e-Day:「Yahoo! BBでワールドカップを観よう」

【国内記事】 2001.09.13

 ニューヨークの摩天楼が黒煙と悲しみに包まれる直前,スイス・チューリッヒの国際サッカー連盟(FIFA)本部では,米ヤフーのプレスカンファレンスがWebキャストで世界に配信されていた。同社が2002年FIFAワールドカップの15番目にして最後のオフィシャルパートナーになるというものだ。

 米国東部標準時間の11日未明に始まったプレスカンファレンスには,FIFA会長を務めるジョセフ・S・ブラッター氏も出席した。もう65才というブラッター会長は,「若く,そしてダイナミックな企業であるヤフーをFIFAのパートナーとして歓迎する」と話した。

 またブラッター氏は,威勢よく幾度か「Yahoo!」を連呼し,「私は“Yahoo!”と話すのがうれしい」としたほか,キーボードを叩くジェスチャーをしながら,「私も“e”のユーザー」と,はしゃぐ一幕もあった。

 今回の契約は,来年の日韓大会だけでなく,2006年のドイツ大会も含めた複数年のもの。米ヤフーは,12月からFIFAワールドカップの共同ブランドサイトを制作・運営し,マーケティングに関するさまざまな権利を取得した。

 ヤフーの社長兼COO,ジェフ・マレット氏は,「素晴らしいゲームには常にパッションがある。そのパッションをそのまま世界に伝えたい」と話した。英語やスペイン語のほか,少なくとも日本語,韓国語,フランス語およびドイツ語の6カ国語での情報発信となる。

 マレット氏によると,Yahoo!のミッションは至ってシンプルなもので,「人が仮想的に集まる場所をつくり,情報が得られ,お互いに交流できるようにすること」というが,FIFAワールドカップの共同ブランドサイトで展開されることは実にさまざまだ。

 目玉は何と言っても「FIFAワールドカップ TV」だろう。1カ月に及ぶワールドカップをストリーミングライブで伝えるものだ。

 前回の1998年フランス大会では,ヒューレット・パッカードが構築したオフィシャルサイト「www.France98.com」が開催中に11億ページビューを記録して話題となったが,それももはや隔世の感がある。Yahoo!の日本サイトだけでも1日当たり2億3200万ページビューを誇り,わずが5日もあれば,France98.comの記録を超えてしまうほどだ。

 フランス大会でも得点シーンなどのハイライトがオンデマンドのストリーミング配信されたが,当時のナローバンドでは満足のいくものにならなかった。なにせ動きの速いサッカーでは,ボールが見えないからだ。

 新しい試みとしては,モーバイル端末への配信サービス,「ワイヤレス・インターネット・アップデート」もある。携帯電話やPDAへゴールに関する情報を速報するというものだ。

 フランス大会では,スタジアムでナマ観戦できたのは64試合で250万人がに過ぎない。日韓大会では300万枚近くのチケットが発券されるが,それでも入手は困難だ。ブラッター会長は,「しかし,テレビで観戦した世界中のファンは延べ340億人に上る」としたうえで,最新のインターネット技術を駆使すれば,さらに可能性が広がることへの期待を表明した。

「これまでわれわれは,コンサバティブなやり方でサッカーをプロモーションしてきたが,新しい技術でゲームをプロモートし,情報を提供し,対話をつくりだしたい」(ブラッター氏)

 1959年,現在の天皇である皇太子のご成婚パレードで日本全国の家庭にモノクロテレビが行き渡り,1964年の東京オリンピックでカラーテレビへの買い替えが進んだといわれている。

 こう書くと,東京と地方の格差や生活レベルの差もあってか,「カラーテレビは1970年の大阪万博だ」という声も聞こえてきそうで,この話題だけでも40才くらいのわれわれは盛り上がってしまう。しかし要は,かつての日本では,国民的な行事があると,それに観ようと慌てて,テレビを月賦で買う庶民が実に多かったということ。

 ブロードバンドの売り文句は「Yahoo! BBでワールドカップを観よう」で決まりだね。

[浅井英二 ,ITmedia]