エンタープライズ:ニュース 2002/09/27 22:26:00 更新


Keynote:Javaコミュニティーの役割を強調したジンゲル氏

9月27日に行われたJavaOne最終日の基調講演には、NTTドコモの榎啓一氏、NECの伊久美功一氏、そしてサンのチーフ・エンジニアであるロブ・ジンゲル氏が登場。それぞれの立場からJavaに寄せる期待を語った。

 ユニークなJavaアプリケーションがお披露目されたデモンストレーション大会「Night for Java Technology」から一夜が明け、2002 JavaOne Conference in Japanもとうとう最終日を迎えた。9月27日に行われた最終日の基調講演には、NTTドコモの榎啓一氏、NECの伊久美功一氏、そしてカンファレンスのモデレータの1人として、JavaOne進行役の1人を務めてきたロブ・ジンゲル氏が登場。それぞれの立場からJavaに寄せる期待を語った。

 トップバッターの榎氏だが、やはりJavaとNTTドコモと来れば「iアプリ」である。その同氏が、iアプリとの組み合わせで注目しているのが赤外線通信だ。「赤外線インタフェースの搭載によって、携帯電話は他社と通信する機器であるだけでなく、一種のコントローラになる」と同氏は語り、そこに新しいビジネスチャンスが生まれるとした。

 事実、今回のJavaOne展示会場では、Java対応携帯電話本体の展示や、モーバイルアプリケーションのデモが目立った。中には、携帯電話から車のドアの開閉などをコントロールするデモも含まれている。そして榎氏は、これを日本だけの現象に終わらせるつもりはないようだ。

 同氏は、e-PlusやKPMモバイル、KGTなど、海外でiモードサービスが広がりつつあることに触れたうえで、「今提供されているのは、日本でいうならば2〜3年前の、502レベルのサービス。だが彼ら(=海外のキャリア)は来年にはJavaに対応し、iアプリによるサービス展開を考えているようだ」と発言。こうなれば端末メーカーにとってもコンテンツプロバイダーにとっても、そしてJavaデベロッパーにとっても大きなビジネスチャンスが広がるとした。

 続くNECの伊久美氏のスピーチは、エンターテイメントの空気あふれるiアプリから一転し、企業の大規模基幹システムがテーマだ。同氏は、EJB(Enterprise JavaBeans)コンポーネント群の「MCOne」など、同社のJava関連製品群に触れながら、24時間365日の稼働が求められる基幹システムに、Javaがどういった機能を提供するかを紹介した。

「企業基幹システムには、24時間365日での稼働や信頼性、速やかなフェイルオーバーやクラスタリングシステム、稼働しながらの機能変更・追加などの要件が求められる。EJBをベースとしたMCOneでは、システムを落とすことなく新規機能の追加や修正などを行える」(伊久美氏)。

 同氏はさらに、WebOTX Mobile Brokerを組み合わせることで、iアプリを搭載した携帯電話端末から、既存のシステムにアクセスし、発注処理などの業務を行える様子もデモンストレーションした。

「情報システムは常に進化している。今後主流となるWebサービスにおいては、基幹システムに安全にアクセスしたり、トランザクション応答の保証といったさまざまな要件が求められるが、WebおよびEJBはそれを実現できる」と同氏は語り、実際に多くの企業でEJBを活用したシステムが稼働しているとした。

prize02.jpg
ジンゲル氏のスピーチの前には、Night for Java TechnologyやBest of BOFの表彰が行われた
prize01.jpg
Night for Java Technologyの賞品は……iBookだ! Borland JBuilder 4本セットというのもあった

 トリを務めたのは、米サン・マイクロシステムズのチーフ・エンジニアであり、サンフェローでもあるジンゲル氏だ。同氏はたびたび「Javaコミュニティー」の役割と意義に言及した。「なぜJavaコミュニティーが重要なのか? それが未来につながるからだ」(ジンゲル氏)。

 同氏によると、4年前から始まったJavaコミュニティープロセス(JCP)の活動には、今では全世界で573社の企業と128人の個人が参加しており、API仕様策定のほか、実装リファレンスの作成、コンフォーマンステストの実行などに携わっている。「Javaは元々はサンによって作られたが、2002年ではJCPの活動のうち58パーセントがサン以外によってなされるようになっており、その比率はますます高まっている」といい、中には多くの日本からの貢献も含まれるとした。ちなみに、おそらく10月にはJCP 2.5がリリースされる見込みという。

 同氏は、サンが初めて“The Network is the Computer”を掲げた1980年代以降、ネットワークは進化を続けてきたといい、いよいよ今Webサービスが登場しようとしていると指摘。同時に、ネットワークにつながる「要素」も、コンピュータだけでなく組み込み機器などへと多様化しており、将来的にはセンサーをはじめとするさまざまなデバイスがネットワークにつながるだろうとした。

「ただネットワークには、信頼性や遅延、帯域の問題など、さまざまな課題が残っており、これらを克服しなければならない。それを解決するのがコミュニティー、特にJavaの一部であるJiniのコミュニティーだ」(ジンゲル氏)。

seeyou.jpg
サンフランシスコで、そしてまた来年の横浜で会おうと呼びかけるジンゲル氏とジョン・ゲージ氏

 同氏はこうも述べている。「Javaの接続テクノロジが、世界を接続していく。Javaコミュニティーはそのためにある」。そしてまた来年、サンフランシスコで会おうと会場に語りかけた。

関連リンク
▼サン・マイクロシステムズ

[高橋睦美,ITmedia]