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最新シネマ特集〜マリー・アントワネット〜

ソフィア・コッポラが描く「最も愛され、最も憎まれた」王妃

14歳にしてオーストリアからフランス王太子のもとへ嫁ぐことになったアントワーヌは、フランスに足を踏み入れた瞬間からオーストリアから持ってきたもの全てを手ばなさせられる。名前もマリー・アントワネットとなり、15歳のルイ・オーギュストと結婚式をあげた。虚しさを紛らわせるべく、彼女の興味は靴やドレス、髪型や宝石などへ注がれ、日々のパーティなど喧騒に満ちた世界に浸ることへとはまっていった。フランス王・ルイ15世の死去により、ルイとマリーは王と王妃となるが、フランスの財政は破綻しようとしていた。重い税に苦しむ国民の怒りは贅沢に暮らす宮殿に向けられ、群集の怒りが爆発する…。

あまりにも有名な王妃・マリー・アントワネットをソフィア・コッポラが映像化した。

監督2作目の「ロスト・イン・トランスレーション」でアカデミー賞脚本賞を受賞し、父であるフランシス・フォード・コッポラを引き合いに出さなくても通じる存在となったソフィア・コッポラ。若い女性が揺れ動く様を描き続けてきた彼女が次の作品に選んだのは、王政フランスの最後の王妃となったマリー・アントワネットだ。

マリー・アントワネット生誕250年の年に撮影されたこの作品には、フランス政府が全面的に協力し、ヴェルサイユ宮殿やプチ・トリアノンといったマリー本人が生きた場所でのロケを実現している。全体的な色調はフランスのお菓子マカロンのような淡いパステルカラーで彩り、ソフィアお得意のどこか寂しげな世界を創り上げた。

しかし、そこはソフィア・コッポラ。絢爛豪華な歴史絵巻としてこの完璧な舞台を使うのではなく、マリー・アントワネットをまだ14歳で親から離され、常に衆人環視の元に暮らし、周囲からの子供を求められるプレッシャーのなかで贅沢に溺れるしか人生の愉しみを持たなかったティーンエイジャーとして描いた。主役のマリー・アントワネットには処女作「ヴァージン・スーサイズ」でも起用したキルスティン・ダンスト。ルイ16世には従兄弟のジェイソン・シュワルツマンを配し、自分の気心の知れた俳優を使い、音楽にポップ・ミュージックを配することで舞台は16世紀のフランス王室に変わろうとも、等身大の世界を描きだすことに成功している。

史実の映像化と考えると、歴史背景を知らなければ説明不足で苦しいところも多く、力不足の感は否めない。ただ、等身大のマリー・アントワネットの姿を瑞々しく描いた手腕は、彼女の新たな挑戦でも輝いている。

マリー・アントワネット

監督/脚本:ソフィア・コッポラ
出演:キルスティン・ダンスト、ジェイソン・シュワルツマン、アーシア・アルジェント、マリアンヌ・フェイスフル、ジュディ・デイビス、リップ・トーン
共同提供:東北新社/東宝東和
共同配給:東宝東和/東北新社

2007年1月20日(土)日劇3他にて全国ロードショー

http://www.ma-movie.jp/

筆者プロフィール
北本祐子
+Dstyle編集担当。
雑誌編集畑から異動によりインターネットの世界にデビュー。
映画は本数よりも、好きな作品を何度も見る派。それでも、年間鑑賞作品数はDVDを入れると200本ぐらい。3度の飯もお酒も好きだけど、甘いものがもっと好き。会社の近くのパティスリー・サダハル・アオキのスイーツを食べ尽くすのが目下の目標。




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