日本IBM,デジタルコンテンツ管理を体系化した「DMF」を国内展開

【国内記事】2002.3.08

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は3月7日,デジタルコンテンツの作成から管理,配信までをIBMのテクノロジーを利用してトータルにサポートする新しいオープンテクノロジーフレームワーク「Digital Media Factory」(DMF)の提供を国内でも本格的にスタートすることを明らかにした。DMFは,米IBMにより2月22日に発表されたものだ。

 DMFは,あらゆる業種の企業において,デジタルビデオ,オーディオ,イメージなどを作成し,管理,保管,保護,配信のための仕組みをIBMの技術によりトータルに支援するオープンなフレームワーク。小売店のキオスク端末をはじめ,ビデオ監視,テレコム業界におけるワイヤレスコンテンツ配信など,幅広い分野での利用が期待されている。

 同フレームワークは,IBMのサーバ製品「IBM eServer」をはじめ,ワークステーション製品の「IntelliStation Workstations」,ストレージ製品の「Total Storageソリューション」,ミドルウェア製品の「WebSphereファミリー」および「DB2 Universal Database」,IBMグローバル・サービスによるサポート,小サルティングなどで構成される。

IBM DMFチームの面々(写真左より,IBM GSのティモシー・オブライアン氏,IBMのヨルゲン・ロスクヴィスト氏,日本IBMの伊藤雅朗氏,IBMのフレデリック・ソエンダーガード・ジェンズ氏)

 IBMでは,デジタルメディアの年間の生産量は,全人口の1人ひとりが約25Mバイトずつ作成している計算になるという。同社の試算では,2004年までのデジタルメディア市場は,年率50%の成長率で拡大し,350億ドルに達すると見込まれている。

 DMFでは,デジタルメディアコンテンツ管理を2つの分野で体系化している。1つがエンターテイメントコンテンツの分野で,もう1つがビジネスコンテンツの分野だ。

 エンターテイメントコンテンツの分野では,米パラマウント映画のデジタルメディアアーカイブの管理システムを構築し,必要な映像をいつでもどこからでも検索し,利用することが可能という。また,ビジネスコンテンツの分野では,コカコーラが1863年以降のすべてのポスターをDMFで管理している。

 また,IBMのソフトウェアグループ・データマネージメント担当,フレデリック・ソエンダーガード・ジェンズ氏は,「デジタルメディアと言えば,難しく考えがちだが,ビジネスコンテンツ分野では,日々利用している電子メールの管理や出所の保障をしたいというニーズもある」と言う。

「DMFは,マルチメディアデータに関わらず,さまざまなタイプのデジタルコンテンツをエンドツーエンドで管理する仕組みを提供する。顧客は,コンテンツの作成から蓄積,管理だけでなく,権利の保障された形で,携帯電話やキオスク端末など,さまざまな端末に向け配信し,有効に利用できる仕組みを実現することができる」(ソエンダーガード・ジェンズ氏)

 そのほか,CNNやBBCなどのニュースコンテンツのデジタル化やテレコム関連,政府関連のコンテンツ管理など,さまざまな分野で利用されているという。

 IBMのデジタルメディア&コンテンツ担当副社長,ヨルゲン・ロスクヴィスト氏は,「エンターテイメントコンテンツは,それだけで商業的な価値をもっている。そのため,そのコンテンツに関わる権利や著作権など,いったいだれがどのような形で持っているのかといったことまで,きちんと管理しなければならない。一方のビジネスコンテンツは,コンテンツそのものに意味はなく,プロセスにおいて価値が発生することが多い。そのためコンテンツそのものでなく,そのコンテンツを利用するプロセス全体を管理するための仕組みが必要になる」と言う。

「性格の違う2つのコンテンツを効果的に管理することができる仕組みをDMFは提供する」(ロスクヴィスト氏)

 このような仕組みを実現するには,さまざまな技術を組み合わせることはもちろん,専門の技術を持ったパートナーとの協力も不可欠だ。

 IBMアジアパシフィックサービスのティモシー・オブライアン氏は,「デジタルメディアの管理は非常に複雑だ。DMFによりデジタルメディア管理システムの構築を簡素化することができる」と言う。

「DMFを利用するメリットは,コアとなるインフラ技術をIBMが提供し,その上で利用するパートナーの技術の稼動を保障することで,開発コストを削減し,開発期間の短縮を可能にすることだ。また,信頼性,安全性も向上させることもできる」(オブライアン氏)

 このDMFの国内展開について,日本IBMのデジタルメディア・ソリューション推進部長,伊藤雅朗氏は,「IBMは10年以上,デジタルメディア管理システムを手がけてきたノウハウを持っている。われわれは,デジタルメディア管理のためのインフラとサービス,そしてコンサルティングを提供し,アプリケーションはパートナーと協力していく計画だ」と話す。

日本ではワイヤレス&ブロードバンドを中心に

 日本では,ワイヤレス&ブロードバンドを利用したデジタルコンテンツビジネスを中心に,DMFの販売を展開していく計画という。システム構築の上流から下流までのすべてをサポートするために,IBMでは事業部ごとに分かれている縦の組織を水平方向にまたがるDMFの組織を150人体制で確立し,国内展開を行っていく計画だ。

「これまでの10年より,今後の10年は,もっと早いスピードで進化していくだろう。今できることと,将来できることを見極めて,常に最適なソリューションを提供できる仕組みを作っていかなければならない」(伊藤氏)

 日本国内では既に,NTTドコモが次世代ワイヤレス配信サービスの実験にDMFを利用しているほか,ローソンが展開するコンビニエンスストアに置いてある情報キオスク端末「Loppi」の基盤技術としても採用されているという。

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[山下竜大 ,ITmedia]