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最新シネマ特集〜トンマッコルへようこそ〜

この映画を「韓流」と呼ぶことなかれ

 朝鮮半島の中心部、江原道の山の奥深くに「トンマッコル」という村があった。時代は1950年代、朝鮮戦争の最中。世俗から遠く離れ、子供のように純真に暮らす人々の元に、空から連合軍のアメリカ兵が不時着する。それに続くように韓国軍の兵士2人も村に入るが、同時に敵対する人民軍の兵士3名を村の少女ヨイルが連れて帰ってきた。何も知らない村人を挟んで、戦いを始めようとする兵士たち。しかし、生まれて初めて武器を目にする村人たちには、戦争よりも畑を荒らすイノシシ問題のほうが大事だ。
そんな彼らと過ごすうちに、3つの国の異なる考え方を持つ兵士たちも次第に心を開いてゆく。しかし、戦争の足音はトンマッコルへも近づいていた…。

 朝鮮半島を二分する戦争が起きていることはもちろん、外国人の存在も知らないのどかなトンマッコルの人々。言葉は通じても、戦う意味は通じない彼らが両軍の相対する狭間で眠ってしまう姿には笑いが起きる。戦う意味なんてどこか自分たちが知らないところで決められたことであって、それを持ち込まれても「トンマッコル(=子供のように純粋な村)」は変わらないのだ。人種や国籍を超えて、心を通じ合わせる様は、今も戦闘状態にある朝鮮半島の人々の長年の願望だろう。

 2005年に公開されたこの作品は、新人監督ながら韓国最大のヒットとなり、観客動員数800万人を記録したという。音楽には日本からジブリ映画や北野武監督作品で人気の久石譲を迎え、ここでも国境を越えた作品作りをしている。所謂「韓流スター」ではないが、韓国映画界を支える才能が結集した作品は笑いとファンタジー、そして涙までたっぷり詰まっている。

トンマッコルへようこそ

2005年/韓国/132分
出演:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン
監督:パク・クァンヒョン
音楽:久石譲

10月28日よりシネマスクエアとうきゅう、シネ・リーブル池袋、シネマート六本木ほか全国ロードショー
http://www.youkoso-movie.jp/

筆者プロフィール
北本祐子
+Dstyle編集担当。
雑誌編集畑から異動によりインターネットの世界にデビュー。
映画は本数よりも、好きな作品を何度も見る派。それでも、年間鑑賞作品数はDVDを入れると200本ぐらい。3度の飯もお酒も好きだけど、甘いものがもっと好き。会社の近くのパティスリー・サダハル・アオキのスイーツを食べ尽くすのが目下の目標。




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