エンタープライズ:ニュース 2002/07/04 12:19:00 更新


影の主役、10GbE

NetWorld+Interop 2002 Tokyoの展示会で注目を集めるテーマとくれば、ブロードバンドやIPv6、モーバイル、無線LANといった分野がまず頭に浮かぶだろう。だが、ちょっと待ってほしい。こうしたデモンストレーションが行えるのも、ShowNetのバックボーンあってこそ。そして今年、このバックボーンで採用されている技術が、10ギガビットイーサネットだ。

 NetWorld+Interop 2002 Tokyo(N+I 2002 Tokyo)の展示会で注目を集めるテーマとくれば、ブロードバンドやIPv6、モーバイル、無線LANといった分野がまず頭に浮かぶだろう。実際、PDAとMobileIPv6を組み合わせた移動通信や無線LANを利用してのVoIPといったデモンストレーションは、来場者にも好評だった。

 だが、ちょっと待ってほしい。

 こうしたデモンストレーションが行えるのも(デモ環境がブース内のローカルネットワークに閉じている場合を除けば)、ShowNetのバックボーンあってこそ。そして今年、このバックボーンで採用されている技術が、10ギガビットイーサネット(10GbE)である。

 10GbEの技術仕様自体はずいぶん前から固まっており、先行して対応製品を発表、出荷するベンダーも幾つかあった。しかしこれが正式にIEEE 802.3ae標準として批准されたのは、この6月13日。してみると10GbEは、まさにできたてほやほやの技術だと言える。

 N+I 2002 Tokyoに合わせて来日した10ギガビットイーサネットアライアンス(10GEA)のアミート・ディロン氏は、批准がここまで遅れた理由を「技術仕様は、2001年後半は出来上がっていたが、本当に仕様に沿って動いているかどうかを確かめるテスト手段がなかったから」と説明している。

原因切り分けが課題に

 やや話はずれるが、ShowNetで10GbEネットワークを構築する際にも、やはりアナライザなどのツールが存在しなかったことが課題になったという。

「ギガビットイーサネットのように、流れているパケットをリアルタイムに取り出して、きちんと測ることができるアナライザがなかった」(NOCメンバーで倉敷芸術科学大学の小林和真氏)。つまり、トラブルの原因を切り分けるための手段が存在しなかったということだ。

 しかも、ShowNetのバックボーンは、単一のベンダーではなく、シスコシステムズやエクストリームネットワークス、ファウンドリーネットワークス、ジュニパーネットワークス、富士通、日立製作所といった複数のベンダーの機器を組み合わせて構築されている。

 小林氏によると、ベンダーによってサポートしているインタフェースが違っていたり、光モジュールなどが微妙に異なることから、相応のテストと調整が必要になったという。また光レベルを合わせるため、一種の技だが、細かくアッテネータ(光減衰装置)を組み合わせて調節するといった工夫もなされているという。

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 ShoeNetのPODの1つ。注意して見るとアッテネータに工夫が凝らされていることが分かる

「今回はできるだけ(異なるベンダーの製品同士が組み合わさるよう)クロスメッシュの構成とした」(小林氏)。その結果、これだけの種類の10GbE機器が、ラボではなく実ネットワークとして稼働するのは、おそらくこのShowNetが初めてという。

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 展示会初日、出展者がほとんど帰った後に機器のメンテナンスが行われていた

XENPAKでポート単価も下落?

 話を戻すと、10GbEの仕様には、他のイーサネット規格には見られない幾つかの特徴がある。

 10GEAのディロン氏は、10GbEとギガビットイーサネットとを比較しながら、「LAN PHYのほかに、SONETとの親和性を重視してWAN PHYが定義されていること」「伝送距離が最長40キロメートルと、ギガビットイーサネットに比べ大幅に長いこと」「現時点では、メディアとしてツイストペアはサポートされておらず、ファイバのみであること」といった項目を挙げた。

 さらに同氏は、「ギガビットイーサネットがファイバチャネルの技術を利用できたのに対し、10GbEは、初めからオプティクスを作り上げなければならなかった。このため、価格はまだ高めで、ポート単価が下がるにはしばらく時間が必要だろう」と話している。

 10GbEでは全部で7種類の仕様が規定されているが、このうち、WAN PHYを用いたものは、やはり価格が高く、それゆえ普及は進まないだろうというのがディロン氏の見方だ。代わりに、シングルモードファイバを利用し、伝送距離がある程度稼げる「10GBASE-LR」がまず浸透し、続いて「10GBASE-ER」「10GBASE-SR」準拠の製品が使われるようになるのではないかという。

 もう1つ重要な要素は、「XENPAK」だ。これは、ギガビットイーサネットにおけるGBICと同様、10GbEのインタフェースの違いを吸収する役割を果たす技術で、現在その仕様が策定中である。「いずれXENPAKが登場すれば、10GbEのコストは大きく下がるだろうと予測している」(ディロン氏)

 米エクストリームネットワークス(エクストリーム)のBlackDiamond担当ディレクターでもある同氏はさらに、「XENPAKをサポートした“10GXiモジュール”を、BlackDiamond向けに、2003年第1四半期に出荷する計画だ」という。

 価格にかかわるもう1つのポイントは、10GbEならではのアプリケーションがいつ、どの程度利用されるかである。ディロン氏は「1つの可能性として、iSCSIやSANといったストレージがメジャーなアプリケーションになるのではないかと考えている」と語った。また、エクストリームとしてもそれに備えて、複数のSANパートナーと協力しているという。

関連リンク
▼NetWorld+Interop 2002 Tokyo オフィシャルサイト
▼10ギガビットイーサネットアライアンス
▼エクストリームネットワークス

[高橋睦美,ITmedia]