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焼酎ぐびなび

第八回 マジック!お湯割り

 焼酎の飲み方のスタイルはいろいろあるが、最近は黒麹の芋焼酎が流行っているせいもあり、それにあったロックで楽しむスタイルが主流のように感じる。確かに黒麹ならではの迫力を存分に感じることができ、それを氷で冷やされた焼酎が喉を通る、喉ごしの良さはなんともいえない快感である。また、酒に強い人であったら、ロック以外のスタイルとしては「生」(き)で飲むというのも、焼酎そのものの味をしっかり味わうことができるので魅力的だと思う。特に焼酎の原酒を飲むときなどは、ぜひ「生」で楽しんでほしい。しかし、芋焼酎の昔ながらのオーソドックな飲み方は、やはりお湯割りである。

 お湯割りした焼酎はストレートやロックで飲んだときよりもより、芋ならではの、ほっこりとした甘みや、独特の香りを感じることができるように思う。ウイスキーをテイスティングするときに、若干、水を足したほうがより味が判るようになるのに似ている。芋焼酎のお湯割のよさを改めて実感したのは、焼酎の人気銘柄「佐藤」を供する、佐藤酒造の佐藤誠さんに「佐藤」のお湯割りを自らつくって頂いた時であった。

 佐藤誠さんのお湯割りは、「人肌よりちょっと温かい」お湯を、酒器に「酒よりも先に注ぎ」、その後から、「ゆっくり」と酒を注いでいく。一見、単純なようだが、これがつくりかたによって、まったく味が異なり、筆者が同じようにつくってもなかなか再現できなかった。ポイントがいくつかあるのだが、まずはお湯。お湯割りをつくるときは、どうしてもアツアツのお湯を使いがちになってしまうのだが、これではせっかくの香りと味わいが崩れてしまう。さらに使う水に関しても、できればこだわりたい。その蔵の「仕込み水」でとまで言わないが、おいしい水を使うにこした事はない。最近は水もいろいろな採取地のものを販売しているので、いろいろ試してみるといいだろう。佐藤だったら「霧島」の方面の水ならピッタリである。また、「海」や「森伊蔵」といった大隈半島の蔵の酒であったら、「垂水」(たるみ)の温泉水で有名な「寿鶴」などもいいだろう。またゆっくりお酒を注ぐのも大事で、香りや味わいを逃がしてしまわぬように気をつけたい。

こうして美味しくつくられた焼酎のお湯割りはダラダラと飲むのには非常に都合がいい。酔いのまわり方も緩慢だし、なにより体を冷やさない。さて、それでは、そんなお湯割りにしたら美味いという芋焼酎を居酒屋でその場で選んでみた。お店などで見かけたら、ぜひお湯割りを試してほしい。

1:「旭 萬年 白麹」「旭 萬年 黒麹」(宮崎・渡邊酒造所)   2:「真鶴」(鹿児島・万膳酒造)「真鶴」(鹿児島・万膳酒造)  3:「がんこ焼酎屋」(鹿児島・大石酒造)
4:「芋麹 芋」(鹿児島・国分酒造協業組合)  5:「深海うなぎ」(鹿児島・丸西焼酎合資会社)「深海うなぎ」(鹿児島・丸西焼酎合資会社)  6:「塩ゆで落花生」「塩ゆで落花生」

筆者紹介
橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)

有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。
株式会社ダイヤモンド社で編集者として『旨い!本格焼酎』(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌『iして! ケータイサイトの歩き方』の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった『愛するスケートに何が起こったのか?』(著・渡部絵美)を手がけている。

http://www.digifon.jp/




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