、ほかに美味しいものがいっぱいあっても、自分の知っているものや、よく食べるものばかり選んでしまう。せっかくレストランに来るのだから、もっと色んな味や美味しさを知って欲しいと思い、おまかせスタイルにしているんです」

この日に出してもらった特別メニューの激辛薬膳は、粘膜がヒリヒリするような漢方スープから始まった。最初のひとくちが胃袋に落ちると、ズシーンと重い刺激が広がり、首の後ろに冷や汗が出る。このまま食事を続けても大丈夫かどうか一瞬不安がよぎったが、からだが温まると汗がひいて食欲が湧いてきた。激辛料理と薬膳の違いを、からだで実感させてくれたスープは、高橋シェフからのささやかな先制打である。

激辛薬膳01

そのあとも、手羽先の青唐辛子ソースがけや自家製の激辛ビーフジャーキー、地鶏と唐辛子の炒め物など、Hotな料理のオンパレード。一面が真っ赤に染まった水煮豆腐は、「これぞ四川料理!」と思わせてくれるが、ターツァイのブラジル産黄唐辛子酢漬けの炒めや、海老とゴーヤと青唐辛子の炒め物など、中華料理の枠にとどまらない一品も。

激辛薬膳02

唐辛子の一辺倒な辛さだけではなく、一皿ごとに強弱のコントラストがつけられているのが、四川料理のほかに宮廷料理やヌーベルシノワの店で料理長を経験してきたという高橋シェフの腕である。

「巷の激辛料理は、“ただ辛いだけ”というものが多いですよね。だから辛いものが苦手な人は食べられないし、からだにも良くない。大切なのは味付けのバランスと調理の方法です。よそでは食べられなかったお客さんが、うちの店では大丈夫という場合は多いです。たとえば豚の角煮は仕込みに5日かけていますので、脂身が苦手という方もぜひチャレンジしてみてください。絶対に胃もたれしない自信があります!」

料理を心から愛するオーナーの高橋政貴さんは、トークも絶妙!

同店のモットーは、医食同源ならぬ美食同源。「美味しいものを食べて健康に」というわけで、次の日もまったく胃がもたれずにデトックス効果が凄かった。尾籠な話で恐縮だが、トイレに駆け込むこと6回! 同じテーブルを囲んだメンバーも同様だったようで、中には肩凝りが緩和されたという声も。

今回は特別コースということでかなり“激辛”で構成してもらったが、もちろん、いつもは普通の味付けである (笑)。予算や品数、料理の内容は相談に応じてくれるので、ひとりで訪れてカウンターでシェフとの会話を楽しみながら食事をする男性客も多いそう。

「麻」と「辣」のマリアージュ――「香家」

お次は、ラーメン店やカフェに行くように気軽に薬膳担々麺が食べられるお店をご紹介。

京王井の頭線・新代田駅のすぐ隣にある「香家」は、麺や点心、中国スイーツが気楽に食べられるこじんまりしたダイニングである。カフェのような雰囲気だがその味は本格派で、年配の男性客の姿もちらほらと見える。

「香家」

東京都世田谷区代田5-29-8(五反田TOC地下に支店あり)
03-3418-0862
11:30〜23:00(L.O.)
無休

http://www.koya.co.jp/

香家

同店のメニューの真骨頂は、鬼・担々麺と麻辣汁なし担々麺。ひとくちすすると、ふんだんに使われた胡麻・唐辛子・花椒(四川山椒)・陳皮・八角などの漢方食材の香味が鼻孔に広がり、本場四川料理の特徴である「麻」(マー:しびれる辛さ)と「辣」(ラー:ピリピリとした辛さ)のマリアージュに陶然となる。

鬼・担々麺と麻辣汁なし担々麺

細めの香港麺にからむ、滋味深いスープは全部飲み干したい。巷のこってりした担々麺とは一線を画し、胃腸の調子が悪い時や、二日酔いの時こそに食べたくなる味でもある。自宅でその味が楽しめる宅配セットもあり、「おとりよせネット」では人気ナンバーワンに輝いたそう。

さて、今までご紹介したのは、「元気がない時、疲れている時」におすすめの薬膳レストランだったが、お次は、行けば必ず元気になれる、薬膳本来の意味に即したレストランを紹介したい。

取材・文/似鳥 陽子