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最新シネマ特集〜さくらん〜

女の欲望が乱れ咲く吉原絵巻

 『海猿』『デスノート』の大ヒットを受けて、ますます活性化するマンガの映画化。今年も『どろろ』『蟲師』『ゲゲゲの鬼太郎』と数多くの注目作が公開されるが、その中でも女性から最も注目されそうなのが、安野モヨコ原作による『さくらん』だ。

 吉原の遊郭、玉菊屋に売られた8歳の少女、きよ葉は何度も脱走を図るが、ことごとく失敗。気位が高く絶世の美女と称される完璧な高級花魁の粧ひは、そんなきよ葉を見込んで、花魁としての生き方を叩き込んでいく。

 やがて17歳になったきよ葉は、遊女デビューを果たす。態度も美貌も型破りの彼女は、「なめんじゃねえよ」と気に食わない遊女には飛び蹴りを一発、もちろん理不尽な客はどんなに金を積まれようとも相手にしない。ところが、客の一人である惣次郎と初めての恋に落ちてしまい……。

 監督は世界的フォトグラファーの蜷川実花、主演は土屋アンナ、脚本はタナダユキ、そして音楽は椎名林檎という、各分野で活躍するカリスマ女性たちが集結した豪華絢爛な吉原絵巻。いかにも狙ったようなタッグが鼻につくかもしれないが、それぞれの個性が時に共鳴し、時にぶつかり合い、スクリーンに何倍ものパワーとなってみなぎっている。

 華やかな女の園は、一歩足を踏み入れれば欲望渦巻く「大奥」のような地獄が待ち受ける。そこで苦しみ、もがきながらも、たくましく生き抜き、一流の花魁に成長する女性の姿が、女性ならではの視点で描かれ、ベッドシーンにしても厭らしくない。斬新かつ煌びやかな衣裳やセットもハッとするほどの美しさで、思わず写真として残しておきたくなるほど。

 キョンキョン&永瀬正敏の元夫婦のニアミス出演、なんて下世話的な興味もありつつ、飾らない、気取らない、それでいてプライドと茶目っ気を持った、これぞ粋な女性の生き様劇場。女性による、女性のための、女性映画では決してない。むしろ男性にこそ見て欲しい全編ロックでパンクな作品なのである。

さくらん

監督:蜷川実花
出演:土屋アンナ、椎名桔平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、石橋蓮司、夏木マリ、市川左團次、安藤政信、永瀬正敏
配給:アスミックエース

2007年2月24日(金)より渋谷シネクイントほか全国ロードショー

http://www.sakuran-themovie.com/

(C) 2007 蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ

筆者プロフィール
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。




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