» 誠Style »

最新シネマ特集〜となり町戦争〜

あなたの住んでいる町が突然戦時状態になったら!?

地方都市の某市に隣接する町、舞坂町。市内の旅行会社に勤務する北原は、淡々とした日常を過ごしていた。ある日もいつものごとく近所の定食屋で夕食を済また北原は、自宅ポストに投函された郵便物のなかに、街の広報誌「広報まいさか」を見つける。税金や下水道フェアの情報に挟まされるように、その告知は小さな囲みで載っていた。

「舞坂町はとなり町の森見町と戦争をします。開戦日は5月7日、終戦予定は8月31日」

敵方となった森見町に住む同僚も会社にいるものの、なんの変化も見られない日常。舞坂町役場からの呼び出しの電話も、何を言っているのかもわからない。そして開戦から12日目。いつもの定食屋で常連客が読んでいた最新号の「広報まいさか」に載ったその文字に驚愕する。

「戦死者12人」

見えない場所で広がる戦火を初めて感じる北原。彼にも任務が課せられるが……。

行政からのお達し1つで始まる戦争。
NOといえる瞬間が「選挙」だとすれば、その権利を行使しなかったものには、当選した町議会議員の戦争を行うという判断をくつがえすことができない……。

主人公でありながらも主張の少ない、江口洋介演じる北原を筆頭に、登場する人物には血の気が少ない。役場の職員として淡々と戦争に関しての事務手続きを進め、そのために偽装結婚までも受け入れる原田知世に至っては、まさに人形の様だ。各キャラクターの存在の背景も薄く描き、なんとなく今の世の中に立っている住民を赤紙のように届く封書で戦争要員にしていく。直接手を下さなくとも戦争に加担しているという現代社会。この映画の中の世界と我々が住む現実とは1ミリも違わないのではないか。
気配のない戦争の足音を感じるのは、自分に死の気配が直接的に訪れたとき。爆音もない静かなこの戦争の物語を笑い飛ばすことができない現実の中に我々もいる。

となり町戦争

2006年/日本/114分
監督:渡辺謙作
出演:江口洋介、原田知世、瑛太、余 貴美子、岩松 了

2007年2月10日(土)より新宿ガーデンシネマ他にて全国順次公開

http://www.kadokawa-herald.co.jp

(C)2006『となり町戦争』製作委員会 2006

筆者プロフィール
北本祐子
+Dstyle編集担当。
雑誌編集畑から異動によりインターネットの世界にデビュー。
映画は本数よりも、好きな作品を何度も見る派。それでも、年間鑑賞作品数はDVDを入れると200本ぐらい。3度の飯もお酒も好きだけど、甘いものがもっと好き。会社の近くのパティスリー・サダハル・アオキのスイーツを食べ尽くすのが目下の目標。




「最新シネマ情報」バックナンバー