焼酎ぐびなび
第九回 芋焼酎の本場・鹿児島に蔵元を訪ねる〜天文館の夜
これで何度目になるだろうか。芋焼酎の本場・鹿児島にやってきた。 |
夕方の便で羽田を出発し、2時間ほどで鹿児島に到着。市内のホテルにチェックインした後、まずは、「天文館」に一直線だ。「天文館」は鹿児島随一の繁華街である。ほとんどの店で焼酎を飲むことができる。今日はその中でも最上級のかごしま黒豚のしゃぶしゃぶを食べさせてくれる「あぢもり」に向かった。今回、蔵を見学させて頂く「小鶴」や「蔵の師魂」を生み出した、小正醸造株式会社の皆さんにお会いするためであった。 |
30年間この地で提供している「あぢもり」の黒豚のしゃぶしゃぶは絶品だ。バラとロースの二種類の肉が出され、バラはスープの味だけで、ロースには卵を絡めて食べるということでさっそく試したが、やや酸味のあるスープに、さっぱりしているのにコクがある黒豚の味の組み合わせが素晴らしかった。この店の黒豚は1級の肉、しかも雌の肉だけを使用するというこだわりの逸品。また、このとき、黒豚に驚かされたのが、ある程度の時間煮てもほとんど身が硬くならなかったということだ。そんな鹿児島の味の伝承者である、この店の主人は佐藤光也さん。鹿児島の出身だと思いきや、なんと札幌の出身だそうだ。 |
美味しい料理に合わせて「蔵の師魂」がドンドンすすむ。そんななか、小正醸造株式会社の代表取締役社長を務める小正芳史さんから蔵の歴史やコンセプトをいろいろ伺ったので、次の日の蔵見学がますます楽しみになってきた。伺っていて、特に興味深かったのが、この蔵が非常に早い時期から長期の熟成に挑戦してきたことだ。1957年から販売を始めた、当時の蔵のシンボル的な存在である「メローコヅル」に始まり、現在の「蔵の師魂」に至るまで、さまざまな形での熟成に挑戦してきた。今でこそ、さまざまな蔵が商品化しているが、当時はもちろん焼酎を樫樽で熟成させる蔵元は皆無で、日本で初めての試みだったのだ。 |
もうひとつの特徴が原料へのこだわりである。特に、金峰町の農家で天皇杯や黄綬褒章も受賞した、東馬場伸さんを始めとした生産農家の顔の見える原料つくりに力を入れてきた。そして、小正醸造株式会社の方々が発する、東馬場さんに対する絶賛の言葉の数々によって、まだ見ぬ東馬場さんの、その存在の大きさを感じたのだった。 また面白い取り組みがQRコードだ。お酒のラベルにQRコードを記載することにより、飲み会の最中、そのお酒の商品案内や美味しい飲み方の書かれたモバイルサイトに、簡単にアクセスできる仕組みをつくった。消費者に対する、こうした細やかなサービスも、この蔵元らしく気持ちがよい。 次回に続く…… |
筆者紹介
橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)
有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。
株式会社ダイヤモンド社で編集者として『旨い!本格焼酎』(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌『iして! ケータイサイトの歩き方』の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった『愛するスケートに何が起こったのか?』(著・渡部絵美)を手がけている。
http://www.digifon.jp/
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