HPのe-servicesでF1をシミュレートするジョーダン

【国内記事】2001.10.15

 先週,10月12日〜14日の3日間,三重県の鈴鹿サーキットにおいて,自動車レースの最高峰「フォーミュラ1」(F1)の2001年シーズン第17戦(最終戦)日本グランプリが開催された。一見,ドライバーの腕と車の性能だけで勝負が決まると思われがちな,F1グランプリだが,舞台裏ではコンピュータを使った情報戦が繰り広げられている。

ピット作業以外にも,舞台裏ではコンピュータを使った情報戦が繰り広げられている

 現在のF1グランプリでは,情報戦を制する者がレースを制するといっても過言ではない。例えば各チームは,コンピュータによるシミュレーションにより,1回のピットインよりも2回ピットインした方が最終的に早いタイムでゴールできるという判断を導き出したりすることもある。

「このような刻々と移り変わる状況を,瞬時に判断し,勝利に結びつけるためには,IT技術は不可欠だ」と,F1に参戦するチームの1つであるジョーダングランプリのマーケティングリーダー,マーク・ギャラハー氏は話す。

ジョーダングランプリのマーケティングリーダー,マーク・ギャラハー氏

 そのジョーダングランプリのIT技術を支えているのが,ヒューレット・パッカード(HP)のソリューションだ。現在,ジョーダングランプリのピット裏では,45人のジョーダン担当者が,ラックにマウントされた8台のWindows NTワークステーションと40台のノートPCにより構成されたシステムを活用して,レースに勝つためのさまざまな情報収集や分析を行っている。

ピット裏に並べられたラックマウント式のHP制NTワークステーション

 ジョーダンがIT技術の活用で重要と考えるポイントは,「問題の解決と分析,評価」「システムやマシンの変更とその評価」「ドライバーのパフォーマンス分析」の3つという。そのために,同チームでは,ピット裏のシステムと英国の本社をISDNで接続し,データをリアルタイムに転送してデータの解析を行っている。

 また,モニタリングされるF1マシンには,1台に2つのIPアドレスを設定し,85のパラメータについてのモニタリングを行っている。F1マシン1台に取り付けられたセンサーは,240以上に及ぶ。1回のグランプリで6GバイトのデータがF1マシンから送られてくるという。IPアドレスの1つはエンジンの情報を,もう1つのIPアドレスがドライバーの情報やエンジン以外のパーツの情報の収集に利用されている。

 現在HPでは,ハードウェアの提供やミッションクリティカルなシステム構築と運用管理のサポートを提供するほか,シャーシ部分の設計用CADシステムを提供している。

 今後は,ピットとF1マシン,そして英国本社だけでなく,部品調達のための受発注処理のほか,紙ベースで行っているコミュニケーションをPDAなどを活用したコミュニケーションに強化していく計画という。

 さらに,2〜3年後には,実際にコースで走っているF1マシンの情報を,英国本社にリアルタイムに転送し,データを受け取った本社で,PC上や,油圧管理された部屋に置かれた実際のF1マシンで同じ動きをシミュレーションするバーチャルシステムを実現したいとしている。

「今後は,HPのe-servicesを活用した400社以上に及ぶサプライヤーに対するサプライチェーン管理(SCM)システムを実現したい。さらに,その先のバーチャルシステムの実現が,オーナーであるエディ・ジョーダンをはじめとするわれわれの夢だ」(ギャラハー氏)

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▼日本ヒューレット・パッカード

[山下竜大 ,ITmedia]