エンタープライズ:インタビュー 2003/01/14 23:07:00 更新


Interview:スマートディスプレイはリビングルームで気軽に使うPCの提案 (1/2)

新しい家庭内PCの使い方を提案するマイクロソフトのスマートディスプレイ。その発表に合わせて、マイクロソフト米国本社でエンベディッド アプライアンス グループ シニアディレクターを務めるキース・ホワイト氏が来日。同氏にスマートディスプレイの技術や戦略、そしてポータブルメディアプレイヤープラットフォームの「Media2Go」についても聞いた。

 マイクロソフトは1月14日、ワイヤレスディスプレイタイプのWindows Powered Smart Display(スマートディスプレイ)を発表した。「親機」となるPCと、その「子機」となるスマートディスプレイはワイヤレスで接続され、子機側に親機の画面を映し出して操作ができる。

 マイクロソフト米国本社でエンベディッド アプライアンス グループ シニアディレクターを務めるキース・ホワイト氏に、スマートディスプレイの技術や戦略、そして同時に発表があったポータブルメディアプレイヤープラットフォームの「Media2Go」について聞いた。

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エンベディッド アプライアンス グループ シニアディレクターのキース・ホワイト氏。手にしているのはNECと富士通のスマートディスプレイ。

ZDNet スマートディスプレイは、Windows CEを利用した従来のWindows Based Terminal(WBT)の技術を拡張したものだと思いますが、これへ新たにどのような要素を付加しているのでしょう?

ホワイト はい、スマートディスプレイはターミナルサーバの技術を適用したものです。そこにWindows XP ProfessionalのRemote Desktop Protocol(RDP)を最適化、アカウント設定といったセットアップの簡略化と無線ネットワークのサポート、ログイン機能、IMEなどを追加しています。

ZDNet そのログイン機能は、Windows認証によるログインですか?

ホワイト そうです。ですからこれでセキュリティの管理ができますし、Windows XPの特徴の1つであるユーザー切り替え機能を利用して、複数の人が1つのスマートディスプレイデバイスを共有するといったことも可能です。もちろんユーザーの切り替え操作はスマートディスプレイ側で行えます。

ZDNet Windows XP Professionalのリモートデスクトップ接続では、1対1のセッションしか張ることができません。つまりデスクトップのPC1台に対してスマートディスプレイも一度には1台しか接続できないということですか?

ホワイト 現在のところはその通りです。しかしながら将来のWindows XP Service Pack、あるいは次世代のコンシューマ向けWindowsのバージョンであるLonghornでこれを解決します。ベータテストの段階では、この点が使い勝手の悪さにつながるという評価は報告されませんでした。いずれにしても、このシナリオはスマートディスプレイにおける「将来必ず実現すべきもの」の1つに含まれています。

ZDNet ニュースリリースや発表会のデモンストレーションから受ける印象ですが、この製品は「家庭向け」と捉えてよいのでしょうか?

ホワイト もちろん当初は家庭での利用にフォーカスしていますが、ビジネスユーザーの間でも高い関心を持っている人たちがいるようです。例えば病院などで、スマートディスプレイを持って移動しながらの利用など、適用できる分野はホーム、ビジネス問わず存在すると考えています。

ZDNet スマートディスプレイ製品の外観はタブレットPCとよく似ています。ここで両者の違いを明確にしていただけますか?

ホワイト まず、スマートディスプレイはPCのモニタ(表示装置)が進化したものだと考えてください。PC上のさまざまな情報を、ワイヤレスという形態で表示するデバイスです。ただしワイヤレスですから、例えばIEEE802.11bを採用した製品では、その電波の届く範囲内でしか利用できません。

 一方のタブレットPCは、完全なフル機能を持ったPCです。それ自体CPUやストレージを備えており、プログラムの実行が可能です。もちろんバスや飛行機の中でも使うことができます。ノートブックPCが進化していったものと言えるでしょう。スマートディスプレイは(親機の近くでないと使えない)コードレス電話の子機、タブレットPCは携帯電話という例えがわかりやすいでしょうか。

 使い方としては、家庭内においてはオーバーラップする部分があるかもしれません。けれども、Webページを見たり電子メールをやり取りするといった使い方であれば、小型で軽量なスマートディスプレイのほうが家の中でより手軽に利用できると思います。タブレットPCは、手書き認識を利用した入力などがアドバンテージとなるでしょう。

 テレビを見ながら、そこに出てきた情報をさらに詳しくインターネットで調べる、あるいは子供が絵本を読むように、寝転がってWebサイト巡りをするといったぐあいに、家庭でリラックスした状態のまま気軽にPCを利用するというのが、スマートディスプレイによるPCの使い方の提案なのです。

ZDNet スマートディスプレイは、インターネットを利用するための端末として考えればよいのでしょうか?

ホワイト 単純なインターネット端末ではありません。今までのいわゆる「インターネットアプライアンス」ではできなかったことが、スマートディスプレイでは可能になっているからです。例えば文書を開いて閲覧・編集したり、アプリケーションを実行しその結果を見ることもできます。デスクトップPC上で実行されているものが、そのままスマートディスプレイ上に表示されるためです。ですから、「インターネット専用機」よりもはるかにさまざなユーザーエクスペリエンスを与えてくれるわけです。

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[聞き手:柿沼雄一郎,ITmedia]