» 誠Style »

快楽旅団

vol.05 海外で棲むということ02 香港-マイ・コレクション

香港の事好き?と言われればもちろん大きく頷く。
一つだけ気になることを除けば…。

 

9月以降の秋は香港にとってはベストシーズン。
軽装で冬を迎える事ができる。
良い季節だ。安宿がこぞって値上げを開始する。
しかし、夏は過酷だ。
蒸暑く、特に7月から8月にかけては、なるべく近寄りたくないのが本音…。とにかく蒸暑い!
暖めたゼリーの中を掻き分けながら歩くというような気候とでもいおうか?
想像しただけで、額にうっすら汗が滲む(うそだけど)。
とてもじゃないけどカッコ付けて街を闊歩するのは辛い季節である。
かと思えば、建物の中は、オールウェィズ18℃。
もう極寒の世界へようこそ!
ク−ラーが効き過ぎるほどである。
このギャップに苛まれる。
香港で迎える夏は嫌いだ…。
こちらでは、過度な行いや現象は、富の象徴であり、彼らの処世術でもある。
そのため何でも最大限にする。最新携帯電話を見せるように大声でしゃべるなどなど…。
クーラーもめいっぱい効かす=お金持ちという証拠!
ギンギンに冷やすことも彼らの中では「おもてなし」として嗜なまれている。
それが中華思想なのである。
そんなすばらしい温度差のために、眼鏡は一瞬のうちに曇り、汗ばむ体は急速冷凍。
何度風邪を引きそうになったか…。
この暑い時期に香港を訪ねる方は、くれぐれも上着を忘れずに…。

 

 さて、そんな湿り気たっぷりな街並みの香港。
当然のようにビルのエントランス前は一年中ビショビショ。
建物の出入り口は湿っていることが多い。
そこには、必ずといって良いほどすべりやすい床に注意しなさいという警告の黄色い看板が鎮座している。日本でも見かけるが、香港ではその数が半端ではない。
あまりにも滑りやすいのですべり防止の黄色いたて看板は条例で出すようにと勧められている。
条例で黄色い看板を設置しないといけないらしい。
そのために小心地滑(広東語発音:スーサン・デイ・ワォ)と書かれた文字が街のあちらこちらで生息する。華流POPの根源はここにある。
そんな看板に心奪われた一人である。
本当何処にもであるのだ。
今年は、過酷な夏をこの看板を採集する事でやり過ごした…。
香港といえば、あまり他人の事は気にもかけていない…人が多い街。
概ね人の事はどうでも良いらしい。
上を見上げると今にも落ちてきそうな看板は、十分違法建築(日本から見るとね)なのだけど、日々看板は増殖中。
結構落ちてきそうなものもたまに見かける…。

0香港と言えばイメージする風景 1ほぼ床が濡れています…。 2迫出す看板、安全対策とは? 3香港名物「小心地滑」。 4「小心地滑」基本デザイン。

そんな無法な街並みだけど、入り口毎に設置される無数の黄色い奴は、香港の街を見守る。
ちなみに現地金物屋にてだとHK$20(\300)くらい。
つい洗脳され、奴の虜になってしまい、自宅にも「小心地滑」を導入! しかし、ただ邪魔である。
基本的に黄色ベースの赤or黒文字配色とオーバーアクションな人間ピクトグラムとコピーで構成される。

 

何気にこの定番デザインを中心にバリエーションがあるのも面白い。
この配色は、人に注意を喚起する以上に、中国圏では黄色と赤は徳の高い色として非常に好まれる色である。この配色である以上、別の意味でもマストとなっている。濡れた床から来客を守るハザードなのである。この結界ポイントを越えたときまた新しい香港が見えてくるのである(ちょっとうそ)。
いつかは、この看板の写真展を開きたいと切に願うのである。

 

ロケ地 香港

5「小心地滑」アレンジバージョン。 6「小心地滑」多言語バージョン。 7お上品な「小心地滑」

著者紹介
猪蔵(いのぞう)
株式会社ヒマナイヌ 取締役副社長いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野編集者兼古物商。大学在学中より映像編集をはじめる。傍ら、株式会社まんだらけの店頭公開業務に取締役として従事。公開後、株式会社イマジカに移籍し、ソフトウェア開発を行なう。また映像専門誌「DVJ」編集デスクも務める。2003年(株)ヒマナイヌを起業。現在は東京麻布十番のカフェ縁縁を経営他、投資会社(株)アストリックス・キャピタル・パートナーズの取締役に就任。一瞬香港在住。プランニングを中心に映像に関するライティングや著書、TV番組の構成も手がけるなど多方面に活躍中。「人への思いやり」や「おもてなし」をテーマに頓知の利いた商品を世に送り出そうと奔走中。

http://www.himanainu.jp/




「快楽旅団」バックナンバー